依頼先に到着したけれど…
『十六夜』から歩くこと約30分、誡斗達は『風月の森』に到着した。
そして等の果樹園は…
「へぇー。思ったより綺麗だな。」
「もう、そー言うこと言わないの! でも梨のいい香りが…」
「そう言うお前もその顔やめろよな。」
一見すると普通の森や果樹園に見えた。
カナタはそれが意外だったようで思わず声を漏らし、それを風華に咎められる。
しかし風華自身も梨の香りに顔をほにゃっとさせており、カナタに咎められる。
「何やってんだ。置いてくぞ。」
「分かってるって。置いてくなよ。」
そんなやり取りをしながら果樹園に足を踏み入れると、普通に見えるが少し荒れていた。
依頼主である農民たちに連絡し、彼らから話を伺った。
*****
「[妖の集団]かぁ……」
「こいつぁ、結構ヤバいかもな」
農家たちの以来内容に、風華や誡斗が歩きながらそう呟く。
…それは1ヶ月前に遡る。
突如として妖の集団がこの果樹園を襲って来たのだ。姿は巨大な昆虫の様な見た目で、大きさは2m〜3mほどはあったらしい。
それ以来、妖たちは4日から1週間程の間隔で果樹園に現れるようになり、今のところ人的被害は出ていないが梨の木や農作業の設備は甚大な被害を受けた。
今では全体の40%の梨が駄目になり、これ以上の被害が出ぬようにと遊撃隊組合に依頼を出した。
…というが誡斗達はある一つの点が気になった。
「そう。1体2体ならまだしも、[集団]ってのが気になるよな。」
そう、妖が『集団行動』しているのだ。
普通、妖が集団で行動することはまず無い。
それは妖の人間界に於ける数の比率が非常に小さく、また同時に強大な存在であるからだ。
大多数の妖は、人間界では基本的に周囲の環境が生み出す。即ち、人や動物の”心”や”感情”から誕生する。
そして妖は生まれたての個体でさえ猛獣と同等か、それ以上の力を持つ。生まれた妖は人間の何倍もの時間を掛けて、より力を付け、同時に知恵を身につける。
例外的に群れを成す妖や人と同じように生きる妖もいるのだが、基本山奥など人が訪れないような場所で生きる為集団で人前に現れる事はまず無い。
だがここには”集団”で、且つ”頻繁”に現れるのだ。人間界において、それは普通のことではない。
まず集団を構成するには60年〜100年以上生きた個体でなければ難しい。
また、この地域を自分たちのテリトリーにせず、やって来ては引き上げるを繰り返している。これは余程長い年月を生きた個体がいるという事なのか。もしくは…
「これ…裏に何かあるよね?」
「あぁ。可能性は大いにあるな。」
そう、確定では無いが、そのような個体が裏で糸を引いている可能性があるのだ。
妖の集団を統括できる何かが。
だがそうだとしても、理由がわからない。何故こんな農地を襲撃するのか?
「とりあえず、今は妖達を探そう。…まずは、向こうからだ。」
途方も無い話を区切り、周囲の見回りと索敵を開始した。
こうして果樹園の見回りを開始したが、一向に見つからず時間が過ぎていった。
見回り開始からもう3時間は経過しているだろうか。
「いねぇなぁ。というか来ない、か?」
「私の霊力感知にも反応がないわ。あるのは人だけね。」
一通り見て周ったが、一向に妖の姿を見ない為カナタは来ないのでは?と推測。
雪菜の霊力感知(言わばレーダーの役割)にも反応がない。
『霊力』というのは一部の人間が使える力のことで、『霊気』と呼ばれる空気中にあるエネルギー源を使用し、『炎』『水』『氷』『風』『雷』『地』『光』『闇』と、様々な属性エネルギーに変換できる。
それを行使して行う攻撃術や、傷を治したり毒や呪いを除去する回復術、他者のサポートなどを行う補助術などの技として使える。
一人一人持っている属性は違い、いつ誕生したのかは不明だが今では各連邦の軍や遊撃隊にとって必須事項となっている。
尚、同様の力を妖も行使できるが、その場合は『妖力』と呼称する。
閑話休題
「緊張をとくな。もう少し見回りを続け…」
「あっ!!」
皆の緊張が解けかけた為、誡斗がそれを直そうとした時、雪菜が声を上げた。
「どうした、雪菜!?」
「反応あった! この先、人がいる!」
「っ! なら急がねぇと!!」
雪菜の霊力感知に反応があり、人が近くにいると分かると誡斗達はすぐさまその場所へと向かった。
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