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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第1章 転生~中学生篇
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*** 5 中学生になった *** 


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……





 1か月ほど経ってから、俺の両親に裁判所から出頭要請が届いた。


「そ、そんな怖いところ行きたくないよう……」


「これ、どうしても行かなきゃならんのか、と、父さんその日は用事があって……」


「あ、それだったら、神保さんに頼めば代わりに行ってくれるってさ」


 はは、両親は神保さんのところにすっ飛んで行ったよ。

 神保さんは用意していた委任状にサインと捺印をさせていたわ。




 裁判所にて。


「……ということで、警察の調べで状況は明らかになっております。

 ところで加害者側は慰謝料を提示して示談を求めておりますが、保護責任者の代理人はどうお考えでしょうか」


「裁判官閣下。

 私の意見を述べさせて頂く前に、被害者自身の意見も聞いて頂けませんでしょうか」


「ふむ」


 はは、裁判官が俺の目を興味深そうに見てるよ。

 まあ今の俺は9歳のガキだからなぁ。


「裁判官閣下。

 それでは僭越ながら、わたくしの意見を陳述させて頂きます」


 裁判官の目が真ん丸になった。


「裁判官閣下からは教えて頂けないものと存じますが、あの教師は以前にも児童に対する過剰な暴力で、今回と同様な事件を起こして来たものと思われます。

 そうして、そのたびに親に示談金を出させて書類送検を免れて来たのでしょう」


 はは、裁判官がほんの微かに頷いてるよ。


「したがいまして、今回もわたくしが慰謝料を受け取って示談で済ませれば、あの教師はまた同様に児童相手に暴力事件を起こすことでしょう。

 今回わたくしが被害にあったのは、過去の事件に全く反省していないという事実を証左しているものと思われますから」


 あー、裁判官の目がもっと真ん丸になったわー。

 それ以上目ぇ開くと、目玉落ちるぞー。


「ですからここでわたくしが示談に応じてしまいますと、また幼気いたいけな児童が犠牲になることと容易に推察出来ます。

 したがいまして、わたくしは示談に応じず、被告の実刑判決を望むものであります」


「…………」


 はは、このひと無言になっちまったか……


「こ、こほん、被害者の保護者代理人はどうお考えですか?」


「裁判官殿。

 わたくしは、この聡明な少年の意向に全面的に賛成しております」


「よくわかりました。

 そ、それにしても、この少年は……

 い、いやこれは本件に関係の無いことでしたな……」



 ということで、あのアホバカは『懲役2年、執行猶予6か月』の判決を受けたんだ。

 ムショに落とせなかったのは少し残念だったが、これで教員は馘だ。

 いかに教員が公務員で馘にしにくいとは言え、暴行傷害と保護責任遺棄の有罪判決だからな。

 まあ、当然のことだろう。

 これで反省するかどうかはわからんが。


 そういえば神保さんがあのアホバカにマーカーをつけてたよ。

 児童に暴力を振るおうとしたとき、もしくは俺への敵対的意思を持って500メートル以内に近づいたときは、頭蓋骨を陥没させる自動魔法付きマーカーだ。

 1か月後と1年後に2回も発動してたんで驚いたけど……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 俺は4年生になった。

 筋トレは13歳からが適合期ということであまりしていないが、ここ7年間毎日300球ずつ投げて来ているおかげで、かなり速い球を投げられるようにもなっている。

 最近は風魔法で遮音したケージの中で、バッティング練習も相当やってるけどな。


 それでそろそろ体作りのためにランニングも始めたんだよ。

 常人の10倍のミオグロビンと15倍のヘモグロビン持ってるけど、使いこなせないと意味無いから。

 でも、こんなNOxだらけの街中じゃああまり走りたく無かったんだよなぁ。

 でも神保さんの会社は九段下にあったから、皇居の北の丸公園が近かったんだ。

 中には周囲800メートルほどの周回コースもあったし。


 それで俺はこの周回コースで走り始めたんだけど、すぐにランニングにハマっちまったんだわ。


 走るってなんて気持ちいんだろう。

 はは、脳内快楽物質であるエンドルフィンがドバドバに出てるわ。

 いわゆる脳内麻薬な。

 これがランナーズハイっていうやつなんだろう。


 っていうことで、俺の日課にはランニングも追加されたんだ。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 俺が6年生になったとき、とうとうアレが来ちゃったよ。


 ん?

 何バカ言ってんだよっ!

『初潮』なんか来るわけ無いだろっ!!!

『精通』に決まってんだろっ!!!!!


 そーなんだよ、朝起きたらパンツがカピカピよ。

 仕方ないから『クリーン』の魔法かけたんだけどな。

 あの物質が『クリーン』でどっかの異次元に飛ばされて漂ってるかと思うと、なんか切ないよな。はぁ。



(勇者さま)


(げっ! 神保さんっ!

 ま、まさか見られたんじゃないよなっ!)


(女神さまより、至急神界にお越し頂きたいとの連絡がございました)


(げげげげげ…… も、もう……)



 それで俺が神界に行ったらさ。

 スケスケのネグリジェ着た女神さまが待ち構えてるんだわ。

 ってゆーかそれ、『スケスケ』じゃないですね、『完全透明』ですよね……


「おめでとうございます、未来の我が子の父よ♡

 ついに精通を迎えられましたか♡

 あなたがあの『クリーン』で異次元に飛ばされた物質は、先ほど回収させて頂きました。

 一生の記念に永久保存させて頂きますね♪」


(うげげげげげげ……)


「それでは子種をよろしくお願い申し上げます。

 わたしくしのカラダも、もうすっかり準備は整っておりましてよ♡」


「あ、あの、女神さま……」


「いやん♡ 俺の女って仰って♡」


(うーげげげげげげげげげげげ……)


「あ、あの、実はお願いがございます」


「なんでしょうか? あ、体位はあなたの好きなものでいいですよ♡」


「い、いえ、俺、出来れば自分の子とは一緒に暮らしたいんです。

 もちろん、その子を生んでくれた女性とも」


「えっ……」


「ですが俺の夢はまだ遥かに先です。

 俺の夢が叶ったら、必ずここに戻って来て一緒に暮らしますから、それまで待っていて頂けませんでしょうか。

(まあ、女神さまだったら10年や20年は待てるよな)




「う、うええええええええ――――――――ん!

 び、びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――ん!」


「ど、どうされましたかっ!」


「こっ、子種を下さるだけじゃぁなくって、一緒に暮らして頂けるの?

 ひっく、ひっく、そ、それって……」


「はい、そのときは俺と結婚してくださいっ!」


「ひぃー――ん、う、嬉しいでしゅ~~~っ!

 嬉しいでしゅよぉ――――――っ!」

 あ―んあんあん…… えーんえんえん……」


 それで俺、女神さまの背中を「よしよし」してあげようとして近づいたんだけどさ。


(と、届かねぇ……)


 女神さま、結構長身なもんだから、胸部装甲が俺の頭の上に乗ってるんだもんなー……


 そしたら、やっぱり号泣してる神保さんが台を持って来てくれたんだ。

 だから、仕方なくその台に乗って女神さまの背中を「よしよし」してあげたんだけど……


(なんちゅーサマにならん抱擁だろか……)




 それでようやく女神さまも落ち着いてきたんだけどさ。

 目をつむって上を向いたからキスしてあげたんだ。

 そしたら、俺たちの周りを天使と天使見習い1個師団がファンファーレ鳴らしながら飛び回って大騒ぎよ。

 すごかったわー。



「あの、勇者さま、い、いえあなたさま……

 わたくしいつまででもお待ち申し上げておりますわ♡

 1000年でも1万年でも……」


(それ俺のカラダもたないかんね!

 スケルトンになっちゃうかんね!)




 そしたらその後に、なんか神保さんや天使たちの俺への扱いがとんでもないものになったんだよ。

 どうやら彼らの脳内では、


 女神さまが大切にされている勇者さま < 将来女神さまのお子さまの父上となられるお方さま <<<<< 女神さまの婚約者さま


 っていう変化が起きたらしいんだ。

 ま、まあ仕方が無いかもね……




「ところで神保さん」


「はい」


「今1972年っていうことは、あの『ミュンヘンオリンピックの悲劇』の年ですよね。


「はい……」


「あのテロ事件って、なんとか防げませんか?

 その後の歴史の因果律を変えずに」


「畏まりました。

 すべて私共にお任せくださいませ」


「ありがとうございます……」


 うん、ニュース見てても何も起きてなかったみたいだ。

 よかったよかった。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 トレーニングと勉強に明け暮れる日々は無事に過ぎ去り、俺は中学生になった。

 もちろん地元の公立中学だけど。

 当時はお受験するようなヤツはほとんどいなかったし。



 入学して最初の体育の授業で身体測定と運動能力測定があった。

 このときの俺の身長は170センチ、体重は50キロ。

 神保さんが白状したんだけど、俺の身長遺伝子をいじったせいで、高校1年では185センチ超、最終的には2メートル少々に達する可能性が高いらしい。

 ま、まあピッチャーは背が高いと有利だろうからいいけどな……


 握力は、ホントは左右とも100キロあるけど、目立ちたくなかったんで、50キロに留めておいたよ。

 それでも中学1年生にしては相当なもんだったけど。

 ソフトボール投げなんか、本気出せば100メートルも軽いけど50メートルに抑制した。

 走り幅跳びも同様だ。

 本気出したら砂場飛び越えちまうもんな。


 ただ…… 

 北の丸公園内の周回コースで測定された1500メートル走では、いつものコースにすっかり気持ち良くなって、キロ3分のペースで走っちまったんだわー。

 つまり1500メートル4分30秒な。

 もちろん、超ぶっちぎりでトップだわ。


 そしたら計測終了後に体育の市ヶ谷先生が近寄って来たんだ。


「なあ神田、今度の千代田区大会の1500メートル走に出てみないか?」


「はいっス」


 区大会の会場はなんとあの国立競技場だ。

 さすが千代田区は、法人の本社が多い割に住民が少ないんで金持ちだよ。

 それで俺は国立で走ってみたかったこともあって、出場を快諾したんだ。


 結果は1500メートルで優勝。

 記録は4分20秒。

 これは当時の日本中学生記録にあと15秒の記録だそうだ。


「なあ神田。都大会にも出てみないか?」


「ええ、いいっスよ」


 記録は4分10秒でまたもや優勝。

 まあ、本気出せばもっとイケたけど、あんまり目立っても仕方ないしな。

 でも途中までやたらに食らいついて来たやつがいたんで、俺も少しムキになっちまったんだ。

 もっともそいつは最後の200メートルで大失速してたけど。



 それでとうとう、俺はその年の8月に神奈川県で開催される全国中学生陸上大会(全中)に、東京都代表として出場することになったんだ。


(まあ、報道も無いようだし、あんまり騒ぐやつもいないだろうから、そこそこ力出して走るか)


 このころから毎日市ヶ谷先生が練習に付き合ってくれるようになった。

 そうして、走り方だけじゃなくって筋肉のケアの仕方やストレッチ、さらには試合前のカーボローディング(大量の炭水化物を摂取して体内にグリコーゲンを蓄えること)まで教えてくれたんだ。


(このひと、根性論は全く口にせず、かなり科学的なトレーニング方法を教えてくれるなぁ。

 さすがは全日本体育大学陸上部、長距離走班元主将で箱根駅伝にも出たことあるひとだわ……

 科学的思考能力偏差値75だし、指導力偏差値も78もあるし)


 それで俺、その後はトレーニング理論に興味を持って、自分で研究して行くようになったんだ。

 もちろん高校に入ってからの野球のためだけど。



 中学総体1500メートルは、中学1年生ながら俺の優勝で終わった。

 記録は3分58秒で、当時の中学生国内新記録だ。


 でもまあ、陸上専門誌にちょこっと名前と記録が出ただけで、ほとんど誰も騒がなかったからよしとしよう。



 でも、市ヶ谷先生は……


「なあ神田、お前5000メートルや1万メートルは走れるか?」


「ええ、小学生時代にはそれぐらいはよく走っていましたから」


 それで今度は北の丸公園内周回コースで試しに1万メートルを走ってみることになったんだ。


 記録は29分25秒。

 当時は箱根駅伝でレギュラー間違いなしって言うぐらいの記録だそうだ。

 そして、急に真剣な顔になった市ヶ谷先生は言ったんだ。


「今度全体大に行って、正式なトラックで記録を測ってみないか?」


「ええ、いいっスよ」










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