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悪魔の靴下

作者: リンゴの皮

 メリークリスマス! 世界中の子供達が楽しみにしているクリスマス。子供達が吊り下げた靴下の中にサンタさんはプレゼントを入れてくれる。でも一つだけ注意しなければいけないことがある。クリスマスの夜に、間違って悪魔の靴下を用意してしまった者は、サンタの代わりに悪魔を呼び込んでしまう。だからクリスマスの夜には、自分の靴下を吊り下げてサンタを待たなければいけない。


 学校のみんなはもうサンタさんなんて信じていない。サンタさんはお父さんなんだ。それくらいのことは知っている。でも私には、学校中がクリスマスの楽しさに溢れているように見えた。サンタさんがいてもいなくても、クリスマスは楽しい。

 クラスの男の子が言った。「今年のプレゼントは新しいゲームソフトなんだ」女の子が言った。「前から欲しかったワンピースが買ってもらえるのよ」

 なんでみんな最初にお願いしちゃうんだろう。何がもらえるか分からないから楽しみなのに。私はおとぎばなしのように、今年も靴下を吊るす。お父さんは私が吊るした靴下に、毎年素敵なプレゼントを入れてくれる。

 ベッドの横に吊るす靴下をどれにしようか悩んで、タンスの引き出しを探っていたら、大きな黒い靴下が出てきた。

「きゃっ」

 驚いて靴下を取り落としてしまった。何かその靴下を持ったとき、逆に手を掴まれたような妙な感覚があった。一瞬だけど人の肌を触った気がした。

 お父さんの靴下だろうか? 片方だけで大人物のように大きかった。私は考えた。この大きな靴下ならいっぱいプレゼントが入るかもしれない。

 その日の夜は楽しみでわくわくしてなかなか眠れなかった。クリスマスの夜はいつもこうだ。目を閉じて待っていると、お父さんが部屋に来て、プレゼントを入れてくれる。お父さんは私がまだ起きていることを知っていて、私がこっそり目を開けると、にっこり微笑んでくれる。そしておやすみを言って頭をそっと撫でてくれる。いつもそれで気持ちよくなって眠ることができる。

 でも今日は、なんだか部屋が自分の部屋じゃないみたいで、不安でたまらなかった。お父さんはまだ来てくれないのかな? 小さく目を開けて、真っ暗な部屋を見渡す。

 とても驚いて大声を上げそうになった。

 誰かがいる。

 暗くて見えないけど、確かに誰かが部屋の入り口に立っていた。

「お父さん、なんで電気を付けないの?」

 返事はない。

 怖くなって、怖くなって、大きな声を出したいのに、私の口は泣き方を忘れてしまったように、ひゅっひゅっと空気を細かく吸うことしかできない。

 人の気配が動いて、近づいてきた。まるで真っ黒な影が人の形をして歩いて来てるようだと思った。体が動かない。せめて電気だけでも付けたいのに、金縛りにあったみたいだった。私は今、目だけが必死にぎょろぎょろと動いてるのだと思った。

「誰?」

 誰? と何度聞いても、その人は答えてくれない。もうその真っ黒は私の顔を覗き込めるくらいに近くまで来ていた。

 怖さが爆発した。私は頭の中がぐちゃぐちゃでわけが分からなくなった。

 意識しないで腕が跳ね上がった。

 振り回した腕がそいつに当たった。

 そいつがひるんだので、私は急いで身を起こして部屋の電気を付けた。

 その時、本当に怖いものを見てしまった。

「きゃあああああああああああっ!!」

 ツノを二本生やした真っ黒な体の悪魔だった。口は真っ赤に裂けて、目だけが気持ちの悪いくらいに白くて大きかった。

「きゃあっ! きゃあああっ!」

 私は両手を意味なく振り回して、近くの物を手当たり次第に投げつけて、そしてやがて気が遠くなっていくのを感じた。

 目を開けると、もう朝だった。

 朝日がまぶしいのに部屋の電気はつけっぱなしで、昨日気を失う前に投げた色々な物が散らかって部屋がめちゃくちゃになっていた。

 リビングではお母さんがいつものように朝食を用意していて、お父さんが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。

 お父さんは起きてきた私にプレゼントをくれた。「もうお前も子供じゃないからな」と言って大きな包みを手渡してくれた。プレゼントはハンドバッグだった。お父さんは、「これはさすがに靴下には入らないだろう」と言って笑った。

 私は嬉しくて、昨日の出来事が全部ただの夢だと思えた。そう、ただの悪い夢。こんなに嬉しいのに、こんなに気持ちいいのに、悪魔なんているはずない。

 私は飛び跳ねそうな気持ちで、爽やかな朝の中、学校へ歩き出した。


「まったく、あの子は。女の子なのにこんなに散らかして」

 女の子のお母さんは、娘の部屋の様子にあきれたため息をついて、片付けをしていた。

 そして床に転がる大きな黒い靴下を見つけた。

「あの子ったら、こんな大きな靴下を用意して……。今朝は、プレゼントが入ってなくてがっかりしたでしょうね」

 そして女の子のお母さんは、何気なくその靴下を、ベッドの横のフックに吊るした。

 女の子が昨日暴れた拍子に床に落ちた靴下は、また元の通り、ベッドの横に架けられた。

 そして女の子は――。

初めまして、このサイトへ初の投稿となります。感想超欲しいのでよろしくお願いします。

本当は童話を書きたかったのですが、なんか怖い話になってしまいましたので、ジャンルをホラーにしました。

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