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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第2章 高校野球篇
43/157

*** 43 甲子園3回戦へ ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……





 そうこうしているうちに、俺たちは甲子園3回戦、〇〇県代表の小名川大学付属第二高校との試合に挑むこととなったんだ。


 だけどさ……

 俺、すっげぇイヤな予感がしてたんだわ……

 まさか…… まさか無いよな……


 そして……

 試合の始まる直前、先攻の小名川第二高校の1番バッターが打席に入るとき……

 俺の予感は恐ろしいことに的中してしまったんだ……


 そう、相手側応援団の応援が大きく響いて聞こえて来たんだよ……


「頑張れ頑張れ、オ●ニー♪」「頑張れ頑張れ、●ナニー♪」って……



 ぎゃはははははー。


 やべぇ、俺の腹筋が破れそうだーっ!

 いくらなんでもその応援はヤバいだろうに!

 もうプレイボールかかるんだぞ!

 絶対ぇおまえらワザとやってんだろっ!


 仕方ねぇから自分に『聴覚遮断』と『クイックLv9999』の魔法をかけて、心の中で般若心経唱えてたわ。

 3秒間で100回ほど。

 それでようやく冷静になって、出来るだけ早く試合を終わらせようとして頑張ったんだ。


 おかげで、ボール球ゼロ、奪三振25のパーフェクトゲームになっちまったわー。

 試合時間も大会最短記録の1時間15分。

 お、おまえらの応援が悪いんだからなっ!



 んでもって、3回戦の他の試合を見ているうちに、まただんだんイヤな予感がして来たんだ……

 そして、俺の『危機察知Lv9999』は必ず的中する……


 だってさ、4回戦準々決勝の相手が西東京代表「青梅おうめ工業高校」なんだぜ!


 俺が初球投げる直前の応援が、

「頑張れ頑張れ、オ●コー♪」「頑張れ頑張れ、●メコー♪」なんだぜ!


 ダメだよこんな学校を関西の大会に出しちゃっ!

 少なくともこの応援禁止にしろよっ!

 放送禁止用語だろうにっ!


 まだあのマラソン大会よりはマシだけどな。

 だってあの大会、もし外国人選手を招待して国際大会にして、「青梅国際マラソン」になったらさ。

「オー●コ クサイ マラソン」って発音する外人が必ず出てくんだろ!


 おかげで俺は、試合前にまた般若心経100回唱えてから、ボール球ゼロ、奪三振27のアルティメットパーフェクトゲームよ。

 最短試合時間記録更新よ。

 お、俺のせいじゃないかんなっ!




 で…… 5回戦、準決勝の相手は少しはまともな名前だったんだけどな。

 〇〇県代表の比嘉ひか高校っていうんだ。

 な、まともだろ?


 でもさ……

 もしこの高校に付属中学があったら、略称「ヒカチュウ」って言うのかな……

 東京浅草に雷門かみなりもん中学ってあったら「ライ〇ュウ」って言うのかな……




 5回戦準決勝の対戦相手、比嘉高校は豪打で知られる優勝候補の一角だそうだ。

 県予選のチーム打率は4割5分近い。

 チーム本塁打も30本もある。


 特に4番ファースト新大久保は、県予選での本塁打7、打率5割7分。

 秋のドラフト会議での重複1位指名が確実と言われている、俊足好打の超高校級の選手だということだ。

 また、3番の高田馬場も打率5割5分の好打者でドラフト候補だという。


 野球マスコミでは、4試合で被安打ゼロの俺と比嘉打線の対決がもてはやされていた。


 そうか……

 これはそろそろ本気出さんといかんかな……




 準決勝が始まった。


 1回の表。

 先頭打者の俺に対して、比嘉のピッチャーは勝負して来た。

 なるほど、俺に多少打たれたとしても、味方が打ち返してくれるっていうことなんだろう。

 だから塁上にランナーがいない初回の1番打者なら、却って問題が無いっていうことでもあるんだろうな。

 うん。けっこうマトモなやつらかもしらん。


 だが……

 俺の打球はラッキーゾーンを超えて、ライナーでレフトスタンドに飛び込んだ。

 まあこんなもんだろう。


 そして後続は3人で攻撃終了。

 さて、大会ナンバーワン打線とやらの実力を見せてもらおうじゃないの。



 1回の裏の先頭打者は、セーフティーバントを試みるも、30センチ落ちるジャイロに空振り。

 というか、初見のジャイロの伸びに全くタイミングが合わず、バットを出した時には既に球はストライクゾーンを通過中。

 2球目も50センチ落ちるフォークにセーフティーバント空振り。

 あ、ちょっと涙目……

 3球目、50センチ落ちのジャイロで空振り三振。


 まあ、同じような球筋だけど、速度変化は完全に別物だからな。

 減速する球の次は増速してるように見えるコンビネーションは、ヘタクソの偶然スイング以外ではちょっと打てないだろう。

 つまり、甲子園出場級の目のいい打者では却って打てないっていうことだ。



 2番も50センチ落ちるフォークにセーフティバントを試みたが、バットにかすっただけでファウル。

 ほー、ファウルとはいえバットに当てやがったよこいつ。

 それじゃあ投げ出し同じ軌道で50センチ落ちジャイロはどうかな?


 初速と落差は同じだが、終速が全く違う球にとまどってまたもバント空振り。

 3球目は打ちに来たけど、カットボールで敢え無く三振。



 さて、3番か……

 ドラフト候補の力を見せてもらおうか……


 初球。

 投げ出しは左打者の内角高めだが、30センチ落ちて30センチ左に曲がり、加速した様に見えながら外角低めに落ちるジャイロ。

 バッターは見逃したが、目が丸くなった。


 2球目は内角ベルト付近に来る直球に見えて、打者手前で20センチ落ちるカットボール。

 バッターは強振したが空振り。

 目がさらに見開かれていたよ。


 3球目はど真ん中から右下に沈むシンカー。

 21世紀のメジャーリーグではクローザーがよく使ってる球だ。

 一見絶好球に見えるもんでまた強振したけど、やっぱり空振りで三振。


 よしよし、強力打線の初回を三者三振で終わらせられたわ。



 相手監督は打者全員から聞き取りをしているようだ。

 まあ高校生には初見の球が多いだろうからな。

 球種の名前もまだ知らないんで分析も難しいだろう。



 2回の表、わが校の攻撃は三者凡退。

 それなりにバットには当たるものの、相手の好守にも阻まれた。

 うーん、このチームけっこう守備もいいぞ。

 さすがは準決勝進出校だわ。



 2回の裏、先頭バッターはドラフト複数指名候補の新大久保。

 どれ、まずは50センチ落ちのフォークで様子を見るか。


 おほっ! こいつバットに当てやがったよ!

 まあボールの上を叩いて後ろに飛ぶファウルになったけど……

 やるじゃねぇか!


 よし! かすった褒美に落差1.1メートルフォークを見せてやろう!


 はは、投げ出しが高かったんで見逃したけど、判定はストライク。

 うんうん、主審も合格。


 あ、こいつも目が真ん丸。

 でもすぐに切り替えて鋭い視線に変わったよ。

 なんかさ、やっぱいいバッターだよな……

 なんか俺の球とこいつのバットで会話してるような気がして来たよ。


 それじゃあ内角ベルト付近のカットボールなんかどうだ?

 ボールをよく見れば見るほど打てない球だぞ。

 はは、やっぱり空振りか。

 これで1アウト。


 でもこいつなら、2打席目からはまたバットにかすらせるかもしらんな。

 運が良ければ前に飛ぶかもしらん。

 後でジャイロやカーブもご馳走してやるよ。



 相手の5番6番も無難に打ち取れた。

 やっぱ高校生だとカットボールは打てないよなー。



 3回の表のわが校の攻撃は、8番目黒がショートゴロ。

 9番上野はいい当たりを打ったんだけど、センターライナーに終わった。

 うんうん、みんなバットに当てられるようになってるじゃないか。

 あと10試合ぐらいしたら、打率も2割台に上がって来るかもだな。


 さて俺の打席か……

 1球目は…… 外角に低めに外れるボール。

 うん、やっぱり四球覚悟のギリギリを突く投球か……

 でもまだ俺のバットの長さには気づいてないみたいだな。


 この時代ってまだネットとか無いし、情報は新聞とテレビだけだからなあ。

 特に比較対象になる普通のバットが近くに無いと、長身の俺が長いバット持ってても気づきにくいのかもしらん。


 お、外角に外れるベルト高のボール……

 いただきますっ♪


 ガキィ――――ン!


 おほー、これもレフトスタンドか。

 でもってちょっとだけボールの下叩いたから、スタンド上段まで行ったな。

 よしよし、これでランナーさえ出さなかったら、あの3番4番に出合頭で一発喰らってもなんとかなりそうだわ。



 ん?

 俺は別にノーヒットノーランとかに拘ってるわけじゃないんだぞ?

 そんなもん結果的に達成するもんで、狙って出来るもんじゃないからな。

 出合頭のホームランなんてよくあることだろ。

 あのイ〇ローなんか、前進守備の間を抜けるプッシュバントしようとして、バットの芯に当ててホームランになっちゃって、ニガ笑いしてたじゃない。

 打てるときってそんなもんなんだよ。


 俺が三振に拘るのは、チームメイトにエラーをさせたくないからなんだ。

 だって、そいつのエラーのせいで負けたとかになったら可哀そうじゃないか。

 せっかく俺にマトモに野球出来るようにしてくれた奴らなんだから、それぐらい配慮してやってもいいんじゃね?


 なにしろ去年までは、あの馬鹿コーチのせいで水も飲めなくって、なんの効果も無い根性練習しかしてなかった連中なんだからさ。

 まだエラーが多いのは当然なんだよ。


 でも……

 甲子園ベスト4まで来られたんだから、これで変れるかもしれないな。

 効率的な練習の効果を知って、フツーに練習してたら、来年はもっと守備も上手くなってるだろう。

 だから今は俺が三振奪取頑張って、あいつらにいい思いさせてやりたいんだ。

 俺たちの頑張りから旨い汁を吸おうとするクズも多いけど、先生方やあの八王子会長さんみたいに、俺たちの活躍を本心から喜んでくれるひとも大勢いるし。



 さて後続は凡退してチェンジか。


 3回の裏の相手の攻撃も三者三振。

 どうやら俺の球を見極めることに専念したようで、見逃しが多くなったな。

 その分、相手ベンチ内での会話が増えて来た。

 どうも情報を共有して、俺の変化球を種類別に分けようとしているようだ。


 監督はそれを黙って聞いている。

 うーん、この監督もけっこうマトモだわ。

 野球にはかなり詳しいみたいだけど、生徒の自主性に任せようっていうことか……




「ということは、あの投手は普通のストレートを一切投げていないっていうことだな」


「そうだな、『ブレーキがかかりながら大きく落ちる球』、『落ち幅はさほどではないけど、伸びながら落ちてくる球』、『打者のすぐ手前から鋭く小さく落ちる球』があるようだ」


「あれ、カーブなのかな?」


「いや、減速しながら大きく落ちる球は、たぶんフォークっていう球種だろう。

 初めて見るけど」


「そういやあ、俺の時は『打者手前から小さく落ちながら左に曲がる球』っていうのもあったぞ」



 4番の新大久保が発言した。


「そうか、幸いにして左右の変化はあまりないんだな。

 打ちにくいことに変わりはないが、あの大きく落ちる球にはなんとかタイミングを合わせられるように頑張ろう。

 あと、一見ストレートに見える球は、打者直前で20センチほど落ちるようだから、ノックでフライを打ち上げるつもりでボールの下を狙ってみるか」


「「「 おう! 」」」



 おー、なんて的確な分析……

 大したもんだわ。

 これは変化をもう少し大きくした方がいいかな?



 4回の表。

 3番から始まるウチの攻撃も、それなりにバットには当たるものの、フライになったり内野守備の正面を突いたりして三者凡退。

 うん、バッティングもけっこうサマになって来てるじゃないか。

 相手が甲子園級の投手じゃなかったら、そのうちみんなだけでも点取れるようになりそうだよ。



 4回裏の比嘉高校の攻撃。


 お、1番はまたセーフティーバントか。

 でも80センチ落ちるフォークに空振り。

 ただ…… 今のバント、けっこうバットがボールに近かったぞ……


 それじゃあ50センチ落ちのジャイロで……

 あ! またバントの構えではあるけど、バットにかすらせやんの!

 うーん、それじゃあカットボールはどうかな?

 強振して空振り三振したけど、これもけっこうボールに近かったわ。

 ボールの10センチ下を狙った感じだな。


 2番にもファウル打たれちまったよ。

 カットとシンカーに当てられて2発も……


 仕方ねぇ、外角高めから内角低めに30センチ落ちて30センチ曲がるジャイロで行くか。

 ふう、三振だな。


 次は3番か……

 こいつにも同じジャイロで……

 あー、ちょっとタイミングずれてるけど、バットとボールがそんなに離れてなかった空振りだわー。

 もー自信無くしちゃうよぉ。


 あっ!

 2球目のカットボールにもバット当てやがんの!

 もちろんファウルチップだけど……

 まあいいや、ツーアウトだし前に飛んでもいいことにしよう。

 あーやっぱり50センチ落ちフォークを打たれたか……

 でもボテボテのショートゴロだけど。

 最近守備が安定して来た五反田が無難に捌いてアウト。



「よし、みんなあの投手の球に少しはバットが当たるようにはなってきたな。

 その調子だ」


「相変わらず横の変化はほとんど無いようだから、ストレートに見える球はもう少し下を狙って行くぞ」


「「「 おうっ! 」」」




 ベンチで上野が近寄って来た。


「神田センパイ、ひょっとしてファウル打たれたりボールが前に飛んだりしたんで、ちょっと落ち込んでません?」


「おお上野、そーなんだよ。俺もまだまだだなぁ……」


(甲子園の準決勝で、ファウルとショートゴロ打たれただけ落ち込んでるよこのひと……

 うん、これも「神田語録」に追加だな♪)



 こんなときでも趣味全開の上野くんであった……










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