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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第2章 高校野球篇
33/157

*** 33 東東京地区予選準決勝2 ***


昨晩KOMAさんから初レビュー頂戴いたしました。

KOMAさん暖かい励ましの文章をどうもありがとうございました!






 東東京地区予選準決勝、1回の裏の相手2番打者に対しての配球は、初球ジャイロ、2球目シンカー、最後にフォーシームカット。


 3番打者には初球カットで、後はフォークとジャイロ。


 もちろん全てストライクゾーンを通る球。

 つまり余計な遊び玉は一切なし。

 まあ俺の肩の温存策でもある。

 この試合に勝てても中1日で決勝戦だからなあ。

 ところでなんで高校生相手にこんな過酷な日程組むんだ?

 高校生のうちにこんな選手寿命縮めるようなことして、高野連合になんかメリットあるんか?

 それともまさか、敵対するプロ野球に選手が行く前にぶっ壊してやろうとしてるんじゃないよな……




 バッターたちには、第1打席は球をよく見ることに専念しろっていう指示も出てたらしくて、全員見送りの三振だった。

 うーん、よく見て打てるんだったらラクチンだけど、そしたらカットボールとシンカーだけの配球にしちゃうぞー。

 見れば見るほど打てないぞー。



 2回の表、俺たちの攻撃。

 先頭打者目黒の打球はいい当たりだったがセンター正面へのライナー。

 あー、惜しかったねー。


 8番上野は初球の内角ストレートを引っ張ってレフト前へ。

 いやー、こいつ成長したわ。

 入学したころだったら、今の当たりもボテボテのゴロだったろう。

 筋トレの成果が出て来たかな?

 それに毎日俺の球受けてたせいで、動体視力も良くなって来たのかね?



 さて、俺の打席か。

 果たしてマトモに勝負してくれるのかな?

 お、敬遠じゃないぞ!

 まあ、さすがに第1打席から敬遠じゃあ、準決勝進出校のプライドが許さないのか……

 しかも1塁にランナーがいるし。

 でも外角低めに外れる明らかなボール。

 俺は泰然自若として動かず。


 2球目も外角高めに外れるボール。

 お、敵さんの監督が頷いてるわ。

 そうか、やっぱりキャッチャーは座ったままでも、ギリギリのボールを投げての四球狙いかぁ。


 でも…… 

 今日の俺のは太くて長くてしかも黒いんだぜ。

 い、いやもちろん持ってるバットの話だけど……

 でもって最近は、1年生のピッチャーたちにわざとボール球を投げさせて打撃練習してたんだ。

 特に外角に外れる球を多めに。


 まあ、将来メジャーに行ったときの練習っていうところかな。

 あっちのストライクゾーンは外角にめちゃめちゃ広いから。

 デッドボールになる可能性の高い内角で勝負するんじゃあなくって、外角で勝負しなさいね♪っていうことなんだろう。

 その方が選手のケガも減るから。

 あ、ケガ防止じゃあなくって乱闘防止か……


 っていうことで、次の外角の甘いボール球は振らせてもらいますね♪

 よいしょっと……


 グワキィーーーーーン!


 あー、よく飛んでってるわー。

 うわっ! やべっ!

 バックスクリーンにブチ当たって時計壊しちまったよ!

 あーあ、長い針がひん曲がってら。


 あっ!

 こ、これまさか弁償とか言われないよな……

 そんなことになったら、マネージャーの渋谷がまたツノ生やすぞ。

 オマケでキバも生やして……


 仕方ない、そのときは箱持って観客席回って寄付金集めよう……

 今もものすごい大歓声が起きてるからけっこう集まるだろ。



 その後の俺は案の定全打席敬遠よ。

 まあ打たなくっていいからラクチンだったけど。

 でも盗塁したら驚かれてたわ。

 まさか大黒柱のエースが盗塁するとは思わなかったんだろ。

 相手の動揺を突いて三盗まで決めたけど。

 100メートル10秒50の豪脚は伊達じゃあないぜ!

 反射神経も常人の100倍ぐらいあるし。

 おかげで犠牲フライで追加点も入ったし。



 ん?

 ケガでもしたらどうするんだって?

 そんなもん『治癒キュア』の魔法があるでしょ?

 捻挫だろうが骨折だろうが足が千切れようが、0.1秒後には治ってるぞ。


 んん?

 だったら別に肩を温存する必要は無いだろって?

 い、いや出来れば魔法はなるべく使いたくないじゃん。

 トレーニングとか治療とかでは使っても実戦で使うのはどうもね。

 ま、まあ、殺し合いとかの実戦では使うけど……



 ということで、試合は4-0で我が日比山高校の勝ち。

 終わってみれば俺は奪三振24でまたもやノーヒットノーラン達成。

 エラーでランナーは出したものの、送りバントも全部三振させて2塁は踏ませず。

 まあ完全勝利だね♪



 試合後の挨拶が終わった後に相手のキャプテンが俺に握手を求めて来たんだけどさ。

 野球帽を脱いだ俺の頭見て硬直してたよ。


「そ、そそそ、その髪型は……」


「あ、これですか?

 これ『ソフトモヒカン』っていう髪型です。

 たぶん20年後にはけっこう流行ってると思います♪」


 まあ相手は五厘刈りだからなあ……


「そ、そうか……

 それにしても、ものすごい変化球だったね。

 次の試合もぜひ勝って、甲子園でも活躍してくれ」


 こいつもけっこういいやつだったか……



 それにしてもなんで高校野球ってみんなボウズにするんだろうな?

 仏教系の坊さん養成校とかならわかるけど。

 やっぱり旧日本軍の名残なのか?

 戦国武将だって別にボウズにはしてなかったぞ?

 戦うヤツはボウズ、っていうのはごく最近のことだよな。

 戦争中の今のジジイ世代だけの話だろ。

 単なるジジイたちの郷愁か?



 まあ、ウチのチームは完全に髪型自由にしてるからなあ。

 さすがにこの時代だから染めてるやつまではいないけど。


 レフトの新橋なんか、前髪は流石に邪魔だから切ってるけど、頭のてっぺんから後ろ髪はかなり伸ばしてるんだわ。

 それをゴム紐でまとめてるもんだから「後ろチョンマゲ」とか言われてるんだ。

 それでこないだのミニ合宿で、ヤツが寝てるときこっそりほどいて、代わりに「ツインテ」にしてやったんだ。

 もちろん可愛らしい赤いリボンでな。

 もーみんな朝っぱらから大爆笑でたいへんだったわー。


 でも新橋が真顔で言うんだ。


「これは髪型が高校球児には相応しくないっていう、キャプテンとしての警告なのか?」


「いや違う」


「じゃあ何故こんなことを……」


「単に面白かったからだ」




 そしたら新橋のヤツ、その日一日ツインテで練習しやがったんだ。

 赤いリボンもつけたまま。

 買出しに行ってたマネージャーの渋谷涼子が帰って来た時、立ち竦んで買い物袋落としてドン引きしてたわー。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 東東京地区大会決勝戦を翌日に控えた軽い全体練習の日。


 マネージャーの渋谷涼子がでっかいカメラ持ってたんだ。


「なんだそれ?」


「今日は神田くんの投球してる姿を撮らせてね」


(なんだこいつ、俺の写真が欲しいのか?)


「あのね、『神田くんおっかけ女子たち』が欲しがってるの。

 それで、1枚につき野球部への寄付300円って言ったら、100人ぐらいが買うって言うのよ。

 これでまた氷代が浮くわ♪」


(さ、さすがは渋谷涼子……)




 それからしばらくして、グラウンドにまたあのアフォ~がやってきたんだ。


「おい! 全員集合だっ!」


「よっしゃー、セカンドナイスプレーっ!

 ファーストもよくワンバンを捌いたな!」


「全員集合だと言ってるのが聞こえんのかっ!」


「それじゃあみんな守備練習を続けてくれぇ~」


 俺は気だるげに元コーチの鶯谷センパイのところに歩いて行った。


「なんスか、大センパイ?

 今守備練習で忙しいんスけど」


「だから全員集合しろと言ってるだろっ!」


「だから守備練習で忙しいって言ってるでしょ♪」


「お前じゃ話にならんっ!

 キャプテンを呼んで来いっ!」


「あれ?

 知らなかったんスか?

 今は俺がキャプテンっスよ?」


「な、なんだとっ!

 す、すぐにキャプテンを代われっ!」


「嫌っス。

 ところで元コーチサマが一体何の御用件で」


「俺がまたコーチをしてやろうとわざわざ来てやったんだっ!」


「えーっ!

 それってタダで甲子園行けるかもしれないからですかぁ?

 大センパイもけっこう貧相なこと考えますねぇ♪」


「な、なんだとこの野郎っ!

 お前たちが決勝まで上がれたのは、このオレが鍛えてやったからだろうにっ!

 その恩を忘れたのかっ!」


「いーえ違いますね。

 大センパイがコーチやってた1年間ちょっとで、公式戦での勝利数ってたったの1つですよね。

 それもおんなじ進学校の都立相手に。

 でも俺がキャプテンになって、みんなで考えながら練習始めた途端に東東京大会決勝戦進出ですわ。

 これって大センパイのコーチとしての無能さを証明してません?」


「な、なんだとぉっ!」


「センパイはね。

 単に自分より年下の者が自分に従うのが嬉しくて仕方ないだけなんスよ。

 他に何の取り柄もないんで、年下に命令することでしかアイデンティティが保てないんです。

 きっと小学生のときも、同級生とは遊べずに近所の幼稚園児集めて威張り散らしていたんでしょう。

 でもその幼稚園児が小学生になると相手にして貰えなくなったんですよね。

 大学の野球サークルでも後輩に威張り散らして相手にされなくなったんですよね。

 ついでにそれで逆上して後輩殴ってケガさせて、慰謝料払って示談にしたけどサークルに居られなくなって……

 だから高校生相手にコーチやって威張り散らしてたんでしょ」


「な、なんだと……」


「でも今期待の『都立の星』のコーチになれたら、みんなを見返してやれるって、鼻の穴膨らませながら来たんでしょ?」


「な、ななななな……」


「あ、鼻毛が出てる……」


「手前ぇ、コノヤロウっ!」


 あー、とうとう殴り掛かって来たよこの馬鹿。


 でもそんなことしたら、以前かけてた神保さんのマーカー魔法が……

 ああっ! やっぱり発動したっ!

 コイツしょんべん漏らし始めたぁっ!

 あーあ、みっともねぇなぁ……


「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」


 馬鹿のズボンにみるみる染みが広がって行く。

 それを見て茫然としている馬鹿。


「おい大センパイよ、いや大しょんべんタレよ。

 いいかげんしっぽ巻いて帰らないと、しょんべん漏らしたの言いふらすぞぉ。

 おーい渋谷マネージャー。

 カメラ持って来てくれぃ」


「もー望遠レンズで撮りまくってるよー」


(さ、さすが渋谷涼子……)


「お、おおお、覚えてろよコノヤロウっ!」


「あー、馬鹿のしょんべん漏らしなんか覚えてるのヤだねぇ♪」




 神保さん情報によると、馬鹿はそのあと運河沿いでズボン脱いで乾かしているところを天使たちに通報されて、警察署に連行されたそうだ……

 両親が泣きながら身柄引受ガラウケに行ったらしいぞ。




「さてみんな。

 後はアイシングして入念にストレッチして練習終わるぞー。

 明日の決勝戦は12:00からだから、今晩は勉強で多少寝るのが遅くなっても大丈夫だぞ~」


「「「「「 お、おお…… 」」」」」


((((( な、なんという気合の入らない掛け声だ…… )))))










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