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#05 魔法生物

 私は容易には視認出来ぬほど極細な触手を伸ばし、樹上へと移動する。


 あと念の為に自身の肉体を透過させ風景に溶け込ませる。


 体格もちいさく、透明な肉体ならば視覚情報に頼った生物から襲撃されることはほぼなくなるだろう。


 人心地が付いたところで次に手を加える項目を思案し、ファンタジー世界に必要な要素としてはやはり魔法生物を加えた新たな生態系の構築だと考え、それを優先的に推し進めることにした。


 ただ既に人間を除いた状態での生態系は完成しているので、そこに手を加えるとなると生息域が下手に食い合わないようにしなければならないのはなかなかに厄介だった。


 悩んだ末にそれならいっそのこと現在の食物連鎖の成り立った生態系をそのままに全ての生物を魔法生物として置き換えればいいのではないかと考え方を改めた。


 今あるものに異物を割り込ませるよりは不具合が生じる確率は大幅に下げられるはず。


 最終的には現在未実装の人間の手が入ることで生態系は大きく変化するだろうけれど、その辺は生物の強靭さを全体的に底上げすることで新たな物語の因子として成り立ってくれさえしてくれればよかった。


 方針を定めた私は手始めにそれぞれの生物が持つ最も特徴的な部位、攻撃手段や防衛手段として特化した肉体の一部をより誇張するような変化を与えた。


 またわかりやすい攻撃手段を持ち合わせていないモノには角や外骨格を組み込むなどして危険性を割り増させた。


 これだけだと単純に攻撃性を顕著にした極端な進化をさせただけなので、やはりファンタジー的な魔法生物たらしめるには魔法の実装が必須だろう。


 この惑星の生物は全てナノマシンの集合体なので相互に情報のやり取りだけで実際に特異な現象を起こす必要はない。


 なのでそれらを利用した魔法として拡張現実(AR)の視覚効果との接触判定を用いるものと直接ナノマシンに干渉するモノの2つを用意する。


 あとは大まかな分類と機能制限を設けるために基礎的な属性の設定を構築していく。


 まず火・風・水・土のようなRPGにありがちな4属性は確定として他に何を用意するか悩みどころであるが、とりあえずは決定済みの4属性の設定を手早く進めてから追加属性に関しては追い追い考えることにする。


 4属性の拡張現実(AR)はイメージ通り簡単に設定出来たが、直接干渉した場合にどういった変化を起こさせるか考え、弱体効果や強化効果などを付与させることにした。


 ただし自身の肉体以外への直接干渉の場合、対象が生体情報を内包したナノマシンであれば高い抵抗値が存在するものとする。


 その辺りを考慮して属性に簡単な設定を施す。


 『火』は自身のナノマシン出力の向上や対象に過剰な出力を与えて機能低下や暴走など。


 『風』は物体を風化させるようにナノマシンの結合力低下や空気中のナノマシンに働きかけて振動させ遠方に音を伝達など。


 『水』は腐食や毒のような効果としてナノマシンの情報伝達を阻害する機能不全を起こさせたり、生体情報を持たないナノマシンの液状化など。


 『土』はナノマシンの構成情報を置き換えて石化させての機能を強制停止や地形への干渉など。


 概ねこんなところだろうか。


 ただ機能停止や機能不全を起こさせるようなものを組み込むとなると別に救済措置も必要になるだろうからそれに即したモノを別途用意する必要があるだろうと考え、それを補うような属性を新たに追加する。


 試行錯誤した結果、追加する属性は木・金・無の3つ。


 この3つの拡張現実(AR)と直接干渉の効果はそれぞれ──


 『木』は拡張現実(AR)による攻撃で与えられた損傷情報の修復と直接干渉は生体情報の書き換えによる肉体の形状や強度の変化など。


 『金』は拡張現実(AR)による情報書き換えの影響の低減と直接干渉は生体情報を持たない物体の形状と強度の変化など。


 『無』は拡張現実(AR)による攻撃を吸収保存しての再利用と直接干渉は生体情報の有無に関わらず対象の重量の増減など。


 と雑ではあるが7つ用意した基本属性の設定は完了したので生物の生息地域や生態に合わせて属性を適用させた。


 魔法属性適用後に各地を点々と転移して生態系の変化を観察して周る。


 生存競争は拡張現実(AR)による視覚効果もあって目に見えて派手になってこそいたが、大抵の魔法生物間の食物連鎖に極端な変化は見られなかった。


 ただ大抵はそうだったのだけれど中には特殊な個体が出現して明らかに生態系のバランスが崩れている場面にも何度か出くわした。


 特定の生物が絶滅するほどではなかったので現状を維持したまま見守ることにして私は手を出さなかった。


 弱肉強食とはよくいうが実際のところは適者生存なのである。


 強力な個体が少数発生したところで現在は一方的に捕食されている周囲の生物もやがてはそれに対応する手段を構築して落ち着くところに落ち着くだろう。


 長期に渡って現在の生態系を運営していけば固有宙域パーソナルスペースで再現されていた地球とは全く異なった変化をもたらしてくれそうだった。



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