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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第2章 高校野球篇
45/157

*** 45 甲子園優勝、その後 ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……





 東京に帰った俺たちを出迎えたのは、超大量の報道陣だった。

 高校の正門前はもちろん、中には校舎まで突撃してくるアフォ~なやつもいる。

 まあ、神保さんがすぐに警備会社の警備員1個小隊を手配してくれて、なんとか収まったけど……


 自宅周辺はもっとヒドかったわ。

 この時代の報道陣って「夜討ち朝駆け」が当たり前だったから、家の中にまで入って来ようとするんだぜ。


「ねえ勇樹、あのひとたちってなんなの?

 なんか新聞の名前とか勇樹を出せとか喚いてるけど……」


「さあ?」


「お前の話を聞きたいんだったら、カネ払わせて話してやったらどうだい?

 集金は母さんがやってあげるから♪」


(そのカネ、俺に渡す気絶対に無いだろ……

 目が¥になってるし……)


「いや、新聞社って『取材してやるからありがたく思えっ』っていう感じなんだ。

 だから母さんも、下手に質問に答えようものなら、後で『5000円払え』とか言われるかもよ」


「ええっ! わ、わかったわ! なんにも喋らないからっ!」



 それから夕方帰って来た親父が喚いたんだ。


「勇樹っ! お前、甲子園で優勝したのかっ!」


「ああしたよ」


「な、なんで甲子園に行くことを言わなかったんだっ!」


「いや、『今度関西で大きな大会があるんだけど見に来るかい?』って聞いたけど、親父もお袋も、交通費が自費だって聞いて『行かない』って言ってたよね?」


「お、俺はお前のせいで、ご近所のひとに『おめでとうございます!』って言われて何のことかわからずに大恥かいたんだぞ!」


「ああそうか、親父は恥かかされたから怒ってるのか」


「な、なんだとっ! 当たり前だろうっ!」


「怒る前にせめて『甲子園優勝おめでとう』とか言ったらどうかな?」


「う、うるせぇっ!」


「それにウチの高校の甲子園での活躍は毎日新聞に書かれてたろ。

 読んでなかったのか?」


「やかましいっ!」 




 でもそのあと夫婦して、

「これで卒業後はプロに行かせて契約金ガッポリ♪」とか、

「複数球団に裏契約金吊り上げさせてお金持ち♪」とかひそひそ言ってるんだわー。

 もうどうしょうもない親だよなー……

 こりゃ来年俺が進学希望とか言ったときは、また大騒ぎになるかなー……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 その後も日比山高校野球部は効率的な練習を続けた。


 土日のグラウンド周辺はギャラリーでいっぱいだ。

 近所の店が臨時売店まで出してるほどだ。

 またしても神保さんが外のトイレやベンチを大増設してくれてたよ。



 そうそう、あの比嘉高校の新大久保くんからお手紙が来たんだ。

 いくつかの球団からドラフト指名の挨拶を受けて、練習も見学させて貰ったそうなんだけど、その練習内容があまりにも比嘉高校の練習と違ってたんで迷っているらしい。

 それで参考までに日比山の練習を見学させてくれないかって丁寧に頼んで来たんだよ。


 それでまあ別に秘密にしてるもんじゃないし、すぐにお返事書いてOKしたんだけどな。

 なんかあいつとは『野球仲間』っていう気持ちもあったし。

 そしたら新大久保くんに加えて3番の高田馬場くんやバッテリーの2人も加わって4人で遥々見学に来たんだ。


 それでさー、今度は俺たちの練習見て観客席やグラウンドの端で新大久保くんが涙ぼろぼろ流して泣いてるんだわー。

 宿舎にも泊めてやったんだけど、夕食時には俺やお茶の水先生にも泣きながら質問しまくって来てたし。


 奴らが感激したのは、やっぱり、

『練習中にみんなが随時水を飲んで塩も補給してること』

『見たこともない準備運動ストレッチのことなをたっぷりやっていること』

『筋肉痛の選手が練習を休ませられていること』

『守備練習や投球練習が異様に少ない代わりに、見たこともない機器で筋トレをしていること』

『練習が終わるとすぐに豆ドリンクや野菜ジュースを飲んでいること』

 特に俺の通称怪獣筋トレにも驚いてたけど……


 そしてなにより、

『グラウンドには生徒しかおらずに監督やコーチがいないこと』

『筋肉痛も無く、水分塩分も補給しているために、選手が常に溌溂と動いていること』

 そして、

『誰も辛そうに練習しておらず、笑顔も多いこと』

 にも驚いていたんだ。


 もちろんピッチャーの長距離ランニングも無いしな。


 ついでに、

『夜の宿舎でみんなが勉強してること』にも驚いてたけど……


 それでどうやら新大久保くんは、プロに行かずに大学に行って教員を目指す気になったようだ。

 そして中学や高校野球部のコーチや監督になって、日比山みたいな練習をさせてやりたいんだと。


 それを聞いて吉祥寺先生もお茶の水先生もなんか嬉しそうだったわ。


 新大久保くんたちは予定を変更して5日間も俺たちの練習を見学してたよ。

 俺の変化球も左右含めて全部見せてやったら、それでまた号泣してたけど……



 新大久保くんがドラフトの重複1位指名を蹴って大学に行って教師になるって言ったら、プロ球団の監督やらコーチたちは額に青筋立てて怒ってたそうだ。


 まあ、この時代のプロ監督やコーチは9割がた高卒だしな。

 何故だかわからないんだけど、高卒の奴らって大卒に対してものすごい敵愾心持ってるんだよ。

 だからせっかくプロに誘ってやったのに大学なんか行ってしかも教師になるなんて、ヘイトの対象にしかならなかったみたいだな。

 ドラフトでも大卒の選手は絶対に指名しない監督も多かったし。

 だからますますプロ選手は高卒ばっかりになっていったんだけど。


 野球能力と学歴ってなんか関係でもあるんか?



 


 そうそう、俺たちの練習は、他の運動部の連中も大挙して見学に来るようにもなっているんだ。

 まあ、真摯に頭下げて頼んで来たから許してるけど。


 それで、どの部でもみんな練習中に水分と塩分を摂るようになったんだ。

 正しい筋トレもだ。

 陸上部の長距離選手以外は10分以上のランニングもしなくなったそうだし。


 おかげでみんな、3時間以上も集中して練習出来るって驚いてたよ。

 でもその分筋肉には負担がかかるんで、アイシングも大流行しているんだ。

 それ見て学校側が製氷機を買ってくれたんだぜ。

 みんな激しい練習の後に、片腕や片足だけアイシングしてみて、翌日のコンディションが明らかに違うのに驚いてたわ。


 でもこれ、「筋肉痛にならないで嬉しい」っていう手法じゃあないからな。

「筋肉痛にならないで済むんだから、その分密度の濃い練習をしろ!」っていうことだからな。



 そんなわけで、俺たちは秋の大会に向けて、実に効率的な練習を続けて行ったんだ。


 その結果……

 秋の明治神宮野球大会高校生の部。

 優勝は我が日比山高校。


 もー全試合に報道陣だの大学関係者だのが押しかけてタイヘンよ。

 どっかで俺が進学希望だって漏れたんだろう。

 大会に出場してない大学の関係者まで来てたし……



 そういえば神保さん情報なんだけど、あの甲子園1回戦で解説していたど厚かましいおっさんは、所属する大阪大丸体育大学の野球部担当教授から、『あの神田投手に我が大学に来て貰えるよう勧誘して来い!』って言われて顔面蒼白になったらしいな。

 それで出張費も出たんで東京には来たものの、俺のツラも見たくなかったんで飲み屋街に入り浸った後に大阪に帰ったらしいんだけどさ。

 それが教授にバレて謹慎処分を喰らってたそうだわ。

 どうやらその教授もたまたま手が空いたんで明治神宮大会を観に来てたらしいな。




 日比山高校は春の選抜甲子園の出場校にも選ばれたよ。

 高野連合の一部には「あのような頭髪の高校生を選抜するなどもってのほかじゃ!」とか喚いたジジイもいたらしいんだけど。

 でも、夏の大会と秋の明治神宮大会の連続優勝校をハブったら、高野連合の正気を疑われるよな。

 ヘタしたら主催者の毎〇新聞の不買運動とか起きる可能性もあるし。


 それで慌てた毎〇新聞の上層部がねじ込んで、急遽その選抜委員を引退させたそうだわ。

 それで激怒したジジイは足で机蹴ったんだけど、またしても神保さんの餌食になって、足首を複雑骨折したそうだ……


 今度神保さんによく言っておくよ。

 うっかり俺にぶつかったりしたヤツ、骨折させないようにって。

 俺が満員電車なんか乗ろうもんなら、大惨事になるかもしらんから。

 救急車1個中隊緊急出撃とか見たくないぞ。




 このころになると、他校のコーチとか野球部のOBとかが大挙して日比山に来るようになったんだ。

 コーチにしろとか監督にしろとか言って。

 中には3浪しても大学受からなかった卒業生とかもいたし。

 みんな人生一発逆転狙って『あの日比山の監督やコーチになれたら!』って鼻の穴膨らませながら来るんだけどさ。

 でも吉祥寺先生が面接してみんな追い返してくれたんだ。

 面接で練習方針聞いても『毎日木刀でぶん殴ってでもうさぎ跳びでグラウンド10周させますっ!』とか言った莫迦までいたし。

 

 そうした便乗莫迦があまりにも多かったんで、とうとう先生は『日比山高校野球部の監督コーチは教員免許所持者に限ります』っていう方針にしたんだよ。

 そうすりゃあ阿呆な応募者も激減するだろうと思ってな。


 そしたら『その免許はどの教習所に行ったら貰えるんですか?』とか聞いて来た奴までいたそうだ。



 そうそう、そのうちのひとりが雇ってもらえなかったのを逆恨みして、夜中に覆面被ってグラウンドに忍び込んで、マウンドにペンキ1斗缶分ぶちまけようとしたんだわ。

 でもその瞬間に、神保さん配下の天使たちに警察署のロビーに転移させられちまって、おかげでロビーがデロデロになっちまったんだよ。

 それで現行犯逮捕されて、公務執行妨害と器物破損で前科1犯よ。

 

 どうやら天使さんたちは、あの神保さんのグラウンドだけじゃなくって、野球部員そのものまでガードしてくれてたらしいんだ。

 だから俺も神界に行ってめーちゃんといっしょにみんなにお礼を言ったんだけどな。

 なんか全員が感激してて、すっげぇ嬉しそうだったわ。

 グラウンド警備していた天使たちがみんなのヒーローになって胴上げされてたし。


 おかげでグラウンド周辺は天使さんたちが1個中隊駐屯して常時警備してくれるようになったそうだ。

 フェンスに立小便しようとした酔っ払いオヤジとか、自分の小便が全部頭の上に降って来てびっくりしてるらしいな……





 そして迎えた春の甲子園選抜大会。

 終わってみればまたもや日比山高校の優勝。

 俺は2本ほどポテンヒット打たれたけど、自責点はゼロのまま。

 まあ、ノーヒットノーランは3回しか達成出来なかったけどな。


 でも、高野連合から『過剰な連続敬遠四球自粛』の通達が出てたもんだから、おかげでホームランは全試合の15本よ。

 みんなも練習の効果が出て来たのかそれなりに打ってたし。

 上野なんか甲子園通算打率が2割3分まで上がって来てたわ。



 春の甲子園が終わると俺たちはまた真面目に練習を始めた。

 去年と違うのは2年生や1年生のためにも練習試合を増やしたことかな。


 2年生ピッチャーの2人が頑張ってて、けっこういい球放るようになってたから、3回ずつ投げさせたんだ。

 神保さんが宿舎を大増設してくれてたから、それこそ全国から強豪校が試合しに来てくれてたし。

 先方さんも、宿泊費無料で食事自炊すれば交通費だけで来られるから、随分喜んでいたよ。

 1泊余分に泊まって俺たちの練習を見学してた奴らも大勢いたし。

 みんな俺たちが練習中に水飲んでるの見て相当にびっくりしてたぞ。



 でもまあ、みんなが来てくれたのって俺の球を見るためでもあるから、俺もサービスで3回ほど投げるんだ。

 先発が2年生で、俺が4~6回を投げて、終盤はまた2年生に任せるとか。

 こうすれば俺が卒業しても、こいつらが2枚看板エースとして投げて行けるだろうからな。

 それに交代で先発の緊張感も味わせてやれるし、肩の負担にもならないし。


 そしたらさ、吉祥寺先生が俺にファーストかライトの守備も練習してみたらどうかって言うんだよ。

 7回に2年生と交代した後は、守備に入ってピンチになったらいつでもマウンドに戻れるようにって。


 それで試しにライトの守備やってみたんだけど、これが予想外に面白かったんだ。

 ライナー性の当たりを追いかけてダイビングキャッチするとか、ライト線や右中間の当たりを2塁や3塁でアウトにするとか。

 特に送球するときに右に軸が向いたジャイロで送球するとさ、重力とマグヌス効果が相殺されて、3塁ぐらいまでだったらずっと真っすぐ飛んでく球になるんだ。

 より低い球の方がよく伸びるから、ひょっとしてエクラノプランみたいな『地面効果』も働いているのかもしらん。

 投げ出しの球速も155キロあるし。

 

 だから初見の相手だと、ほとんどアウトになっちゃうんだ。

 みんな目ぇ真ん丸にして驚いてるけど。

 はは、ライトの大崎もだな。


 これ…… なんか『狩り』やってる気分なんだよ。

 ヒトが持ってる狩猟本能を最高に満足させてくれるんだ。

 守備って楽しいんだな。

 

 それで俺の送球についたニックネームが『レーザービーム』よ。

 すまんなイ〇ローくん、君の得意技名を先に頂いちゃったわ……




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 そうそう、東京都教育委員会と高野連合に何度も足を運んでさ。

 『日比山モデル』っていう商標権を登録していいことになったんだ。

 その代わり、日比山高校や野球部の個人が見返りに物品や金銭を一切受け取らないっていう誓約書にサインして。


 それで、その『日比山モデル』っていう商標登録の使用権を、あの「八王子製作所」にあげたんだ。

 会長さんも開発部長さんも号泣してたぞ。


 おかげで春の野球用品見本市は大騒ぎよ。

 その後は日本全国から注文が殺到して、八王子製作所は3交代制の24時間操業になっちまったそうだ。

 でも追加の従業員はどんどん雇ってるし、給料は5割増しだし、ボーナスも倍にしたそうだし。

 だから目の下真っ黒にした従業員さんたちも、みんな笑顔なんだ。


 一度工場見学に行ったんだけど、なんか陽気なタヌキかパンダの集団が野球用具作ってるみたいで、大丈夫かって心配したよ。



 俺たちが夏の甲子園でも優勝したころには、野球防具のテレビCMも始まった。

 特に人気があったのは、あのケブラー繊維製のアンダーウエアだそうだ。

 あと軍用基準すら満たせるチタン&ケブラーヘルメットも。

 それから上野が使ってた防具もバカ売れらしい。

 打者用のレッグガードもアームガードもだ。


 日本中の小学生や中学生たちが使い始めてるそうで、大日本アマチュア野球連合の調査では、全国の野球少年たちの怪我が大幅に減って来ているということだ。

 そろそろプロでも使うヤツも出て来てるし……



 というように日本中で日比山旋風が吹き荒れた後、9月になった。

 つまり10月のドラフト会議が迫って来たんだよ……



 ある日、土日のミニ合宿を終えて自宅に帰ったら、にこにこ顔の両親が待ち構えてたんだ。

 真新しい洗濯機とテレビが置いてあったんで、イヤな予感がしたんだけど……



「ねえねえ、今日も5つの球団のひとがドラフトっていうものの指名とかのあいさつに来てくれたんだよ。

 昨日は7球団も」


(全球団かよ……)


「それでみんな『これはご両親にほんのご挨拶代わりです』って言って札束置いて行ったの♪。

 ラビッツとエレファンツとスパローズとラクーンズが100万円ずつで、他の球団は50万円ずつ♪」


(日本のプロ野球界は動物園かよ……)


「それにさ、ラビッツは契約金は500万円だけど、それ以外に別に1000万円もくれるっていうのよ♪」


「他の球団は多くても合計1000万円だったから、お前ラビッツに行け」


(俺の希望は聞かないのかよ……

 それにドラフト制度知らないんかよ……

 ああそうか、このひとたち、自分が知らないカタカナ言葉見ると文章読むのヤメちゃうからな)



「あのさ、まず球団の担当者が言ったのは、本当に『これはご両親にほんのご挨拶代わりです』っていう言葉だったのかい?」


「も、もちろん本当だってば!」


「正確には、『これはご両親にほんのご挨拶代わりですので、お預けさせて頂きます』って言ってなかったかい?」


「えっ……」


「い、いやそんなことは絶対に言ってないっ!」


「あ、そう…… 

 でも、たぶん、いや間違いなく連中は服の中にテープレコーダー入れてるよ」


「えっ……」


「それでもし俺が入団しなかったら『預けていた契約金の一部を返してください』って言ってくるよ」


「そ、そんなことあるわけないだろうっ!」


「そ、そんな…… もう使っちゃったよぉ。

 冷蔵庫も買ったから、明日届くし……」


「それじゃあ貯金崩して返すしかないね。

 だいたい、もし仮に俺がプロに行ったとしても、1球団だけだからね。

 残りの11球団には返さなきゃなんないよ」


「そ、そんな……」


「そんなもの、お前が12球団全部に入団すればいいだけの話だろうに!」


 俺はあんぐりと口を開けた。


(まさか親父がここまでアフォ~だったとは……)


「お父さん、それいいアイデアね♪」


(お袋もアフォ~だったか……)



「あのさ、同時に複数球団とは契約出来ないんだよ」


「えっ、そ、そうなの?」


「それから俺、プロに行く気無いから。進学希望だから。

 明後日に記者会見開いて、進学宣言する予定だから」


「ゆ、許さんっ! お前はプロに行くんだっ!」


「そうだよ! ラビッツに行ったら1500万円も貰えるんだよ!」


「それ、例え貰っても俺のカネなんだけど……」


「なんだとこの親不孝者がっ!」


(なんだとこの子不幸者がっ!)


「そ、それにアンタまだ未成年だから、親が預かるのは当然でしょ!」


「でも進学するから意味無いよね」


「ふざけるなっ! 大学の学費なんぞ出してやらんっ!」


「じゃあ仕方ないね。自分でなんとかするよ」


「こ、こここ、この親不孝者がっ!

 出て行けっ! もうこの家には住まわせてやらんっ!

 野宿したくなければプロに行くんだっ!」


「そんなこと言ってもこの家神保さんの物なんじゃない?

 神保さんは俺が大学行くの大賛成だから、家を追い出されるのは父さんかもね」


「な、ななな、なんだとぉぉぉっ!」


「でもまあいいか。

 一応礼は言っておくよ。今まであんがとさん♪

 ああそうそう、使っちゃった預り金、早く穴埋めしといた方がいいかもだよー♪」


 その後、家の中の物が壊れる音を聞きながら、俺は住み慣れた家を後にしたんだ……





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