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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第5章 メジャーリーガー篇
123/157

*** 123 『40-40』 ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織、用語に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……

また、リアルとは異なる記述があったとしても、それはフィクションだからです……

みなさま、リアルとフィクションを混同されないようにお気をつけ下さいませ。



 


 7月のオールスター戦ファン投票では、俺はありがたいことにまた投手部門1位だったよ。

 新変化球のおかげで、開幕以来24勝0敗だったこともあるし。

 まあ、ファンもアメリカンリーグのスーパースターたちが俺の新変化球に驚くところを見てみたかったらしいな。


 それで例のブックメーカーが、ア・リーグの選手たちの分もオッズを出し始めたんだわ。

 でもさ、オールスターゲームって、投手は3回しか投げないから、ほとんどの出場選手は打席機会が1回しか無いわけだ。

 だからみんなすっげぇオッズになってたそうだ。

 20倍から100倍までな。


 まあでも初見の打席であの球打つのは難しいよなぁ。

 俺だって打てないだろうし。


 だから結果はまたも27球で9人連続三振だったんだけどさ。

 これで3年連続9人完封だぜ。

 打者を打ち取るごとに、球場内のあっちこっちで「あ゛ー!」とか「おまえがー!」とか聞こえて来るのには笑っちまったけど。


 そうそう、3年連続オールスターMVPも史上初だったそうだわ。




 オールスター戦からの帰りの飛行機の中でブレットに言われたよ。


「GM会議ではナショナルリーグのGMたちから随分と感謝されたよ。

 故障者リストに入って神山診療所に行った選手たちの復帰までの期間が平均で3分の1以下になったそうだ。

 それだけじゃない。

 キミのおかげで、ペナントレース前半では各チームの観客動員数が平均で15%も増えているそうだ。

 まあ、去年あれだけ勝っていたドジャースはほとんど増えていないそうだが、それでも去年並みに近い数字だそうだな。

 それにどうやらユーキ軍団レギオンの人気も上がって来ているそうなんで、キミが登板しなくとも、客の入りは上々らしい」


「そうでしたか、ありがたいことですね」


「それに加えてキミの考案したあのバーチャル広告のおかげで、アメリカンリーグの球団を含めて各球団とも広告収入が軒並み20%も増えているそうだ。

 今後も更に増える見込みだそうだしな。

 もちろんその分の特許料でウチも潤っているわけだが」


「お役に立てて幸いです」


「さらに加えて、あのキャッチャー用防具や打者用防具はほぼ全球団で採用されたし、おかげで選手たちの打球事故は激減したそうだ。

 もちろん各チームの防具デザインをプリントしたTシャツは、全米で売れまくっているそうだしな。

 ついでに球場内で客に防具の貸し出しを始めた球団からも、客の打球事故が激減したと随分感謝されたよ。

 おかげで家族連れの客が大幅に増えたそうだ」


「それはなによりですねぇ」


「それにな。

 防具もバーチャル広告もすべてキミが考案したものだと聞いて、GM全員が驚いていたよ。

 特に防具のプロトタイプはキミが16歳の時に発案したと聞いて、皆が仰け反っていたな」


「ははは、こそばゆいです」


「ということでだ。

 シーズン終了後のGM会議には、是非キミを連れて来るように頼まれてしまったんだ。

 オフに申し訳ないんだが、どうか出席してもらえないだろうか」


「光栄ですね。もちろん出席させて頂きます」


「ありがとう」


「まあ、防具代金やらTシャツのデザイン料やら広告の特許料やらを支払ってくれているお客さんたちみたいなもんですからねぇ。

 一種の顧客サービスみたいなもんですよ」


「ははは、さすがだな。

 ところでシーズン後半に向けて、キミ自身はなにか希望があるかね」


「ええ、実はひとつだけあるんですが……」


「ほう、是非聞かせてくれたまえ」



 それでまあ俺の希望を伝えたんだけどさ。

 ブレットは驚くやら笑うやらした後に、快く了解してくれたんだ。

 なぜだかちょっと引き攣ってたけど……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 オールスターゲームも終わってシーズンは終盤戦に入った。


 ありがたいことに、ギガンテスは相変わらず順調だったわ。

 ユーキ軍団レギオンの連中もますます元気いっぱいだったし。


 だけどさ、このままだと、9月中旬にはレギュラーシーズンが終わっちゃいそうなんだわ。

 シーズンの最初と最後は同地区内の対戦が組まれてるから、その同地区対決が始まった途端に俺たちのナショナルリーグ西地区優勝が決まっちまうんだ。

 そしたらその後のゲームは全部キャンセルされるから、もう俺たちのレギュラーシーズンは終わっちゃうんだよ。


 それで俺はブレットに頼んでいた通りに、8月中旬ごろからは中2日の登板にしてもらったんだ。

 代打も毎試合お願いしたし。


 その甲斐あって、とうとう達成出来たんだ。

 そう……

 40勝とホームラン40本を。


 へへ、これで『40-40』だな。

 まあ野球マスコミでは『ウルトラスーパーアンタッチャブルレコード』とか言われてたわ。

 まあ残念ながら打席数は規定打席に達していなかったんだけど、それでも打率も48%あったから、『幻の40-40-40』とも呼ばれてたけどな。



 ナリーグ優勝パーティーではユーキ軍団レギオンたちに囲まれたよ。


「ボス、『40-40』おめでとうございます」


「「「おめでとうございます!!」」」


「それにしても凄ぇ記録だわ」

「ああ、40勝とか信じらんねぇわ」


「何言ってるんだ。

 お前たちだって5人で58勝もしてるじゃないか」


「ですが俺たち5人で12敗してますから、ボスの40連勝には完敗ですわ」


「だけどお前ら5人でホールドが65もあったろ。

 セーブだって40あったし。

 そういう意味で俺よりもずっとチームに貢献してたろうに」


「はは、5人で束になってようやくボス並みですか」


「それにさ、お前ら随分人気出て来たようじゃねぇか。

 特にお前たち同士でピッチャー交代するときには、例え前の投手が打ち込まれてても、『後は任せた!』『おう!任せろ!』とか言いながら、笑顔でボールを手渡ししてるだろ。

 あれが見てて爽やかだっていうんで、レギオン全体の評判も相当なもんになって来てるそうだぞ」


「へへ、俺たちの300番台のついたユニフォームも、買ってくれるファンが出て来たみたいですね」


「お前らが頑張ったおかげだな」


「いやそれもこれもあの『投手版ユーキ・メソッド』のおかげですわ」

「その通りですぜ」


「まあ、結果さえ出てれば理由なんかどうでもいいか。

 次はリーグチャンピオンシップもワールドシリーズも勝って、3連覇達成しようぜ!」


「「「「 おう!! 」」」」




 それでまあ、リーグチャンピオンシップはNYメッツ相手に4勝1敗で勝利して、ワールドシリーズもNYヤンキース相手に4勝2敗で勝てたんだ。

 おかげでなんか『NYキラー』とか言われてたけど。


 まあ、俺はそれぞれ2試合しか先発しなかったんだけどさ。

 軍団レギオンメンバーは、先発に中継ぎにクローザーにと大活躍だったよ。

 さすがみんな若いだけあるよな。

 まあ神山さんたちのおかげで体のケアが完璧だったこともあるんだけど。




 ワールドシリーズが終わると、恒例の各種アワードが発表された。

 まあ俺の場合は、去年みたいなライトフィールダーのゴールドグラブ賞が無かっただけで、後はほとんど変わらなかったかな。


 でもさ、『ナショナルリーグ新人王』の発表見てびっくらこいたよ。

 だって、受賞者が『ユーキ軍団レギオン』だったんだぜ!


 ま、まあ、他に目ぼしい候補者がいなかったからなんだろうけどさ……


 それで連中は全員年俸を30万ドルに上げて貰った上に、タイトルボーナスも1人5万ドル貰えたんだ。

 みんな随分と喜んでたよ。

 全員に捕まって胴上げされちまったけどな。

 みんなパワーあるから地上8メートルを舞っちまったぜ……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 俺の契約更改交渉が始まった。

 何故だか、今年は小会議室じゃあなくって球団本部のメイン応接室に呼ばれたんだけど。

 それにブレット以外にもオーナー・アソシエーションの全メンバー12人もいたし。



「まずはユーキ、今シーズンも大活躍ありがとう。

 40-40などという大記録は、我々の想像を超えていたよ」


「いえ、私の我儘を聞いてくれて、登板回数を増やしてくれた球団にも感謝しています」


「しかも活躍したのは君だけではない。

 君が育てたユーキ軍団レギオンまでもが、新人王のタイトルを獲るほどまでに成長してくれた。

 我々経営サイドとしても、本当に感謝している」


「まあ、それはあいつらが頑張った結果ですからね」


「だがユーキ軍団レギオンのメンバーは、誰もそうは思っていないようだ。

 皆、口を揃えて『ボスのおかげです』と言っていたぞ」


「はは、まあ害も無いカン違いですからいいとしましょうか」


「ふう、日本人は自分の手柄を主張しないというのは本当だったんだな……

 それでは本題の来季契約交渉に入る前に、事務手続きを済ませてしまおう。

 まずは、あの君がデザインした防具風のTシャツなんだが。

 ウチの球団だけではなく、MLB全てのチームがそれぞれの球団のカラーとデザインで売り出した結果、今シーズンだけで子供用中心になんと300万着も売れたそうだ」


「えっ……」


「総売り上げの5%が君のデザイン料になるので、君の取り分は約210万ドル(当時≒3億3000万円)になる」


(げげっ!)


「それからやはり君の考案した新型CG広告の特許使用料が、全球団合計で1400万ドルに及んだため、君の取り分は10%で140万ドル(当時≒2億2000万円)となった」


(げげげげげ……)


「さらに君のアドバイスで始めたMHK向けの『国際放送』の中で放映された広告出稿量が、総額で3億ドルに到達している。

 ここからギガンテス球団が負担した2000万ドルを差し引いた2億8000万ドルのうち、15%に当たる4200万ドル(当時≒67億円)を受け取って欲しい」


(うーげげげげげ……)


「会計士に相談した結果、この手のアイデア料の適正水準は5%から15%だということなので、そのうちの最高割合を適用させて貰っている。

 まあ、我々からの感謝の気持ちだと思ってくれたまえ。

 残念ながら、来年からはMLB本部の取り分が増えるために、君に渡せるアイデア料も縮小せざるを得んのだが、その分も含まれていると思って欲しい」


(どげげげげげげ……)


「以上の3点で君への支払いは総額約4550万ドル(当時≒72億5000万円)になる。

 12月の年度末に金額が確定次第、君の口座に振り込ませて貰いたい」


(ずどげげげげげげげげげ……)



「い、いいんですか?」


「もちろんだとも。

 これは君の正当な報酬だ」





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