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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第4章 メジャー挑戦篇
68/157

*** 68 またもやキャッチャーへのコーチング ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……





 みんな頑張ってウエイトトレーニングしてるな。

 でも……


「どうしたかね? なにかウチのトレーニングに問題があるのかね?」


「いえボス、特に大きな問題は無いんですけど……」


「構わないからなんでも言ってくれたまえ」


「それでは……

 みなさんバーベルを10回も20回も挙げていますよね。

 実はウエイトトレーニングの効率を最大限にするためには、6~8回挙げられる最大重量で行うといいんです。

 そして必ず補助員をつけて、最後にどうしてもウエイトが上がらなくなったら、補助員が少し助けてやって最後の1回を達成させるんです。

 この最後の1回が実にいいんですよ。

 それで6~8回の筋トレを2セット行うのが最適ですね」


「なんと…… それもキミの研究成果なのかね?」


「いえ、8年前の西ドイツのスポーツ医学学会の論文誌に載っていました。

 現在では主流になっているトレーニング理論です」


「君はそれを読んでいたのかね……」


「ええ。

 因みにまだ筋肉がそれほど育っていない成長期には、その6~8回2セットを3日おきに行うのが最適です。

 ですから毎日違う部位を交代で10か所ほど、3日間で30か所ほど行いますね。

 それで例えばベンチプレスで180キロが挙がるようになったら、今度は筋力そのものを上げるために毎日の練習に切り替えるんですよ」


「ふぅ~む……」


 あー、なんかおっさん考え込んじゃってるわー。



 俺はその後ワイルドキャッツの練習スタイルの説明を受けたんだ。

 まあ神保さんたちのレポートである程度は知ってたんだけど、改めて説明されると感心することばっかりだったよ。


 まずはコーチや監督が選手に練習を強要することは有り得ないんだ。

 選手は如何なる練習でも拒否出来るんだと。

 その代わり、週1回の面談でコーチから練習方法を助言されるんだけど、その助言に従うか否かは選手自身に任されているそうだ。


 守らなければならないルールとしては、朝8時の集合と宿舎での夜22時の消灯ぐらいかな。

 あとコーチがオーバーワークだと認めた時は直ちに練習を止めないといけないそうだ。

 ピッチャーの投球数もウオームアップを含めて絶対に1日120球までだそうだし、ノックを受けるのも日に120球までだし。

 もちろん練習中に水を飲むのも自由だったけど、塩の代わりにしょっぱい飴が置いてあったわ。


 そうそう、メシも朝6:00~7:00と昼12:00~13:30と夜は18:00~20:00の間に各人が食堂に行って勝手に喰うんだ。

 赤身の肉の料理と豆と野菜の料理が各種大量に置いてあって、自分で好きなだけ取って喰うんだよ。

 でもさ、ここにだけは栄養士がいて野菜が少ないと怒られるんだ。

 どうしても野菜が食えないやつのためには、フルーツや野菜のジュースも置いてあったけどな。

 何人かが鼻つまみながら飲んでたよ。


 そうやって選手たちに自由に練習させてるんだけど、実はコーチたちの「査定」が実に厳しいんだ。

 その査定も複数のコーチが行ったものを、最終的にGMが承認するそうだ。

 まあ「査定」の内容は練習3に対して実際の試合での成績が7らしいんだけどさ。

 それで年末には査定が低くって退団勧告を受けるやつが大量にいるらしい。

 まあその分大勢入団させてるんだけど。


 つまりだ、このワイルドキャッツの育成方針をひとことで言うなら、「自分で育て!」っていうことなんだよ。

 これはどこの球団も同じらしいけど。

 まあ当然かな。

 日本のファームみたいに「俺が育ててやる!」っていうコーチが何人もいて結果的にぶっ壊されるよりは遥かにマシだろう。



 それで数日後に俺はウインターリーグでテスト生として試験登板することになったんだ。

 さすがの俺も驚いたんだけど、上野も臨時に2週間だけテスト生登録して。

 まあ俺のマウンド度胸を見てみたいっていうことなんだろう。


 でもさあ、俺も日米大学野球で3試合に投げて被安打2だからなあ。

 アメリカのメンバーは全員その後MLBのドラフトで上位指名されてたし。

 まあエリックが自分の目で見てみたかったっていうことなんだろう。


 それでまあそこそこ真剣に投げたんだ。

 投球制限は6回までか60球だって言われたもんで、最初から全力で飛ばしたんよ。

 それでやっぱり被安打0で四死球0で奪三振16で6回までパーフェクトゲームよ。

 ホームランも2本打ったし。

 相手の監督の目が真ん丸になってたぞ。


 ベンチにいたエリックも監督も完全に舞い上がってたわ。

 試合後に教えてもらったんだけど、俺の「査定点」はワイルドキャッツ史上最高点になってるそうだ。


 それで舞い上がったまんまのエリックが、上野が帰国するときに払った報酬がなんと4000ドルだったんだ。

 当時の為替レートで約100万円な。

(当時の大卒初任給は平均12万円ほど)


 俺も上野もびっくりだわ。

 上野はそのカネでけっこうな婚約指輪を買ったそうで、それでまた渋谷涼子を号泣させたらしい。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 俺の試験登板の翌日、エリックがキャッチャーを4人連れて来た。


「ユーキ、今日からこの4人のキャッチングコーチを頼みたい。

 春のリーグではキミに投げて貰いたいからな」


「はい、もちろん」


 エリックはスペイン語で同じ内容を繰り返している。


 ふーん、アメリカ人3人にそれ以外1人っていう感じか。

 まあ、国籍で野球やるわけじゃないからどうでもいいけど……



「キャッチャー諸君も、ユーキの球を受けられるようになったら試合に出る機会が増えるだろうから頑張ってくれたまえ。

 ユーキ、あのキャッチャー用防具は用意出来るかな」


「ええ、各種サイズで5人分用意してあります」


「さすがだな」


「まあ、俺にとっても商売道具みたいなもんですからね」


「もちろん代金は球団に請求してくれたまえ」


「あの…… あの防具一式ってチタン合金製なんでかなり高いんですけどいいんですか?

 今持ってる防具はテスト用っていうことで、メーカーさんから預かっているものなんですけど」


「プロ球団が選手から借りた物を使うわけにはいかんな。

 それになんといっても選手の安全のためのものだし。

 それにしてもチタン合金製か。

 はは、まるで戦闘機のボディだな。

 

 キャッチャーがあの防具のおかげでキミの球を受けられるようになれば、我がチームの勝率もかなり上がるだろう。

 道具代ぐらい私の裁量でなんとでもなる」


「わかりました」



 それで俺は全員に防具つけてやったんだ。

 まあある程度サイズフリーだから問題無かったよ。


「な、なあユーキ、この防具一式って買うといくらするんだ?」


「ん? まあ3000ドル(≒当時75万円)ってところかな」


「「「 ひえ~っ! 」」」


 あ、コーチがスペイン語に通訳してる……


 あー、「俺の契約金と同じか……」とか言って項垂れてるよこいつ。



「ところでその防具は全部.22口径の銃弾だったら弾くからな。

 質は最高だぞ」


「じ、銃弾弾くんかよ……」


「ああ、メットなんか.45口径でも弾くぞ」


「「「「 ひえ~っ! 」」」」


「それじゃあまず防具を信頼する練習から始めようか。

 誰からするかい?」


「お、俺からでいいかな」


 おー、ヒスパニックくんヤル気満々だね♪


「もちろん」



「それじゃあ練習を始めよう。

 まずは俺が130キロぐらいのストレートを投げるから、捕球しないで防具で球を弾いてみてくれ」


 アメリカ出身っぽい奴が仰け反りながら叫んだ。


「な、なんだと!」


「いや多少の衝撃はあるけど、ぜんぜん痛くないぞ。

 まあ右手だけには防具がついてないから、ボールが当たらないように気を付けてくれよ」


「お、俺は降りる! そんな無茶な練習でケガしたくねぇ!」


 あー、まあしょうがねえか。

 選手はどんな練習でも拒否出来るんだから。

 はは、コーチもニガ笑いしとるわ。

 それにどうやらこいつバッティングを買われてドラフト指名されたみたいだし、守備練習なんかでケガしたくないんだろう。



「さてそれじゃあ練習を始めるか。

 そうそう、俺はユーキって言うんだけど、君の名前は?」


「キミの名前はもう全員知ってるって。

 それで俺はミゲルって言うんだ。

 それにしてもユーキはスペイン語も上手なんだね」


「やっぱりチームメイトとはコミュニケーション出来たほうがいいから、少し勉強したんだ」


「俺はショーンだ。よろしく頼む」


「俺はマイク」


「こちらこそよろしく。それじゃあミゲルからだったな」


「あ、ああ……」



 それでまあ俺はいつもの通りの練習を始めたんだ。


「ほ、ほんとだ…… ぜんぜん痛くない……」

「すげぇなこの防具……」

「これならもうファウルチップも怖くねぇな」


「それじゃあもう少し球速を上げて行くぞー」


「「「 お、おう…… 」」」



 まあ俺もこのテの練習は4回目だからな。

 しかも相手はドラフトで指名されるような奴らだし。

 3日もするとストレートなら捕球出来るようになっていったんだ。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 翌日俺はエリックに呼ばれた。


「やあユーキ、キャッチャーの訓練は順調かね」


「ええ、みんな頑張ってますからね」


「それで君の論文を読ませてもらったんだが……」


 お、エリックの机の上に論文誌が山積みになってるわ。

 これ全部読んだんか?


「よくこれだけの論文誌を入手されましたね」


「アシスタントにスタンフォード大学まで行って買って来てもらったんだ。

 ついでに定期購読の契約もしてきたよ」


 ほほー、熱心だねぇ。


「それでこの、ティーバッティングと首や動体視力の訓練によって、3か月でチーム打率が3%も上昇したというのは本当かね。

 それからの3か月でさらに3%上昇したというのも」


「ええ、もともとチーム打率18%しか無かったチームでしたから、3%や6%上げるのはそう難しくなかったですよ」


「それでも立派なものだ……

 それからこの首の筋肉の訓練は、危険なので必ずトレーナーとペアで行うべきというのも……」


「ええ、万が一のことがあっては大変ですから」


「そ、そのトレーナーは力はあるのかな。

 ほら、ウチの選手は体の大きな奴が多いから……」


「はは、全員筋トレはかなりやってますからね。

 最低でもベンチプレスで150キロは挙げられるひとたちばっかりですよ」


「そうか…… なあユーキ、キミはこの研究室に所属していたんだろ。

 11月上旬ぐらいからウインターリーグが終わってウチが休みに入るまでの間、試しに2人ほどトレーニングコーチを派遣してもらうことは可能かな?」


「ええたぶん可能です。

 日本でも2球団ほど2軍にコーチを派遣していますから。

 ただ、すべてアンジーの仲介で派遣してます。

 ですからアンジーに相談してみられたらいかがでしょうか」


「わかった、ありがとう。早速アンジーに連絡してみよう」



 翌日には原宿先生から国際電話がかかって来たよ。

 それで俺はいくつかの質問に答えたんだけど、先生は随分と満足してくれてたみたいだわ。

 それで希望者が殺到した中で、最も英会話が堪能な幕張講師と稲毛助手を派遣してくれることになったんだ。


 まあ、野球の本場アメリカでのスポーツドクター兼トレーナーだからな。

 その実績如何ではMLBの選手を研究対象にすることも夢じゃないし。


 エリックは、医学博士号を持った研究者が来てくれるって聞いて、かなりびっくりしてたわ……





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