プロローグ3 物語は早朝から。
パタンッ
とある屋敷のリビングダイニングにて、黒の髪に白地に青い稲妻のデザインのパジャマ姿、蒼い瞳の少年[18才程]は読んでいた本を閉じた。
彼が読んでいた本のタイトルは『双界神話』といい、この世界の成り立ちと歴史を綴った書物。
とはいえ、神話や書物の話であり信じる者は多くない。
だが彼は読む度に思うことがある。
”何故、人と妖は今も戦い続けるんだ?”と。
元々は共存していたというのに互いに争う。物心ある時からそうだった。
人と妖は何千年も争い続けている。それが不思議でならなかった。
彼が読んでいたのはあくまで神話、真実かは判らない。
しかし彼は信じていた。幾多の歴史書を、語り継がれた伝説を紐解き確信していた。
「人と妖は共存していけるはず… …だからこそ、真実を知りたい。」
するとリビングの扉が開き中から水色の長髪を伸ばし、黒地に青の雪の結晶デザインのパジャマ姿、黄色の瞳の少女[少年と同じくらい]が現れた。
寝起きなのか、少し眠そうにしている。
「フワァ…あ、誡斗君。おはよう。」
「おはよう、雪菜。まだ眠そうだな。」
「もう、ちゃんと起きてますー。」
キリトと呼ばれた少年は、「白波 誡斗」といい、
雪菜と呼ばれた少女は、「黒谷 雪菜」という。
二人が話していると…
「雪菜も起きたかニャ。相変わらず二人は早起きだニャ〜。」
そこに来たのは杏色の髪をショートカットにしたエプロン姿の少女。
ただしその頭には人間にはない猫のような三角耳があった。
彼女の名は「帰戸」といい、誡斗達が暮らすこの屋敷、『双帰亭』の家主にして妖、”猫又”なのである。
少女と書いたが実際には300年ほど生きているらしく、詳細は不明。
「「おはようございます、帰戸さん。」」
「おはようさんニャ。さ〜て、朝ごはん作るかニャ。」
「あぁ。作るの手伝いますよ。」
「私も手伝います。」
「おぉ。そりゃぁ助かるニャ〜。」
そんなこんなで三人はキッチンに向かった。
*****
それから1時間程経ち、午前7時頃。
「フワァァ〜〜アァ…おはよー。」
「フゥ…おはようございます、皆さん。」
一人の少年と少女がリビングに現れた。
少年の名は「青原 カナタ」
群青色の髪に紺色を基調とした服装をしておりかなり眠そうにしている。
少女の名は「黄島 風華」
琥珀色の髪に、緑を基調とした服装に身を包んでいる。
カナタよりは起きているがそれでも眠そうにしている。
カナタと風華は従兄妹でありカナタが兄、風華が妹である。
「おはよう。カナタ、風華。」
「おはよう。カナタ君、風華ちゃん。もうすぐご飯できるよ。」
「そうなのか。アァ〜…眠い。」
「もう。お兄ちゃん、しっかりしてー。」
「ニャハハ、二人共顔洗ってこいニャ。」
「はーい。」
そんなやりとりをして二人は洗面台に向かったが、カナタが若干フラフラしていたため風華に支えられながら向かった。
「ハハハッ。相変わらず寝坊助だよなぁ。」
「フフッ。朝はいつもああだよね、カナタ君。」
「そいじゃっ、俺達は先に席に付きますか。」
「うん。そうだね。」
「チョイ待ち、そこのお二人さん。」
キリトと雪菜が席に付こうとした時、帰戸がニヤニヤしながら二人を呼び止めた。
「何ですか?」
「二ヒヒッ。お二人さ〜ん…」
「はい。」
「服、着替えて来るニャ。」
「……あっ…」
そう。誡斗と雪菜はまだパジャマのままなのだ。
今まで帰戸の手伝いをしていたためすっかり忘れていたようだ。
それに気付いた二人は急ぎ足で部屋に戻り着替えて来るのだった。
*****
部屋から戻って来た二人の服装、誡斗は白を基調とした服装をしており、雪菜は黒を基調とした服装をしている。
着替えた足で洗面台に向かい、手を洗い、戻って来た。
「オイオイ、しっかりしてくれよな。タイチョーさん。」
「寝坊助な副隊長に言われたくねーよ。」
「何だとぉぉ… 」
「ハイハイ。二人共、バカなことしない! ご飯冷めちゃうよ。」
「…だな。」「ヘ〜い。」
カナタがキリトを揶揄い、誡斗が反論すれば、雪菜が止める。
「…帰戸さん、このやり取り何回目でしょうね?」
「さぁ、ニャァには分からニャいよ。(…これで297回目。ニャハハ、あと3回で300の大台に乗るニャ。)」
「(ちゃんと数えてるじゃないですか…)」
「そこっ!妙なやり取りするなっ! …そういえば、叶芽とワタルは?」
「多分寝てる、というよりは…」
「徹夜したんじゃね。あの寝坊助姉弟は。」
「いつも通りだな。ならまぁほっとくか。…じゃ、そういう訳で…」
パンッ!
『いただきます!」
何やかんやありつつも五人は手を合わせ朝食を食べ始めた。
どうやらまだ寝ている仲間がいるようだが、いつものことらしく放置しておくようだ。
次回から多分本編です。
どうかよろしくお願いします。