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刀・剣・追・尾


 ユニコーンが駆ける速度に、紅葉は人の足で追いついていた。

 なんらかの魔法で速度を上げているらしい。


「現場に着いたらまずキミの結界で城門を塞いで欲しい」

「わかった。それが終わり次第、市街地に入り込んだ魔物の掃討だな」

「あぁ、避難はすでに終わっているはずだが、逃げ遅れている人がいるかも知れない。十分に気をつけてくれ」

「了解」


 風を切って城郭都市の上空を駆け抜ける。

 空はすでに半分ほどが茜色から透き通るような黒に染まっていた。

 ちらほらと星々も輝き始めている。

 視界が悪くなるが、それでも東の城門がはっきりと見えるくらいには近づいた。


「跳べるか?」

「あぁ、このくらいの高さなら」


 断りを入れてから結界橋の構築を終わらせる。

 そしてユニコーンの速度を大きく上げていく。


「あ、あの……これってもしかして!」

「あぁ、そうだ。しっかり口を閉じてないと舌を噛むぞ!」


 そう忠告をして結界橋の端から高く跳躍した。


「んんんんんんん!」


 七奈は口を閉じたまま器用に悲鳴を上げる。

 それを耳にしつつ、ちょうど着地地点にいた魔物を蹄で踏み潰した。


「さて」


 目の前に聳える城門は、ひどく破壊されている。

 損傷が激しく、門としての役割はすでに果たせていない。

 大きな隙間からは川の氾濫のように魔物が雪崩れ込んでいる。

 はやいところ塞がないと市街地が魔物で溢れそうだ。


「気合い入れるか」


 左右に結界剣を展開し、回転させて魔物の群れへと突っ込む。

 ユニコーンの突進によって、その額に生えた一角が魔物を突き殺す。

 それを躱しても左右の結界剣によって切り刻まれ、駆けた後に血のしるべが伸びる。


「ここまで接近できれば」


 右手を伸ばして結界術を発動する。

 城門の損傷部分を補う形で、元の材質を再現して元通りに復元させていく。


「……いや」


 それだけではダメだ。

 同じように復元しても、またすぐに破られるかも知れない。

 それでは復元する意味がない。

 以前の城門よりも堅牢になるよう補強しないと。

 城門すべてを覆うように改めて結界術を使用し、より強固な門へと改造する。

 急ごしらえで板金を貼り付けたような不格好な物になってしまったけれど、強度は俺が保証する。


「よし、これなら大丈夫なはず」


 通り道が遮断され、補強された城門に向こう側の魔物達が爪を立てる。

 だが、どれだけ引っ掻こうと体当たりしようと城門が破れる気配はなかった。


「あとは、殲滅だな」


 無事に城門を塞ぐことに成功し、とりあえずこれ以上魔物は増えない。

 次に周囲に複数の結界剣を構築し、その内部に魔石を一つずつ転送させた。

 魔石は魔物と引かれ合い、結界剣を自動操縦してくれる。

 それらは残光を引いて馳せ、幾重にも剣閃を交えて周囲すべての魔物を一瞬にして切り刻んだ。


「な、なんですか……今の」


 目の前に広がる凄惨な血の海を見て、七奈の唖然とした声が聞こえてくる。


「必殺技、パートⅠ」

「パートⅡがあるんですね」


 パートⅢもある。


「なんだ今のは、びっくりしたじゃあないか」


 次々と魔石になっていく魔物の亡骸を越えて紅葉が駆け寄ってくる。

 彼女が携えた剣にもまた、血がべっとりと貼り付いていた。

 紅葉も紅葉で先ほどの間に何体か魔物を斬っていたみたいだ。


「これならすぐに掃討できる。そうだ、キミに妖精をつけよう」


 そう言った紅葉の背後から光の塊が飛んでくる。

 優しい光に包まれた小さな人。

 その背中には一対の翅が生えていた。

 これが妖精か、はじめて見たな。


「彼女の道案内に従ってくれ。魔物を見つけ出してくれる。期待しているよ」

「あぁ、期待に応えられるよう頑張らないとな。案内頼んだぜ」


 妖精は返事をするように何度か上下に揺れる。


「よし、一体残らず殲滅だ」


 先行する妖精を追い掛けるようにユニコーンを走らせた。

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