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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第5章 メジャーリーガー篇
148/157

*** 148 敗因分析討論会2 ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織、用語に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……

また、リアルとは異なる記述があったとしても、それはフィクションだからです……

みなさま、リアルとフィクションを混同されないようにお気をつけ下さいませ。





司会者「それでは水道橋監督はどのようにすればよいとお考えですか?」


水道橋「最も参考になるのは、欧州などでのサッカー国別代表の選出方法です。

 まずはその国のサッカー協会が代表監督を選び、選出後には監督専用のスタッフをつけてサポートします。

 もちろん国代表のためのスポンサー探しも協会の重要な仕事になりますね。

 なにしろ国代表の監督ともなれば、年俸は最低でも5000万円、多ければ数億円になるそうですから」


評論家「えっ……」


水道橋「そしてこの代表監督の仕事の内、最も大事なものはまずは国代表の選考になります。

 それも一度だけではなく数年かけて何度も招集を繰り返し、代表合宿や他国との練習試合などを通じて選考を続けます。

 もちろん本番の大会に向けての戦略構成なども監督の仕事なのですが、なによりもまず代表を選ぶことから始めなければなりません」


評論家「で、ででで、でしたらわたしなどは日本の代表監督に最適ですよ。

 なにしろ私以上に日本でプレーして引退後も野球を見続けて来た者は他にいませんから……」


司会者(評論家を見ずに)

「その場合には自国国籍の選手などが代表候補の対象になるわけですね。

 ですが所属するチームが選手の供出に反対した場合はどうなるのでしょうか?」


水道橋「選手にとっては国代表と言えば大変な名誉になります。

 というよりも、若いころから国代表になってワールドカップでプレーすることを目標に努力して来た選手ばかりですから。

 ですから、例え海外のチームでプレーしていたとしても、『国代表に招集されたときには故障や優勝争いなどの重大な理由以外で招集を拒まない』という契約が為されていることが多いそうです。

 むしろ各チームとも、優秀な選手を集めたければ、そうした契約にしなければ誰も来てくれなくなりますからね。

 それに国内のチームが代表供出を拒むと大変な批判に晒されてファンも離れますし、選手も移籍希望を強く言うようになります」


評論家「そ、それでもちろん代表監督には専用車も付くんですよね……」


司会者(やはり評論家を見ずに)

「なるほど、そうして何年もかけて代表を選出していくわけですね」


評論家「出来ればベンツがいいですねぇ。あ、もちろん運転手付きで……」


水道橋「ええ、サッカーワールドカップと言えば世界最大のスポーツの祭典ですし、各国も血眼になって勝利を目指しますから。

 そうした努力を50年以上も続けた結果出来上がったシステムですから、参考にする価値は十分にあると思います。

 また、多くの国では代表監督を自国人ではなく、敢えて海外から招いているケースも多いようです」


評論家「いけません! 

 そんなガイジンなどに監督を任せたら、日本の野球の心が失われますっ!」


司会者(もはや完全に評論家を無視している)

「それは自国内リーグのチームなどからの干渉を避けるためですか」


水道橋「はい、その通りです。

 今回の日本代表の選考は、オーナー会に振り回された結果の最低最悪なものでしたから。

 ただ、今の状況で日本プロ野球機関に代表監督の選考を任せても、同じことが起きるでしょう」


本部長「……………」


評論家「あ、ベンツじゃなくてもアメ車も捨てがたいですね……

 たとえばキャデラックとか……」


司会者「それは何故ですか?」


水道橋「今の日本プロ野球機関の役職員はすべて各球団からの出向者で占められていまして、給料も間接的に所属球団から支払われていますので、出身球団の言いなりになる可能性が高いからです」


司会者「なるほど。

 本部長さん、その点は如何なんでしょうか?」


本部長「だ、だだだ、断じてそのようなことは無い!」


評論家「もちろん秘書もつきますよね。

 候補者は25歳までの独身女性を10人ほど用意して頂いて、わたくし自らが採用面接を行いましょう!」


(もはや誰も評論家を見ていない)


水道橋「ところでもう一つの敗因として、日本代表が諸外国のチームと練習試合を行っていなかったことも挙げられると思います。

 次回WBCに向けては代表候補たちにたびたび海外遠征をさせて、諸外国代表との練習試合を組むべきですね」


評論家「いや海外では選手も監督も寛げません。

 海外チームを招いて、そうですね、温泉地での試合なんかいいですね」


本部長「そ、そのような予算は……」


水道橋「もちろん本来であれば日本野球連盟が負担すべきです。

 ですが日本では何故かアマチュア野球連合と日本プロ野球機関(NPB)は犬猿の仲ですから、主にプロ野球機関の仕事になりますか。

 ですからNPBがスポンサー探しに動き回る必要があります」


本部長「…………」


水道橋「ところで何故今回のWBC前に、日本代表は外国チームとの練習試合を行わなかったのでしょうか」


本部長「そ、それはだな。

 慎重な選考に時間がかかったために、そのような機会が無かったためだ!」


水道橋「そうでしょうか。

 1月末に代表が発表されてからドミニカに行っていれば、各国代表との練習試合も出来たはずですが。

 なにしろドミニカには日本を除く参加15か国が集まって、毎日練習試合もしていましたから」


本部長「そのような米もみそ汁も畳も無い環境では選手が体調を崩してしまうからだ!」


評論家「そうだそうだ! 

 米もみそ汁も無ければ日本の心を持った野球なんか出来るわけが無いじゃないか!

 ところで代表監督には交際費もつくんですよね?

 レストランや飲み屋での打ち合わせの領収書とか……」



(アンジーが手を挙げた)


司会者「ワシントンさんどうぞ」


アンジー「ドミニカの宿舎には、神田選手の提案で日本代表用に畳の部屋も用意されていましたし、もちろんレストランでも日本食は出せるように十分に準備されていました。

 これは神田選手から大会本部を通じて日本プロ野球機関にも連絡が行っていたはずですが……」


本部長「うっ……」


アンジー「それでも日本選手団が来なかったので、神田くんはずいぶんとガッカリしていましたが」

 

司会者「本部長さん、それは本当ですか?」


本部長「そ、そのような外人が用意したものなど喰えるはずもないだろう!」


アンジー「食材を持参し料理人を連れて行けば問題は無かったのでは?」


本部長「そ、そのような無駄遣いは出来ん!

 それに第一文句を言おうにも言葉が通じないではないか!

 だいたいなぜアメ公共は日本語を喋らないのだ!

 テレビドラマや映画では日本語を喋れているではないか!」


アンジー「あの…… あれは日本語吹き替え版と言いまして、外国人俳優の口の動きに合わせて日本語を喋っているのは皆日本人なのですが……」


本部長「な、ななな、なんだと……」



司会者「通訳は同行しなかったんですか?」


本部長「たった4人しかおらんのでは、碌に通訳も出来ん!」


アンジー「あの、ならば何故通訳を選手団の人数分35人用意されなかったのでしょうか?」


本部長「!!!」 


アンジー「もしも本当に選手たちに対外試合の経験を積ませたければ十分に支出に値すると思いますが。

 それにドミニカでは1か月に渡ってMLB審判団のストライクゾーンの研修会も行われていて、各国代表団にも大好評でしたよ。

 あの研修にだけでも参加していれば、あのように世界中の笑い者になった不名誉な賞は免れたでしょうに……」


本部長「……ぐぅ……」


水道橋「それでよく国際試合などに出場する気になりましたね」


本部長「だ、だから次回WBCは日本での開催を主張するのだ!

 そ、そうすればあのようなインチキ審判も排除出来る!」


水道橋「あのですね、日本選手の審判へのクレーム数は実は日本国内でのリーグ戦でのクレーム数とほぼ変わらなかったのですよ。

 WBCでは他国の選手がほとんどクレームしなかったせいで、日本だけが目立ってしまいましたけど。

 それに負けているチームほどクレームが多いという特徴も同じでしたし」


本部長「!!!!!」


水道橋「もし日本でWBCを開催して日本人審判にジャッジを任せたとして、本当にクレームは無くなるんですか?」


本部長「……あぅ……」


水道橋「それに今回のWBCを支援するアメリカ国内のスポンサーの支援金や広告費は、合計で1000億円を超えたそうなのですが……」


本部長「げえぇぇぇっ!」


水道橋「NPB事務局やオーナー会は、それに匹敵する支援金や広告費を集められるのでしょうか?」


本部長「……あぅ……」



アンジー「ところで本部長さん、今回の日本代表の総予算はたった3600万円しか無かったというのは本当ですか?」


本部長「…………………………」


評論家「いけません!

 それっぽっちでは代表監督の高額年俸も払えないではないですか!」


アンジー「それでは宮崎合宿とアメリカでの滞在費、それから往復の航空機代を除けばほとんど残らないですね。

 なぜスポンサーを募らなかったのですか?」


本部長「そ、それは、間に合わなかっただけだ……」


アンジー「ドミニカでの練習試合では、キューバを除いて各国とも急遽ユニフォームにスポンサーの広告をつけていました。

 おかげで参加費用が大幅に黒字になって喜んだ国がほとんどでしたし」


本部長「……ぐぅぅぅ……」


水道橋「聞くところによれば、各球団のオーナーやとりわけオーナー会会長がスポンサーに頭を下げるのを嫌がったために、スポンサー募集もほとんど行われていなかったとのことですが」


本部長「く、くそぉぉぉぉぉぉ―――っ!

 あ、あのジジイ共、カネも出さずに口ばっか出しやがって!

 1球団たったの300万円しか出さずにいて何が出来るって言うんだ!

 しかも老頭児ロートル選手は文句ばっか言いやがって!

 俺たち裏方がどんだけ苦労したと思ってるんだぁぁぁ――――っ!」


アンジー「やはりそうだったんですか……」


水道橋「ふう、金も無い、金を集める気も無い、対外試合もしたことが無い、海外には行きたくない……

 それでは次回以降のWBCでも日本代表は勝てないでしょうねぇ……」


司会者「そ、それでは時間も迫って参りましたので……

 ワシントンさん、なにか即効性のある日本代表へのアドバイスはありませんでしょうか」


評論家「それはやはり不肖わたくしめが代表監督をすればですね……」


アンジー「そうですね。

 日本代表に年齢制限を導入しては如何でしょうか。

 まあまとめ役のベテランも必要でしょうから、35歳以上の選手は4人までとして、後の21人は35歳未満ということで。


 あのドミニカ戦では、5回から投げた若手投手たちがあの強力ドミニカ打線を4失点で抑えていましたからね。

 ベテランの先発と同じくベテランのリリーフが4回までで10点も失っていたのにです。

 それに若手は海外生活への順応性も高いですし、今回の大会も前年リーグ優勝したラクーンズとパンサーズの若手連合チームであれば、かなりいい成績を残せたのではないでしょうか」


司会者「それではみなさん、本日は活発な議論をどうもありがとうございました……」





 それでさ。

 司会者が最初に後で編集しますから自由に議論して下さいって言ってたろ。

 だからまあ、みんな自由に発言してたわけだ。


 でも……

 MHKが面白がって、この内容を無編集で放送しちまったんだわー。

 おかげで日本では更に大騒ぎになってたそうだ。



 因みにあの赤羽とかいう野球評論家がMHKを訴えたんだよ。

『名誉棄損だ!』とか言って。

 でも裁判所で『自分の発言が名誉棄損になるというのですか? それは誰が誰の名誉を棄損したというのでしょうか?』とか言われてショック受けてたそうだ……


 その後は吉〇興業にスカウトされてお笑い界で活躍したらしい。

 得意ネタは『私が日本代表監督になる!』だったそうだけど。

 でもとうとう最後まで、自分の意見を言うだけでなぜこんなにウケるのか理解出来なかったらしいな……










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