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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第1章 転生~中学生篇
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*** 3 将来の野球に向けての幼児期 ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……





 さて、それじゃあ遺伝形質の改変も終わったし、他の準備を始めるか。

 まずは脂肪細胞の数だな。

 脂肪細胞の数ってだいたい3歳児の時に決定されるから。

 だからこの時期にデブだったヤツって、将来どんなに運動してもダイエットしても、痩せるのは難しいんだよ。

 まあ脂肪細胞自体の大きさは小さく出来るから、相当に頑張ればなんとか痩せられるけど。


 でも、この時代って乳幼児期の死亡率が高かったころのやつが親になってるからさ。

 乳幼児が病気になったときに最後に生死を分けたのは体力、つまり体に蓄えた栄養分だった時代が長かったんだ。

 でもこの時代は豊かになってきて、食べ物もけっこうあったろ。

 だから、乳幼児にヤタラにメシ喰わせてたんだわ。

 まあ、「痩せてる子はウチが貧乏みたいでカッコ悪い!」っていう見栄もあったんだろうけど。

 だから結果として3歳時点での肥満がヤタラに増加してたんだ。

 そうして、これこそが20年後30年後に成人病の大流行をもたらしたんだよ。


 2019年の今でも、この弊害は結構残ってるんだ。

 例えば母親が乳児を保健所の定期健診に連れて行くと、「この子は肥満していますので、母乳や離乳食を少しずつ減らしていってください」とかの指導をされることがあるんだ。

 でも、そうしようとすると、ジジババがとんでもないって言って激怒するんだ。

 ついでに、「俺たちはお前やお前の旦那を育てて来たベテランで成功者だ!」「だから子育ては俺たちの言うとおりにしろっ!」とも言うんだよ。


 でもな、例えば俺の親が生まれた1933年には、乳児死亡率が13%もあったんだぜ。

 つまり生まれた新生児100人のうち13人は1歳の誕生日を迎える前に死んじゃってたんだ。

 俺が生まれた1961年でも、新生児死亡率は2.8%もあったしな。

 100人の新生児のうち2.8人はやっぱり1歳になる前に死んでたんだ。

 その点、2019年は0.21%、つまり100人のうち0.2人しか死なないんだよ。

 医学の進歩ってすげぇわ。


 だからジジババに聞いてみろよ。

 あんたらが小学生だったとき、同級生のうちかなりのヤツが「弟が生まれたけど死んじゃった」「お兄ちゃんがいたらしいんだけど、生まれてすぐに死んじゃってたみたい」って言ってたはずだから。

 つまり、母親やその旦那が無事に育ったのは、偶然かラッキーだったっていうことだ。

 まったく、無知に基づくアホな経験則って百害あって一利無しだわ。


 まあ、今の保健所で、「そういうアホなジジババが、母親に隠れて乳幼児にメシやらお菓子やら喰わせてて肥満させてて困っている」って相談するとさ。

「それではそのジジババを定期健診の時に一緒に連れて来て下さいね♪」って言うらしいんだ。

 そうして小児肥満の害をたっぷりと見せつけて脅してくれるんだよ。


 でもまあ、ジジババって基本頭悪いだろ、そのくせヤタラに尊敬してもらいたがるし。

 だから、「あの看護師はナマイキだっ!」とか言い出して、余計に言うこと聞かなくなるから気を付けた方がいいけどな。



 話はさらに脱線するんだけど、今の2019年の日本って不思議だって思ったことないか?


「なんでジジババってこんなに頭悪くってモノを知らないんだろうか?」って。

 キミタチ、実際に自分より賢いジジババって見たことないだろうし。

 それから、「どうしてウチの親は『勉強していい大学に入っていい会社に入って成り上がれっ!』っていつも言ってるんだろう?」って思ったことないかい?


 これさ、実は日本だけの特徴なんだ。


 今の老人世代は『後進国』で生まれ育った世代だ。

 そしてキミたちの親は『発展途上国』で生まれ育った世代だ。

 そしてもちろんキミたちは『先進国』で生まれ育ったんだ。


 だから今の日本って「東南アジアや中南米の田舎で育った何も知らないジジババと、日本の西隣やそのまた西隣の国で育った成り上がりたくてギラギラした親と、欧米で育った知的で十分な教育を受けた子供や青年」が同居してる国なんだよ。

 そうして、こんな国は世界中探しても他に例が無いんだわ。


 アメリカや欧州主要国は昔から先進国だから、ジジババも親も子供もみんな先進国生まれだし。

 イギリスとか行くと、一家の中で一番頭良くって高学歴なのはばあちゃん、とかいうことが良くあるからなあ。

 最終学歴は大学院で、専攻はシェイクスピアで元大学の講師だったばあちゃんとか……

 日本じゃ有り得ないだろ。


 だからキミタチは、ときどきジジババやおっさん世代がワケワカンネェこと言い出すのにびっくりするんだ。


 でも安心してくれ。

 あと20年で後進国生まれのジジババは死に絶える。

 でもって発展途上国生まれのおっさんおばはんはみんな引退だ。

 そのころには先進国生まれの天下だからな。

 あと20年の辛抱だぜ!



 でもさ、俺が今いる日本は1960年代だろ。

 つまり、ジジババも親も後進国で生まれて育った世代だ。

 同級生はみんな発展途上国のケダモノみたいなガキだ。

 でも今の俺が勉強した知識常識は、ほとんど2000年から2021年にかけてのものなんだよ。

 つまり意識は先進国の子だ。

 だからきっと、これからもさまざまな困難があるんだろうなぁ……




 さて、というわけで、俺は3歳児でも出来ることを始めた。

 まずは糖分や油分を控えて、脂肪細胞が増えないようにしないとな。


 次にするべきことは左手の鍛錬か。

 俺は生来右利きだけど、将来はスイッチヒッターとかになりたいから。

 だから改めて日本語を勉強しなおす際に、左手でも字を書くとしようか。

 で、いつも神保さんを頼るのもなんだから、一応自宅で3歳児っぽく言ってみたんだ。


「おかあさん、じをかくれんしゅうをしたいから、のーととえんぴつかって」って……

 そしたらさ、

「どうせ落書きして終わりでしょ! 無駄遣いしちゃいけませんっ!」

 って言うんだぜー。

 それでもねだったら、翌日新聞のチラシ広告で裏が白紙になったやつとチビた鉛筆渡されたよ。

 でもまあ、とりあえずこれで練習するかって、新聞見ながら字ぃ書いてたらさ、さすがに幼児の手だから小さい字が書けなくって、すぐに紙がいっぱいになっちゃったんだ。


「おかあさん、もっとかみちょうだい」


「この子はなんてもったいないことするんだろうね! もう紙なんか無いよっ!」って怒鳴られちまったぜ。


 それで、「それじゃあじぶんでかってくるから、おしょうがつにもらったおとしだま、かえして」って言ってみたんだわ。

 神保さんがけっこうなお年玉くれてたから。


 そしたら今度は、「だから無駄遣いしちゃ駄目って言ってんだろ! そんなにカネ使ってたら碌な大人になれないよっ!」って言うんだわー。


 そうですかー、アナタを見習ってごリッパな大人になりなさいって言うんですかー。

 サイフの中に1000円以上入ってると、すぐにデパート行って使っちまう買い物依存症の大人になれって言うんですかー。


 そう、このアホ親は、俺がもらったお年玉を「お母さんが預かっておいてあげる♪」って言って巻き上げて、そのまま使い込んじゃってるんだ。

 親父と折半して、親父は競馬とパチンコでスっちゃってて、お袋はデパートで服買ってて、もう預かってたとかいうカネは全然残ってないらしい。


 でもこれ、どうやらウチの親だけじゃないらしいんだ。

 俺の前々世で小学生だったとき、冬休み明けの小学生の話題って、まず「お年玉いくらもらったか」だったんだけどな。

 まあ親戚とかが近くに住んでると、結構な額を貰って自慢してたやつもいたわけだ。


 でもな、「そのお年玉はどこにしまってあるの?」って聞くと、全員が「おかあさんに預けてある」って答えるんだ。

 俺は着服されてるって気づいてたから、「自分で貯金箱にしまっておく」って言ったら、親父とお袋が激怒したよ。

 それでも言い張ってたら親父に殴られて、無理やりむしり取られたよ。


 だったら最初から子供にお年玉なんか渡すなよな!

 渡しておいて子供を喜ばせてから取り上げるなんて鬼畜の仕業だぞ!

 しかも子供が親戚からもらったもんまで取り上げるとは、それ単なる強奪だろうに!

 さらに「預かっておいてあげる♪」とか、それ詐欺の手口だろうに!



 でもさ、これが昭和30年代から40年代にかけての常識だったんだ。

 な、当時の日本ってひでぇ国だろ。

 まさに発展途上国で、「カネふんだくれるんだったらなんでもするっ!」っていう考え方が当たり前だったんだ。

 今のどっかの人口だけ大国とそっくりだよ。



 因みに2010年の日本の殺人事件被害者数は383人だけど、俺の生まれた1961年は1595人だ。

 つまり当時は最近の4倍以上人が殺されていた時代だったってぇことだ。

 な、とんでもねぇ時代だろ。


 よく、「最近、若い者の凶悪な犯罪がずいぶんと増えておるのう。昔はよかったのに。きっと教育が悪いせいじゃな」とかホザいてるジジイがいるけどさ。

 それ、アホウかボケのどっちかでしかないわ。



 そういえば、神界で2021年までの時代を調べてるときに、目についたエッセイがあったんだ。

 あれ確か2000年ごろのエッセイだったな。

 著者が10歳の息子に「今度の誕生日のプレゼントは何がいい?」って聞いたそうなんだけど、息子が「うーん、今欲しいもの無いからいらない」って答えたんで衝撃を受けたっていうんだ。

 それで、「俺が子供の頃だったら、『それいくらまでいいの?』とか『現金でちょうだい』とか言ってただろうに……」って、まあ遠回しに息子自慢してたんだけど。


 それ違うんだよ。

 それって、そいつが息子のもらったお年玉を騙して取り上げなかったから、息子がカネ持ってるからなんだ。

 つまり、カネを持たせたら、その息子は自分で貯金やカネの使い方を覚えたっていうことなんだ。

 な、ジジババが若いころ、カネがあればあるだけ使っちまったのとエライ違いだろ。

 これがまあ、後進国世代と先進国世代の違いなわけよ。



 そうそう、そういえばその次の正月のことなんだけど、両親は俺を連れて神保社長さんのところに恒例の年始の挨拶に行ったんだ。


「いやあよく来てくれたね。さあさあ上がってくれ。

 それじゃあ勇樹くん、まずはお年玉をあげよう。

 ほら、キミが欲しがっていた国語の辞書とノートとえんぴつだよ」


「じんぼのおじちゃんありがとう!」



 後で親父とお袋は激怒してたよ。


「他人様に物をねだったりするんじゃありませんっ!」とか言って。


「えー、だってじんぼのおじちゃんから、『ゆうきくんは、おとしだまもらったらなにが買いたいのかな』って聞かれたんで『のーととえんぴつと、それからこくごじてん!』っていったの。

 そしたらおじちゃんが、『買いに行くのはたいへんだから、おじちゃんが買っておいてあげようね♪』って言ってくれたんだよー」



 その晩、俺が寝てから夫婦の会話が聞こえて来たよ。


「どうしよう、こないだ買った掃除機の月賦が払えない……」

「俺の小遣いは?」

「そんなもんあるわけないでしょ!」

「神保社長が勇樹に現金でお年玉くれてたらなあ」

「あ、明日本屋に行って、あの辞書を返してお金貰って来ましょう!」

「おお、そうしよう!」


 あー、レシート無いと返品受け付けないの知らないんだなー。

 それにしても酷ぇ親だわー。


 因みに本屋に行ったけど返品受け付けて貰えなかったもんだから、アホ親たちはその国語辞典を質屋に持ち込みやがったんだよ。

 それで神保さんが1200円で買ってくれてた辞典を300円で売り飛ばしたんだけどな。


 それがウチの親を常時観察している神保さんにバレて1時間ぐらい説教されてたよ。

 自腹で500円払わされて質屋から買い取りさせられてたけど。




 脱線していた話を元に戻そう。


 俺はさらなる訓練として、関節の可動域を広げるストレッチを始めた。

 柔軟性は高い方がスポーツには有利なことが多いから。

 それからなるべく指を長くしようとして、ヒマなときにはいつも指をひっぱるようにもしていた。

 将来は長い指でフォークボールとか投げたかったから。


 それから神保さんに頼んで音感トレーニングもさせてもらったんだ。

 まあ、いわゆる絶対音感のためのトレーニングだな。

 それからやっぱり将来MLBで投げてみたかったから、英語のヒアリングも始めたんだ。


 で、これは俺の調査の結果なんだけど、英語を上手に喋ったり聞き取れたりするやつって、どうやら歌が上手いやつが多いようなんだ。

 つまり、耳で聞いた音をそのまま発音出来るやつだ。

 だから、音感トレーニングって、同時に英語のヒアリングやスピーキングにも効果的なんじゃないかな。

 もちろん神保さんんに英語のテープも買ってもらってよく聞いたりもしてたけど。


 まあ、普通3歳児に音感トレーニングだの英語のヒアリングだのやらせるのは難しいよ。

 でも俺の場合、将来の夢のために自分で望んでやってるから、その効果たるやびっくりするほどのものだったんだ。

 さすがは幼児のカラダだぜ♪



 そうそう、それからさ。

 21世紀の発達生理学によれば、あらゆる運動能力はその発達に最適な時期がだいたい決まってるそうなんだ。

 その中で俺の目を引いたのは、もちろん『ボール投げの能力』だった。


 そう、ボール投げの能力って、ほとんど5~7歳のときに身に付くそうだ。

 だから男兄弟のいない女の子の中には、中学生ぐらいになってもまったくボールを投げられない子がいるんだよ。

 もしくは投げても5メートルしか投げられない子とか。

 まあいわゆる『女の子投げ』っていうヘンな投げ方で。


 それで俺、神保さんに頼んで子供用のグラブとボール買ってもらって、天使見習いさんたちに毎日キャッチボールしてもらってたんだ。

 ほんとに毎日何時間もな。

 みんな喜んで相手をしてくれたんで助かったよ。

 なんか天使見習いさんたちにとっては、むちゃくちゃ名誉な仕事だったらしいけど……



 そうやって、俺は全て将来の野球に向けての幼児期を送ってたんだ。










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