表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第5章 メジャーリーガー篇
128/157

*** 128 かくれんぼ勝負 ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織、用語に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……

また、リアルとは異なる記述があったとしても、それはフィクションだからです……

みなさま、リアルとフィクションを混同されないようにお気をつけ下さいませ。



 


「それで俺からの提案なんだけど、自社株買いとして会社がジョーから株式を買い取ったらどうかな」


「それでは、今の会社の資産状況から見て株式の価値は約23倍になっていますので、4600万ドル(当時≒70憶円)での買い取りになりますか」


「いや、それがさ。

 ジョーが言うには元金の200万ドルが返ってくれば充分だそうなんだ」


「それはいくらなんでも……」


「いや俺もそう言ったんだけどな。

 どうも奴は恩返しで儲けるわけにはいかないって思ってるようなんだよ。

 で、俺も説得してみたんだけどさ。

 そしたら奴が、誰かが現在価値で株を買ってくれたら、200万ドルだけ受け取って、残りは『基金』として会社に寄付するって言うんだわ」


「『基金』ですか……」


「防具に使われてるケブラーもプラスチックも、耐用年数は5~7年だろ。

 だから5年後から、消費者が購入した防具のケブラー交換サービスや買い替えコストを安くしてやるための『基金』にしろって言うんだわ。

 例えば5年後にボロボロの防具を持ち込んだ奴には新品の防具を5割引きで売ってやるとか……

 どうも、あの防具をつけてる奴が野球で怪我をするのが我慢ならないらしいんだわ」


「な、なるほど……」


「神田さん」


「はい、アメリアさん」


「申し訳ないんだけど、あの子に言ってせめて倍額の400万ドルを受け取るように説得して頂けないかしら。

 わたしもお礼と説得のお手紙を書くから。

 そうして残りの4200万ドルは、『キング基金』としてありがたく使わせてもらいましょう」


「わかりました」



 アメリアさんが背筋を伸ばして微笑んだ。


「それから私も引退することにします。

 同じように私の持ち株も会社で買い取って貰えないかしら」


「そ、そんな……」


「ふふ、私がシンヤやコースケと合弁会社を作ったのは、私が働けなくなったり死んだりした後の会社を案じていたからなの。

 だから、安心して従業員たちを任せられる買い手を探してるって前にも言ったでしょ。

 あなたたちは、私の想像を遥かに超えた最高の事業継承者だわ。

 会社のみんなも仕事はいくらでもあるし、子供たちの怪我も減らせた誇りもあるし、本当に幸せそうだし。

 だから、いい機会だから私も引退することにしたわ」


「はい……」


「それじゃあ、私の株式の買い取りもジョーとおなじにしてくださいな。

 私は600万ドルを受け取って、残りの8400万ドルは『キング基金』に加えて頂くということで。

 それとは別に、サクラメント・チタニウムの株も買って頂けないかしら。

 まあ、子会社による親会社の買収ね。

 その売却代金の半分は寄付しますから、従業員福祉のために使って下さい」


「は、はい……

 あの…… アメリア社長……

 もしよろしければ、これからも最高顧問として残って、会社に助言して頂けませんでしょうか……」


「ふふ、それじゃあこれからもよろしくね。

 あなたたち若い経営者が一生懸命働いているのを見ているのは、とっても楽しいもの♪」



「さーて、それじゃあ俺も同じように経営から引退するかな」


「あの、神田先輩……

 出来れば先輩はそのまま出資者として残って頂けませんでしょうか……」


「ん? どうしてだ?」


「いえ、この会社、実はあの超スーパースターであるミラクルボーイが出資しているっていうことで、ネームバリューも信用度も凄いんです」


「ははは、俺は広告塔ってぇことか」


「ええ、ですからミラクルボーイが会社から手を引くとなると……」


「はは、わかったわかった。

 それじゃあそのままにしておこうか」


「あ、ありがとうございます……

 それでは最後の議題なんですが、アメリカ国内の大手スポーツ用品メーカーから特許権の買取や合弁やライセンス供与依頼のオファーが殺到していまして、今後の方針を決めておきたいと思います」


「そうか、このままサクラメント・プロテクターだけで製造販売を伸ばしていけば、独占禁止法に抵触する可能性が出て来るわけだな」


「はい、その通りです」


「それじゃあ、特許の売却は無しで、ライセンス供与と技術供与だけで行くか。

 それも出来れば製造拠点が東海岸や中部にある会社がベストだな。

 八王子会長はどう思われますか」


「ははは、この会社をここまで大きくしたのは君たちだ。

 すべて君たちに任せよう」


「ありがとうございます。

 それにしても、供与先企業の選定をどうするかなあ」



 渋谷会長が手を挙げた。


「その選定については、小売り委託先でもある我々渋谷物産に任せてもらえんだろうか。

 アメリカ国内の会社の技術力や信用度チェックには些かの経験もある」


「それは心強いお話ですが、よろしいんですか?」


「我々も小売り代理店として十分に儲けさせて貰っている。

 しかも君とMLBには日本での広告代理店活動でも儲けさせて貰った。

 まあ、その恩返しだと思ってくれたまえ。

 それに、そうしたアメリカ国内大手であれば、既に全国配送網も持っておることだろう。

 君たちは配送網の心配をすることなく、更なる技術開発と製造に注力出来るだろうからな」


「ありがとうございます……」


「いや、私も久しぶりに若い会社が急成長するのを間近で見られて実に楽しかったよ。

 それに何と言っても、その経営メンバーのうちの一人が我が渋谷物産の次期社長候補でもあったしな。

 信哉くん、君のビジネス修行はこれ以上無い大成功だった。

 おめでとう」


「あ、ありがとうございます……」


「社長とも話し合ったのだが、この大成功をもって、君は『次期社長候補』から『次期社長』に昇格だ。

 我が社の副会長たちも副社長会も、全員賛成してくれている」


「えっ……」


「だがな、信哉くん。

 君の大成功も、君だけの努力ではなく、アメリア社長や八王子会長、とりわけ神田さんの支援有ってのことだ。

 この恩義を忘れてはいけないよ」


「はい……」


「まあそういった素晴らしい人脈を築けたのも君の才能の内だろうけどな、ははは……」


「はい…………」




 よかったな上野。

 でも俺がお前に協力したのは、お前に恩を返すつもりもあったんだぞ。

 なにしろお前がアザだらけになりながらも俺の球を受けてくれてたからこそ、俺も甲子園に行けたんだからな……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 それでまあ株主総会も無事終わったんで、俺は自宅に帰ったんだ。

 そしたら、またガイアくんとエンジェリーナちゃんがパタパタ飛んできて抱き着いて来てくれたんだよ。


(ぱぱぁ♡)

(ぱぱしゃん、あしょんであしょんで♡)


 はは、さすがにまだ喋れないから念話のままなんだな。


「おおいいぞ、なにして遊ぼうか」


(あにょね、かくれんぼちよう♪)

(ぱぱしゃんがおにで、かくれたわたちたちをちゅかまえるにょ♪)


「それじゃあ隠れるのはこのリビングだけにしようか」


((うん♡))


 といっても、このリビング1200平米もあるんだけどな。



(じゃあぱぱしゃんゆっくり10かじょえて)

(そのあいだにわたちたかくりぇるから)


「それじゃあ数えるぞー、いーち、にー、さーん……、じゅー」


((もーいーよ))


 さてそれじゃあ探すか……


 ん? 

 こ、こいつら『隠蔽』使っとる!

 そ、そうか、神保さんに教えて貰ったんだな……

 それにしても見事な『隠蔽』だ……

 これ、Lv30は行ってんぞ……



 だが……

 エンジェリーナよ。

 ソファの下から、ピンクの花柄おむつカバーに包まれた可愛らしいおしりがハミ出てんぞ……

 これがまさに『頭隠して尻隠さず』っていうやつだな。


 それじゃあ俺も『気配遮断Lv9999』と『隠蔽Lv9999』をかけてと。

 そうして俺は、静かに娘に近づいて行ったんだ。


「エンジェリーナ見つけた!」

 そう言いながら、エンジェのしりをわしっと掴んだんだよ。


(ぴぃ――――――――っ!)


 な、なんかヘンな悲鳴だな……

 よ、よっぽど驚いたんだな……


 さ、さて次はガイアか。


 ん?

 なんだあの彫刻……


 そう、リビングの端に『女神さまと天使たち』っていう彫刻が置いてあるんだけどさ、めーちゃんを囲む10人の天使見習いたちの実物大の彫刻なんだけどな。

 その中の天使の1体が、ブルーの花柄のおむつカバーを付けてるんだわ。


「ガイア見つけた!」 わしっ!


(ぴぃ――――――――っ!)



 そしたらさー、子供たちが部屋の隅で額を寄せ合ってなにやら念話で会話してるんだよ。



(おかちい……)


(なんでみつかっちゃったんだろ……)


(じんぼしゃんにおしょわった『いんぺい』はカンペキだったはじゅなのに……)


(あんまりびっくりしゅたんでちょっとちびっちゃった……)


(だいじょうぶ、おむちゅもおむちゅかばーもしてりゅから)


(あっ!)


(しょうか! おむちゅカバーのせいにぇ!)


(で、でもこれにゅぐとおかあしゃまにおこられるし……)


(よーち、それじゃああちたこそ、もっとじゅんびして……)


(うん! ぱぱしゃんにかとう!)




 それで翌日またかくれんぼを挑まれたんだけどさ……


 なんだこれ?

 なんで部屋中のソファや椅子の下に、ピンクの花柄おむつカバーに包まれたしりがたくさんあるんだ?

 これ、12個はあんぞ……


 それで俺、とりあえず手近のしりを掴んでみたんだよ。


 わしっ!


「ぴぃ――――――――っ!」


 ま、またヘンな悲鳴だけど、念話じゃなくって声が出てる……

 天使って、念話でも声でも驚いたときはこういうふうに叫ぶんか……


(じゃんにぇんでしゅたぱぱしゃん!

 そのひとはえんぐんのてんしみならいしゃんでしゅ♪)


 そうか……

 天使を隠すには天使の中か……

 しりを隠すならしりの中とも言うが……

 やるな子供たち……


 だが……


「エンジェリーナ見つけた!」 わしっ!


(ぴぃ――――――――っ!)



 ははは、天使見習いたちはみんな7歳から10歳ぐらいの体だからな。

 その中で一番小さなしりがエンジェリーナだ!

 さて次はガイアだな……


 あー、彫刻の天使が20体に増えとる……

 しかも10体は青い花柄おむつカバーをつけとる……

 でもやっぱりひとつだけ他のしりより小さいか……


「ガイア見つけた!」 わしっ!


(ぴぃ――――――――っ!)



 そしたらまた部屋の隅で子供たちが相談してるんだわ。


(おかちい……)


(こんどこちょカンペキだとおもったにょに……)


(それじゃあつぎのさくちぇんをかんがえまちょう)


(うん!)



 それでまた夕食後にかくれんぼを挑まれたんだけどさ。

 今度は一見してどこにも見当たらないんだよ。


(ふっふっふ、こんどこしょぱぱしゃんのまけでしゅ……)



 ん?

 なんか空気が微かに振動しとる……

 振動源は……


 あー、天井画に2つおしりがへばりついとるわー。

 それも青い絵の具が使ってある場所には青いおむつカバーが、ピンクの絵の具のところにはピンクのおむつカバーがあるわー。

 それにしても、なんというシュールな光景なんだ。


 でも、見つかるかもしれない緊張感でおしりがぷるぷるしとる……



「ガイア見つけた!」 わしっ!


(ぴぴぴぃ――――――――っ!)


「エンジェリーナ見つけた!」 わしっ!


(ぴぴぴぴぃ――――――――っ!)



 こうして子供たちとのかくれんぼ対決は俺の勝利に終わったんだ。


 なんかめーちゃんはすっげぇ嬉しそうにそんな光景を見ていたよ……

 女性って、ダンナが子供たちと仲良くしてると本能的に安心するらしいな。

 その晩はちょっと激しかったし10回もおねだりされちゃったわ……


 さらにはまた妊娠していいかって聞かれちゃったし。


 どうやらあんまり子供たちが可愛いもんで、もっともっと大勢欲しくなったらしいな。

 ま、まあ、俺もまったく同感だけどさ……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 3月1日、ギガンテスのアリゾナキャンプが始まった。


 なんかブレットとガイエルは、俺が教えてきたロースター候補の連中を見てずっと唸ってたよ。



「なあガイエル、あのユーキ軍団レギオンが倍増してるように見えるんだが……」


「ええ、少なくとも全員エクスパンド・ロースター以上ですね」


「それにドミニカ・アカデミーから来たあの外野手たち……

 あの伝説のユーキの『レーザービーム』を伝授されたのか……」


「80メートルの遠投で、球速がほとんど落ちずに直線状の球が投げられるとは……」


「今シーズンのウチの守備では、対戦相手の3塁や本塁でのアウトが大幅に増えそうだな……」


「はは、あの守備プレーは興奮させてくれますからねぇ。

 きっとファンも大喜びでしょう」


「ふう、ユーキへのコーチングフィー100万ドルは安すぎたか……」


「それにしても、これでユーキを崇める軍団レギオンメンバーが21人ですか。

 なんだか一大勢力を築きつつありますね」


「彼らはすべてユーキのおかげだと思い込んでるからな」


「実際にそうなんでしょうけど、あと5年もすれば300番台の背番号も足りなくなりそうです」


「ははは、メジャー全ての球団に300番台の背番号が現れるのもそう遠くない話か」


「はい……」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ