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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第5章 メジャーリーガー篇
141/157

*** 141 WBCアメリカ合衆国代表 *** 


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織、用語に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……

また、リアルとは異なる記述があったとしても、それはフィクションだからです……

みなさま、リアルとフィクションを混同されないようにお気をつけ下さいませ。



 


 オールスターゲームが終わるとすぐに『全米高校野球大会』が始まった。


 去年の夏から見切り発車で造り始めてた宿舎群もようやく間に合ったようだ。


 それでさ、なんと始球式には大統領さんが来てくれたんだよ。

 おかげで、オープニングレセプションも開会式も全米で放映されてたけど。



 そのレセプションの中で、レーガン大統領さんが短いスピーチをしたんだけどな。

 途中で突然俺と渋谷会長を呼んで、この大会の発端を説明し始めたんだよ。

 俺が合衆国の野球のためにこんな大会を開催したいって言ったら、渋谷会長の会社が4億ドルも寄付してくれて、その夢が実現したって。


 それで凄まじい量のフラッシュの光の中で、俺や渋谷会長と握手してくれたんだ。

 完全なサプライズだったんだけど、会長さんなんか涙目になってたぞ。 



 大統領さんは、開会式後の第1試合も地元カリフォルニアの第1代表が出てたんで観戦してくれてたよ。

 それにシークレットサービスさんたちも含めて、サクラメント・プロテクターの防具も装着してくれたわ。

 因みにギガンテスデザインじゃあなくって、急遽大統領紋章デザイン物を作ってプレゼントしたんだ。

 ついでに、大会本部を通じてホーム裏席の生涯フリーパスチケットも5席分ばかり渡しておいたけど。



 ひとつ誤算だったのは、球場の入場者数だったかな。


 朝8時からの第1試合を除いて、ほとんどいつもスタンドが満員になってるんだわ。

 ミリーフィールドの観客席は2万人しか収容出来ないこともあったんだけど。

 さらにサクラメントのホテルも満室だし、サンフランシスコやサンノゼからも毎日シャトルバスが大量の客を運んでたよ。


 仕方が無いんで、大会本部はベスト16以上の試合や強豪校同士の対戦は、なるべくキャンドルスティックパークを借りるようにしたようだ。

 ギガンテスがロードに出てるときや午前中だったら使えるからな。


 それで急遽新球場の設計も変更することになって、5万人収容のボールパークにするんだと。



 やっぱさ。

 アメリカでも高校野球の全国大会って、みんな見てみたかったんだなぁ……


 おかげで、渋谷物産の会長さんと社長さんも、また涙目になって喜んでたぞ。

 まさかここまで大成功するとは思っていなかったようだな……


 それにどうやら今後のスポンサー探しにも苦労しないで済みそうだ。




 1回戦では強豪校と野球人口の少ない州の高校の対戦が多かったもんで、『ギブアップ』による決着も多かったよ。

 でもアメリカでは『グッド・ルーザー』が讃えられるから、批判は全く無くて安心したわ。

 そうして2回戦ぐらいからは、相当に白熱したゲームが見られるようになったんだ。

 もちろん日程にはかなり余裕を持たせてある。

 最低でも中2日を置いて試合が組まれるようにしたし。



 もちろんテレビ視聴率もかなりのもんだったわ。

 州代表の試合が行われているときは、その州の経済活動が停止するとか言われるほどだ。

 ウチのチームの面々も、出身州とか出身校が出てるときは、昼の練習中でもそわそわしてたしな。

 ガイエルもニガ笑いしながらテレビを見に行くことを許可してたし。



 でもさ、試合の中継も大人気だったんだけど、それに匹敵する人気になったのが、その州の紹介コーナーだったんだよ。

 日本だと国土が狭いから、47都道府県のうち半分以上に行ったことがあるとかいう人もけっこういるけど、アメリカは広いからなぁ。

 東海岸に住む人以外は、半分どころか隣の州にも行ったことがないひとも相当数いるし。

 そのうちこのコーナーは、アメリカの国内旅行会社がスポンサーになって独立した番組になってたわ。



 でも、さらに視聴者の目を奪ったのは、高校生たちのカリフォルニア旅行だったんだ。


 ノースダコタだのサウスダコタだのカンザスだのミズーリだのの内陸州の高校生たちが、カリフォルニアの海を見て硬直してるんだ。

 その後大歓声を上げながら海に向かって走って行くんだけどな。

 そんな姿を見て、沿岸州のひとたちは微笑ましく思い、内陸州のひとたちは羨ましく思うわけだ。


 それから、フロリダ、デラウェア、ルイジアナ、ロードアイランド、ニュージャージーみたいに、州の平均標高が100メートル以下の州から来た高校生たちもいるだろ。

 彼らはセコイア国立公園に行って、ホイットニー山(4418M)の威容を見てやっぱり硬直するわけだ。

 それでもう大騒ぎしながらもずっと見てるんだよ。

 セコイアの巨木にも感動してるし。


 実はハワイ州の高校生もこのセコイア国立公園ツアーを選んだそうだ。

 あの州には確かにデカい山はあるけど、かなりなだらかで頂上付近まで車で行けるからなぁ。

 だから『険しい山』っていうのは見たことが無かったそうなんだ。


 険しい山も海もあるアラスカ州の高校生は、やっぱりネズミーリゾートを選んで大はしゃぎしてたわ。


 まあ、カリフォルニアの高校生諸君には少し気の毒だったけど、ホスト側なんで諦めてくれたまえ。


 そうした全米から来た高校生たちの旅行風景を紹介するコーナーもとんでもない人気になってたんで、どうやらこれにもスポンサーがついて別番組になるらしい。



 おかげでカリフォルニアの観光業界も張り切りまくってたよ。

 サンフランシスコ市郡の市長さんたちも大喜びだったし。


 まあみんな喜んでくれたみたいでよかったわ。



 でもさ、テレビでも新聞でも『全米高校野球大会』っていう言葉の前に、『あのミラクルボーイの提唱した』とか『ミラクルボーイの』とかいう枕詞をつけるのはなんとかならんもんかね……

 なんか聞くたびにこそばゆくなるんだけど……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 MLBのレギュラーシーズンも後半戦に入った。


 まあ、俺もチームも無難に勝ち星を積み上げていけてたよ。

 チームの勝率はさすがに去年ほどじゃあなくって70%ぐらいだったけど。

 やっぱりジョーの抜けた穴って大きかったんだな。



 でもまあ、俺は俺のやるべきことをやるだけだ。


 このころになると、俺も思い始めてたんだけどな。

 野手は大変だよ。

 いくらたまに休みを貰えるって言っても、半年間で150試合以上出場し続けなきゃなんないわけだ。

 それにポストシーズンが加われば、もっと試合数も増えるわけだし。

 その間にはバッティングの好不調もあれば疲れも溜まるだろう。


 だけど、先発ピッチャーってどんなに登板してもせいぜい40試合だろ。

 中5日で投げてりゃ32試合ぐらいだし。

 それで100球で交代してれば、年間240イニングほどしか投げないわけだ。

 つまり、月あたりだったら40イニングで120人のバッターをアウトにすればいいんだよ。

 だから考えてみればそれほどの重労働じゃあないんだ。


 でも、さすがにシーズン中は、筋トレとかやって球速上げたり新しい変化球にチャレンジしたりっていうのは無理だよなあ。

 だから、少なくとも20代のピッチャーにとって、本当に大事なのは11月から3月までの5か月なんじゃないかって思ったんだ。


 つまり、11月から3月までで進化して、シーズン中はその進化分で喰って行くのが若手ピッチャーっていうもんなんじゃないかな。


 だからひょっとして、本当に活躍して来たピッチャーって、実はこっそりシーズンオフにも一人でハードなトレーニングをしてた奴なんじゃないかと思うんだ。

 そうでもしなきゃ、この厳しいメジャーの世界で生き残れなかったんじゃないかって。


 うん、たぶんそうだな。

 俺たちの勝負時はシーズンオフだ。

 このことは忘れないようにしようじゃないか。


 疲れたから休みたけりゃ引退してから休めばいいんだから。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ありがたいことに、ギガンテスはこのシーズンも地区優勝出来たよ。

 最終勝率は68%ほどだったけど。


 それでナショナルリーグのチャンピオンシリーズも4勝2敗でドジャースを退けて、俺たちはまたワールドシリーズの舞台に立てたんだ。


 だけど、この年のアメリカンリーグ優勝のシカゴ・ホワイトソックスも絶好調でさ。

 俺が投げた第1戦と第4戦は完封出来たけど、他の試合は逆転また逆転のシーソーゲームが続いて、とうとう第7戦までもつれ込んだんだ。


 あー、また俺のピッチングに優勝がかかってるのかぁ。

 仕方ない、もう今シーズン最後の試合なんだから力を出し切って頑張ろう。

 さすがにライトの守備に回る必要は無いだろうけどな、はは。


 そしたら、その日のミゲルのサインが冴え渡ったんだ。

 こいつもチャンピオンチームの2番手キャッチャーとして進化してたんだな。

 おかげで俺も久しぶりにゾーンに入れて、あっという間に回が進んで行って、試合が終わってみれば24奪三振でパーフェクトゲームだったようだ。


 これで今年21個目のノーヒッターorパーフェクトゲームか。 

 それにまた40-40も達成出来てたし、いいシーズンだったかな……




 ワールドシリーズ5連覇を決めた翌日、球団を通じてMLB本部から面会の申し入れがあった。

 それで応接室に行ったら、MLB本部の本部長さんがいたんだよ。


「ミスターカンダ、まずはワールドシリーズ制覇おめでとう」


「ありがとうございます」


「それで、今日お邪魔したのは、WBCにアメリカ代表として参加して頂きたく要請しに来たのだよ。

 どうか参加をお願い出来ないだろうか。

 アメリカ国民が皆期待しているんだ」


 はは、あの日本のエラそーなジジイとは随分な違いだわ。


「わかりました。選考して下さってありがとうございます。

 微力ながら全力を尽くします」


「そうか!

 ありがとうありがとう!

 これでWBCも大いに盛り上がるだろう!」


「ところで、わたしはもう『代表』なんですか?

『代表候補』じゃなくて」


「代表候補は全部で40名招集するんだが、そのなかでも主だったメンバーにはもう代表内定を伝えているんだ。

 君はもちろん代表内定だよ。

 まあ、実際にメンバーを決めたのはアメリカ代表監督のガイエルで、我々はそれをそっくりそのまま追認しただけなんだが」



「そうですか、光栄です」


「当然のことだよ。

 MLBの5年連続最多勝投手を代表から外すなんて有り得ないからね」


「はは。

 ところで審判団はどうなりましたか?」


「問題ない。

 全てメジャーのS級ライセンス審判で固められることになった。

 なにしろホワイトハウスからの後押しもあったからね。

 出身国などで贔屓をしないとの宣誓をしてもらう約束も取り付けてある。

 さらには君の提案で念のためビデオ判定システムも用意するし。

 契約報酬として一人10万ドル(当時≒1250万円)を支払うことにしたのも大いに効果があったかもしらんが」


「それはよかったです。

 あと、国籍条項はどうなりました?」


「本人が国籍を所持している国の代表に選ばれなかった場合、両親のどちらかが国籍を所持している国の代表に選ばれれば出場出来ることに決まったよ」


「これで各国代表ともメジャーリーガーの出場が増えそうですね……」


「それにしても、代表の練習施設としてドミニカのギガンテス・アカデミーを提供してくれるというのは本当かね」


「ええ、既にオーナー会とGMの了解は取ってあります。

 ついでにヒル〇ン・ホテルとも提携して、ホテル並みの選手宿舎の建設もほぼ終わっているそうですね」


「それはありがたい。

 君も含めてギガンテスには随分と助けられそうだ」


「はは、まあワールドシリーズで5連覇もさせて貰った恩返しとでも思ってください」





 3日後にはWBCアメリカ代表候補メンバーが発表された。

 もちろん招集された全員が招集を快諾したそうで、故障を抱えてた奴も慌ててその日から神山施療室に通い込んでたよ。


 でもさー、翌日日本から記者たちが大量に押し寄せて来ちゃったんだ。

 それで仕方ないんでキャンドルスティックパークのプレスルームで記者会見することになったんだ。



 記者たちは相当に殺気立ってたよ。


「なぜアメリカ代表なんですか!」

「あなたはアメリカ代表になるために急遽アメリカ国籍を申請したんですか!」

「なぜ日本代表に入らないんですか!」

「NPBのオーナー会会長に日本代表入りを確約したのは嘘だったんですか!」



 あー、それにしてもなんで日本の記者ってこうもマナーが悪いんかねぇ。


 それで俺、用意してた紙を壁に貼ったんだ。


『質問はひとりずつ紳士的にお願いします。

 みなさんが頭を冷やされて、質問の順番が決まるまで記者会見は中断させて頂きます』って書いたやつを。


「なんだと!」

「早く質問に答えろ!」

「お前には答える義務があるのがわからんのか!」


 俺はもう1枚の紙を貼った。


『それでは、みなさんの態度があまりに無礼で不愉快なので、記者会見は中止させて頂きます。

 さようなら』


 そうしてにっこり微笑んでプレスルームから出ていったんだ。

 なんか俺に掴みかかって来た記者が大勢いたけど、球団の巨漢警備員たちにブロックされてたぞ。


 それで別室でコーヒー飲みながら、MHKの取材にだけは答えてやってたんだ。

 記者も冷静だったしMHKには世話になってたからな。

 そしたら、30分ほどで記者代表とか言う奴が頭下げに来たんだよ。

 どうやら連中も、このまま取材が出来ないと日本にいる上司が激怒するっていうことに気が付いたんだろう。


 それでまあ俺もプレスルームに戻ってやったんだ。





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