帰り道の約束。
今回で天津風メインメンバーは全員出ます。
「それじゃ、ここらで失礼させてもらいます。」
『そうか。んじゃ送らせてくれや。』
「お願いします。おじ様。」
館の門で村長は誡斗と雪菜に告げた。
『この先どうなるか分からん。だが落ち着いたらまたここに来るといい。』
「はい。そうさせて貰います。」
「村長。今日はありがとうございました。」
『あぁ。しっかりな。』
別れの言葉を掛けた二人の肩を村長は軽く叩き、館に戻って行った。
里の出入り口に向かう途中、村の外れにある広場の横を通った所で遊んでいた数人の子供妖が近寄ってきた。
『あっ! かいとにーちゃんにゆきなねーちゃん!』
『フタリトモ、モウカエッチャウノー?』
『イッショにアソボーよー!』
あっという間に囲まれて遊ぼうとねだられる。
「悪いな。俺たち、今日は遊べないんだ。」
「お姉ちゃん達、もう帰らないといけないから。」
『えぇ〜! あそぼーよー!』
『ソーヨソーヨ!』
誡斗と雪菜は子供妖達と目線の高さを合わせて、そう告げた。
子供妖達は不満気に声を上げたり袖を引っ張ったりする。
「ごめんね、遊んであげられなくて。でも大丈夫よ。また遊びに来てあげるわ。」
『ほんとッ!』
「あぁ、本当だ。約束しよう。」
『ヤクソクだよー!』
『ヤクソク! ヤクソク!』
誡斗は右手の人差し指を伸ばし、雪菜と子供妖達は同じように右手の人差し指を伸ばし誡斗の指に当てる。
妖における約束は、当事者の右手人差し指もしくはそれに該当する体の一部を当て合う、指切りのような形をとる。
「おっちゃんもやろうよ。」
『ん? いいのか?』
「もちろんですよ。」
『そうか。んじゃお言葉に甘えてっと。』
誡斗と雪菜はこの約束に今まで成り行きを見守っていた一ツ目も入れた。
そして…
「約束。『次会う時は、いっぱい遊ぶこと!』」
『約束。『次会う時は、いっぱい遊ぶ!!』
ここにいる皆でそう約束した。
子供妖達と別れ村の入り口の洞窟まで辿り着いた三人。
別れ際に一ツ目は誡斗と雪菜を抱きしめた。
『そいじゃあカイ坊、雪嬢、元気でな。みんなにも、帰戸姉さんにも伝えてくれ。』
「はい。おじ様、お世話になりました。」
「ありがとな。おっちゃん。必ず帰って来るから。」
『ああ。頑張れよ!』
一ツ目に見送られ、二人は隠れ里から去って行った。
その帰りの道中、月影山の麓にて彼等と会った。
「よぉ!誡斗。雪菜。漢『赤道』仕事から帰ってきたぜ〜!」
「お帰り二人共。そして、ただいまだ。」
一人は炎のような赤い長髪を後ろで結った、茶色い瞳を持つ身長180cm程の若い男。
腰には太刀を履いており、動きを阻害しない程度の鎧を身に着けている。
もう一人は短く切った茶髪に黄土色の瞳を持つ、赤髪の男よりひとまわり高い男。
服装も赤髪の男とさほど変わらないが、両手にはガントレットを着けている。
赤髪の男は仰々しく、茶髪の男は気さくに話しかけてきた。この二人は誡斗達の事を知っているようだが何者だろうか?
「お帰り。小次郎、武蔵。そしてただいま。」
「お帰り。二人共お疲れ様。」
「オイオイ。もうちょっと言う事あるだろう。」
「えーっと…60点?」
「だな。」
「そりゃねぇぜ二人共。せっかくキメたんだからよ〜。」
「ま。それでもいつも通りだったって訳だろ。」
紹介しよう。赤髪の男は「赤道 小次郎」茶髪の男は「緑木 武蔵」と言い、誡斗達よりも年上だがこの二人も『天津風』のメンバーなのである。
この二人、前日まで別行動をしていたのだがどうやら無事に帰って来たようだ。
「とりあえずそっちは上手くいったようで何よりだよ。」
「まぁな。…っても、思った以上に骨が折れたがな。」
「とーぜん! 俺が行ったんだからな!あの程度楽勝で終わらせてやったぜ!」
「こーさんが言っても説得力がないような…」
「右に同じく。無いとは思うが変なことはしてないよな?」
「オイオイ。お前らの中での俺の評価どーなってんだよ。」
「そりゃあ、事件止めようとして事件起こすタイプのやつ。」
「えっと、3日に4回帰戸さんに叱られる人…かな。」
「敵に突撃して、敵に追い回されるトラブルメーカーだな。」
「…お前らの中での俺の評価がよ〜く分かったぜ…」
踏んだり蹴ったりな評価を受けてガックリと項垂れる小次郎。
戦闘においては頼りになる存在なのだがそうでも無い時があったり、それ以外のことでは頼りないようだ。
「でもなんで私たちがここにいるって分かったんですか?」
「帰戸さんに聞いたんだ。向こうで待っててもよかったんだが…」
「どうせなら迎えに行こうぜって武蔵と決めたのさ。」
キリトと雪菜が双帰亭を出てしばらく経った頃に二人が帰って来たようなのだが、どうやら誡斗と雪菜を迎えに来たらしい。
「なるほど… じゃ、取り敢えず帰ろう。話したいことが色々あるんだ。」
「おう。その感じだと、朗報は無さそうだな。」
「ええ。これからの私達を左右するような話になると思います。」
「なるほど。落ち込んでばっかりにはいられねぇってか。」
「そいじゃ行こう。早くしねえと定期便が出ちまう。」
こうして誡斗達は月影山を後に一路双帰亭へと帰って行った。
…姿形が違う仲間と、血の繋がりの無い家族に再会する事を願いながら。
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