我らは”髑髏衆”
いよいよ敵が見えて… きてるのかな?
そして土煙が晴れた時、そこに香迅と桂践の姿はなかった。
『あっぶねぇなぁ。オイ。』
代わりに前方の切り立った崖の上に二人はいた。
どうやら当たる直前に、飛んで回避したようだ。
「高みの見物気取りか!? 降りてこいよ!」
『叫ぶなよぉ。オメェらが来る前にちょいと上から連絡が来てなぁ。面白そうだから遊んでやったが、それも終わりさぁ。』
「上、だと…?」
『そう言う事だ。貴様らの強さに免じ、ここは引かせてもらう。』
挑発するカナタに対し平然と受け流す香迅。
彼が言うには、彼らの上の存在が退却を指示したらしい。
『折角だ、特別に教えてやるよぉ。俺サマ達はお前らの思う通り、妖神教徒だが立場は違う。』
『我等は髑髏衆の幹部。人間を滅ぼす軍の将よ。』
「髑髏衆…? 人間を滅ぼす軍隊?」
『今回は引くがよぉ、覚えたぜ遊撃隊『天津風』 …次こそテメェらを殺す!』
『また会おうぞ、勇敢なる者達よ。』
「あっ。オイ!」
そう言い残し、二人は一瞬で姿を消した。
「どうする?誡斗。…こりゃ大事になりそうだぜ。」
「…一先ず引き上げよう。取り敢えず任務は果たしたからな。」
妖神教による軍隊、”髑髏衆”。
どうやら問題は簡単には解決させてはくれないようだ。
呑み込めない思いを抱きつつ、キリト達は十六夜へ、双帰亭へと帰還した。
*****
双帰亭に帰って来た誡斗達。
帰戸に出迎えられ龍馬や義道に帰還の連絡を頼むと、そのままベッドにダイブし眠る者や、今日の記録を取る者と各自で自由行動とした。
そして翌日、報告のために再び龍馬達が来た。
「お帰りだぜ~お前ら~!!無事で何よりだぜ〜!!」
「ちょっ…龍馬公、苦しいッス…」
「うッ…! ゲホ…」
「何してんだバカオヤジ!」
「イッテェ! …何すんだよ竜也。折角お疲れ様の思いを…」
「それで二人がぐったりしてるのはなーんでなんでしょうね?」
龍馬は着くや否や相変わらずカナタと風華に抱き付き、竜也に辛辣に止められている。
そうこうしている間にも誡斗や悠里は席の準備を終えていた。
そして始まる報告会では…龍馬のスイッチも変わった。
「一先ずご苦労だった。天津風の諸君。」
「報告は聞かせてもらったが… 由々しき事態だな…」
龍馬と義道は報告内容である髑髏衆の存在を重く受け止めていた。
妖の軍勢が誕生している疑惑、それも自分達の喉元にまで迫っていると思われるのだ。
「件の妖、香迅と桂践は取り逃がしてしまいました。申し訳ございません。」
「構わんよ。むしろこの情報の方が我々にとってありがたい。」
「とは言え次はいつ現れるか…」
「カナタよ。大事なのは”戦果”よりも”情報”なのだ。これは十六夜だけが管轄する範囲だけで済む話ではないのだからな。この月土連邦… いやこの大陸を巻き込む問題だ。」
「故にこの情報を入手できた事は非常にありがたいのだ。諸君、重ねて感謝する。」
「まぁ、いずれにせよ。お前達はまた奴らと戦うやもしれん。今後に備えておくように。」
『了解。』
「より激しく、辛い戦いが待っているだろうが、宜しく頼む。」
その後も多少の会議を行い、義道と悠里は十六夜司令部に、龍馬達は首都『望月』へと向かって行った。
桂践と香迅。
彼等と再び戦う時が来た時の為、この先にあるだろう大きな戦いに向け、天津風は更なる前進を誓うのだった。
なお、龍馬は旅立つ直前までカナタと風華と別れる事を惜しみ、竜也と愛梨に嗜められていたとか。
*****
その夜、月土連邦領内のとある山中にある洞窟にて。
香迅と桂践は通信具である水晶玉に映る人影と話をしていた。
『…と言うわけでして『玉疑』様。厄介な相手になるやも、ですぜ。』
『あの者達、『天津風』は危険です。注意した方が宜しいかと存じます。』
『貴様ら程度を仕留められん人間どもなど放っておけ。それよりも… 宣教師供が集めた部隊の殆ど失った挙句、風牙の盟主どもを逃した事の方がが問題ではないか。』
香迅は話相手を『玉戯』と呼んだ。
いつもの口調ではなく不慣れの様だが、桂践と同様に敬語口調で話している。
髑髏衆の、香迅や桂践の上役のようだ。
どうやら二人は天津風の面々の戦闘力を注視しているようだ。
一方の玉戯は、天津風の事を気にしていない様子。
寧ろ二人が風牙連邦盟主 龍馬を逃した事を問題視しているようだ。
どうやら一連の事件は玉戯が命じたものらしい。
宣教師とは、里にも現れた妖神教を布教している妖達のことだろう。
彼らを使い、妖神教に入った妖達で奇襲部隊を編成したが…
奇襲は失敗した挙句、竜也や悠里、龍馬の活躍でその大半が戦死する被害を受けたらしい。
『貴様らには、風牙の盟主の首を取れと命じたはずだが… 正規軍では無いにせよ、精鋭と呼べる者達を集めた筈、それが大半が死亡とは… 流石は風牙連邦最強と言ったところか。』
『はっ。恐れながら申し上げれば、我らも生き延びた事が奇跡であるかと。…それに集まった連中は、予想より少なかったですし…』
『先日、宣教師が訪れた”風月の森”周辺の者達は壊滅したと聞きましたので、それも原因でしょう。』
どうやら先日誡斗達が退けた妖たちも加わる予定だったはずだが、その頭目を誡斗が倒したことでそうはならなかったらしい。
その分、奇襲当日の数も減ったのだ。
『…まぁ、風牙連邦に関しては『角厳』に任せれば良い。問題は月土連邦だ。』
『しかしながら、『天津風』だけではありません。我々は彼の国の正規軍と一戦交えた訳ではありません。ここは今一度慎重な計画を立てるべきです。』
『相棒に同じく。まだアイツらの全力を見たわけでも、受けたわけでも無ぇんです。』
『わかっている。しかし、お前達がそこまで言うのなら『天津風』とやらはこちらで対処するとしよう。…直に軍勢を率いて私もそこに行く。貴様らは次の指示を待て。』
『承知。』『御意に。』
『”猊下”は勝利をお望みだ。我らが神の為の勝利を…!』
そこで通信は切られた。
玉戯は様々なことを口にした。
「角厳」や「猊下」と呼ばれた存在のこと。
天津風に対する”対処”や、率いてくる”軍勢”のこと。
どうやら、この事件はより大きなものとなる様だ。
天津風はまだ、その事を知らない。
読んで頂きありがとうございます!
「面白い」「続きが読みたい」と少しでも思って頂けたら広告下の
「☆☆☆☆☆」
を押して応援をお願いします。
よろしければブックマークも押して、今後も物語にお付き合いいただければ幸いです。
至らぬ点もありますでしょうが、出来る限り皆様のご期待に応えられる様、精進させて頂きますのでどうかよろしくお願いします!