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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第2章 高校野球篇
26/157

*** 26 苦労する俺2 ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……





 その後も回は進んで先頭打者は田町先輩。

 おお! 先輩が振り回したバットにボールが当たった!

 三遊間を抜けたよ!


 い、いやボールにバットが当たったんだよな。

 うん、そういうことにしておこう……


 さーて、2アウトランナー1塁で俺の打順ね。

 今日は多少気分がいいから満振りしちゃうよ♪


 ドグワキィーン!


 へへへへ、これもレフトスタンド上段か。

 やったね!



 その後も俺は相手打線を順調に抑えていったんだけどさ。

 やっぱり7回ぐらいから相手打線のセーフティーバント攻勢が始まったんだよ。

 それにしても、なんでみんな終盤にセーフティバントしたがるんだ?


 それでもまあ、7回は無事に抑えたんだ。

 でも、8回には2ストライクからの低めへ落ちるカットボールを上野が後逸して、振り逃げでランナー出しちゃったんだ。

 なんでだか知らないけど、相手ベンチは大騒ぎしてたぞ?


 まあその後はストレートに対して偶然バットに当たった球が、ボテボテと内野に転がって無難に抑えられたけど。

 ウチの内野も、今日は打席でバット振り回して動いてたおかげで緊張が解れててて、無難にアウトにしてたわ。



 でもベンチに帰ったら、暗い顔した上野が近づいて来たんだ。


「す、すいません神田さん」


「ん? なんだ?」


「あ、あの…… せっかくのパーフェクトゲーム壊しちゃって……」


「?」


「ぼ、僕がパスボールなんかするから振り逃げでランナー出しちゃって……

 そ、それでパーフェクトを逃しちゃって……」


「あら、パーフェクトだったの?」


「へ?」


「あーそうか!

 だから相手はせめてパーフェクトは逃れようとして、ウチのエラーを期待したセーフティーバントばっかり始めたのか!

 なるほどー」


「………………」


(このひと、これ僕を慰めるために言ってるんじゃないな……

 本気でパーフェクトなんか気にしてないんだな。

 それぐらいはいつでも普通に出来るって思ってるのか……

 よし、この発言を今日の野球日誌に書いておこう。

 いや、別に『神田先輩観察日記』も作ってそっちにまとめるか……)



 みょーな趣味に目覚めた上野くんであった……




 その後は9回も三者三振に抑えて無難に終わったよ。

 試合は俺が全打点を叩き出して、5-0で勝ちだ。

 今日はかなり楽だったな……




 迎えた第4回戦。

 まずは今日の球審の能力テストからだな。

 それにしても、なんで俺がこんなことしなきゃなんないんだ?


 まずはインローギリギリのストレートを……


「ストライーク!」


 うん、さすがにストレートならちゃんとジャッジ出来るか。

 それじゃあ次はチェンジアップをば……


「ボ、い、いやストライーク!」


 あははは、「ボール」って言いかけて、慌てて言い直したぜ。

 ボークだと思って「ボール」って言おうとしたのバレバレだよなー。


 それじゃあ次は真ん中から低めに落ちるカットボールで……


「ボール!」


 ありゃ、この球審、体を前に倒して上野のミット見てるよ。

 それで上野が弾いたからボールってコールしたのかな?

 それじゃあ高めから真ん中に落ちるカットボールはどうだ?


「ストライーク、バッターアウト!」


 うーん、また上野が前に弾いたけど、コールはストライクか。

 っていうことはこの審判、弾いたからボールって言ったんじゃなくって、単にミットの位置見てコールしてるだけか。


 でもなあ、高めから真ん中に落ちるカットボールって危険なんだよなぁ。

 高めの球を打とうとして、バッターは下から上にバット振ろうとするから、タイミングがズレると当たっちゃうんだよ。

 でもって高めだから長打になりやすいんだ。

 それじゃあ俺たちが2点取るまでカットボールは封印か……

 まったく毎回毎回なんちゅう縛りプレイやらされてんだよ俺は……



 そんじゃ次は試しにカーブ投げてみよう。

 そりゃ!


 あー、上野のミットの位置が外角低めだったのに、投げ出しが内角遥か高めだったもんだから、この球審、暴投から逃れようとして体を右に動かしてるよ。


「ス、ストライク?」


 だからなんで疑問形なんだよ!


 あ、そうか。

 体を右に寄せたから、球がストライクゾーンを横切るのが良く見えたのか。

 それじゃあもう一回カーブを……

 あ、もう上野のミットに合わせて体を右に寄せてやんの。

 それじゃあ、うりゃ!


「ス、ストライーク!」


 はは、ちょっと自信なさげだけど、コールは合ってるよ。

 それじゃあ今度はジャイロを試してみるか。

 まずは縦にまっすぐ落ちるジャイロで。


「ボ、ボール!」


 うーん、縦の変化はミット位置しか見ないんか。

 それじゃあ試しに落ちながら右に曲がるジャイロ投げてみよう。

 あ、また外角低めいっぱいの上野のミットの後ろに体動かしてる。

 それじゃあ、うりゃっ!


「ス、ストライク、バッターアウト!」


 なんでさっきの縦ジャイロがボールで、今の右ジャイロがストライクなんだ?

 落ち方は同じだぞ?

 それじゃあ次は左に曲がり落ちるジャイロで……


「ス、ストライク?」


 やっぱり……

 この球審、まっすぐ落ちる変化球はダメダメだけど、曲がりながら落ちる変化球だと何故かきちんとコール出来るんだ。

 なんでだ?


 まあいいか、それじゃあスライダーはどうかな?

 横の変化が大きいやつ。


「ス、ストライク……」


 なんか自信なさげのコールだけど、やっぱりストライクって言えるんだな。


 ということは、今日は横の変化で行くか。

 でもそうすると、2ストライクからのパスボールが怖いな。

 それじゃあ、1、2球目は変化球でカウントを取って、3球目は速いストレートで三振を狙おう。


 よし、じゃあストレートをインローぎりぎりに……


「ストライーク、バッタアウッ! チェンジッ!」


 それにしても今日の相手、見逃しばっかりでまだ一度もバット振ってないぞ。

 おかげで球審のテストが捗ったけど……


 あ、そうか。

 3試合で被安打1、ノーヒットノーラン2っていう俺の噂を聞いたのか。

 だから球種を見極めようとして見送りばっかりなんだろう。

 でもこれだけの球種投げたんだから、きっと混乱しているだろうなあ……



<あいてちーむはこんらんしている>



【球審】

(なんだよなんだよこの変化球っ! き、聞いてねぇよ!

 こんな初見ばっかしの変化球、どうジャッジすればいいんだよ!

 わけわかんねぇよ!)



<きゅうしんもこんらんしている>




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「さーてウチの攻撃だ。

 みんな打ち合わせ通り振って振って振りまくってくれ!」


「「「「「 おう! 」」」」」


「ボール球振っての空振り三振歓迎!

 ストライク球振っての空振り三振はもっと大歓迎!」


「「「「「 おう!!! 」」」」」


「ネクストサークルでも、スイングしまくれ!」


「「「「「 おぉぉ―――――っ! 」」」」」



 はは、振ってる振ってる。

 みんな全球振ってるんで、ちょっとピッチャービビってるよ。

 あ、まぐれでバットに当たった……

 おお! 内野の頭を越すポテンヒットだ!


 2アウトランナー1塁で俺の打席か。

 さすがに敬遠は無いと思うけど……

 あー、やっぱり外角のボール球かぁ。

 でも振っちゃうよん♪


 ガキ――――ン!


 ふははは!

 身長192センチの俺にとっては、ヒットゾーンは外角にボール1個分広いのだよ。

 しかも長年『動体視力強化』使ってたせいで、魔法使わなくっても人間離れした動体視力になっちまってるからな。

 もうちょっと頑張れば、飛んでるハエの羽ばたき回数数えられるぜ!


 はは、レフトスタンド一直線で、スタンド上部のネット直撃か。

 よし! 先制点ゲット!



 ベース1周を終えた俺はベンチに戻った。


「おい上野、2回からはランナーいないときは当分横の変化で勝負するぞ。

 決め球はストレートにするけど」


「はい!」


「そうすると、どうしても1、2球目はお前の捕球が難しくなるけどな。

 でも、いくら弾いても後逸しても構わんから耐えてくれ」


「はいっ!」


「試合終わったらまた俺がマッサージしてやるから、なんとか頑張ってくれ」


「はいっ!!!」



 いやー、こいつ素直だわー。

 素直でコーチである俺を信頼していて努力家で向上心も強い。

 こいつならもうすぐプラトー抜けられるな。

 きっと化けたように進化出来るだろう。


 ん?

 プラトーっていうのはな、「練習の平原」って言われてるもんなんだ。

 筋トレなんかの単純なもんと違って、技術的なトレーニングって、練習時間に比例して直線状に技術が伸びて行くんじゃないんだよ。

 例えば横軸に練習時間、縦軸に技術力を取ったグラフを描くとするだろ。

 そうすると、いくら練習しても技術が伸びないっていう平らな部分が出来るんだ。

 これがプラトーな。

 まあ、2019年のWik〇なんかには、わりと否定的なもんみたいに書いてあるけどさ。

 栄養不足のせいだのなんだの。

 でもこれWik〇が間違ってるんだ。

 プラトーっていうのは必ずあるものなんだ。

 でも努力をしているうちに、何かをきっかけにして飛躍的に伸びる時期も必ずあるんだよ。

 つまり、技術っていうのは階段状に進化して行くものなんだな。


 だからたぶん、上野ももうすぐ進化出来るかもだ。

 ま、まあ髪の毛金色になったりはしないだろうけど。

 それ校則違反で停学になっちまうぞ……



 さて、それじゃあ俺も努力するとしますかね。

 今日は横の変化球が使えるんでラクチンだけどなー♪


 そうして三振の山を築いてるうちに、俺の第2打席が回って来た。

 今度はランナー無しか。

 まあいいや、ボールをよく見て打つだけだ……


 ガキ――――ンッ!


 おほー、バックスクリーン直撃だー♪


 今日も絶好調だー♪



 ということで試合は3-0で我ら日比山高校の勝利で終わったんよ。

 あー、今日は25奪三振でパーフェクトゲームか。

 でも上野はパスボールこそなかったけど、ファンブルは35もあったんだよなぁ。

 これ今までの最多記録だわ。

 まあ、今日は横の変化球が多かったから仕方ないだろう。




 このころになるとさ。

 スポーツ新聞なんかにチラホラ俺のことが書かれるようになったんだ。

「高校野球東東京大会に怪獣出現!?」みたいな記事が。

 ま、まあ当時ウルトラ〇ンだのゴジ〇だのって怪獣ブームだったからなんだけど。


 最初はなんじゃこりゃって思ったけど、考えてみれば俺って4試合でパーフェクトゲーム1、ノーヒットノーラン2、被安打1で自責点0。

 ついでに奪三振94でホームラン9、打率は9割5分。

 ま、まあ怪獣って言われても仕方ないかな。


 今度マウンドで火でも吹いてみるか……


 い、いや実はほんとに吹けるんだよ。

 火魔法っていろんなところから出せるから。

 前世の魔法修業時代は、よく宴会芸でケツから火ぃ出してウケてたもんな……

「こんなん喰らって死ぬ魔物が気の毒すぎる……」とか言われてたし。




 宴会芸も多才な神田君であった……





 5回戦の相手はけっこうな強豪校だったんだけど、まあ1-0でなんとか勝てたよ。

 1点は2回の俺のホームランだったんだけど、その後は全打席敬遠されちゃったもんだから、思わずアタマに来てピッチングにリキ入って、またもやパーフェクト達成だぜ。

 球審も4回戦と同じように横の変化球だけにはマトモなコールしてたからな。


 俺以外のウチのチームの成績は、ヒット2、エラー0。

 まあ、奪三振25だからエラーする機会もほとんど無かったんだけど。

 上野のパスボールも0だったけど、前や横に弾くファンブルは30。


 ま、まあ少こーしずつだけど、マシにはなって来てるからいいんじゃね?


 それにしても、これでようやくベスト8まで漕ぎつけられたか……










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