プロローグ ”不思議な夢と邂逅”
少年は夢を見ていた。
少年は不思議な場所にいた。
ここは、白い空が広がる。ここは、黒い空が広がる。
ここは、白い雲が流れる。ここは、黒い雲が流れる。
ここは、白い花が咲いている。ここは、黒い花が咲いている。
ここは、白と黒の空が広がり、白と黒の雲が流れ、白と黒の花が辺り一面に咲いている。
あまりに歪みきった異様な空間。
少なくともこの世の景色では無い、そんな場所にただ一人佇んでいた。
「まただ… どこなんだ? ここは?」
この夢を見るのは初めてではない。最近、何度も同じ夢を見ているのだ。
だが、ここは夢にしては余りにも美しく、余りにも歪んでいる。
いや、同じ夢ではあるのだが一つだけ違う点がある。それは…
「また会えたね…」
「ッ!?」
バッ! と後ろを振り返るが、そこには誰もいない。
辺りを見回すがやはり誰もいない。
虚空から聞こえ出す、少年のような声。
「お前は誰だ… どこにいる!」
「フフフ… そんなに怒るなよ。…僕は君の側にいるさ。」
「誰よりも…ね。」
「グッ!? ウゥゥ…」
その声が聞こえた途端、少年を頭痛が襲う。
崩れるように膝をつく。耳鳴りがする。歯が軋む。
視線が揺らぎ意識が消えゆく中、彼は問うた。
「お…前は、グッ… 一体……」
声は答える。
「僕の…ま…は、え…」
「気をつけて……さん…」
声は朧げに聞こえ、やがて意識は遠ざかり…
「ハッ!?」
気がつくとそこは自分の部屋だった。日は昇りきっていないのか、部屋はまだ薄暗い。
どうやら、夢から覚めたようだ。
しかし夢で感じたあの痛みは、実際にあったかのような余韻を残す。
「クソッ…またこの夢か。」
ここ最近、ずっと同じ夢を見るのだ。
不思議な世界に1人立たされ、頭痛で意識が消えてゆく…
最近では、あの謎の声も聞こえ出した。
声は言った。『自分は誰よりもそばにいる』と。
あの声はどこかで聞いたことがある気がするのだが… 誰なのか分からない。
少年は時計を見た。朝の5時を回った所。
再び眠る気にもなれず、少年は気持ちを切り替えようと机に置いてある本を取り、部屋を出た。
そして、今日が始まる。