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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第5章 メジャーリーガー篇
120/157

*** 120 新型CG広告 ***


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織、用語に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……

また、リアルとは異なる記述があったとしても、それはフィクションだからです……

みなさま、リアルとフィクションを混同されないようにお気をつけ下さいませ。



 


 そんなこんなで、俺は新型カーブを武器に開幕3試合連続パーフェクトゲームとかやっちまったし、ユーキ軍団レギオンたちの活躍もあって、ギガンテスは開幕12連勝とかやらかしちまったんだ。



 おかげでMHKの視聴率もとんでもないことになってるらしい。


 さらにだ。


 ギガンテス戦の中継では、攻守交代になると外野スタンドのフェンスから突然壁が立ち上がり始めるんだ。

 その壁は、バックスクリーンを覆ってライトのポールからレフトのポールまで広がって行く。


 さらにはその巨大な壁に海沿いの道路と美しい風景が映し出され、その道を1台の最新のアメ車が軽快に走る姿が見え始める。

 波の音に混ざって微かにBGMも聞こえ始め、そしてカメラが次第にズームアップすると、フルオープンになった座席には家族連れの楽しそうな笑顔も見えて来るんだ。


 そうして下の方に、自動車メーカーと新車の名前が表示されるんだよ。

 もちろんスクリーンも含めてすべてCGだけどな。


 画面の隅には小さく『この映像は現地国際映像に基づいてお送りさせていただいています』とのテロップも出ているけど。



 スクリーンの映像が切り替わった。


 今度は内野席まですべてスクリーンに覆われ、そこでは某ハンバーガーチェーンのキャラクターたちが、楽しそうにさまざまな商品を食べながら座っているんだ。

 そうして次は、グラウンドでキャラクターたちが野球を始めるんだよ。


 7回表が終わった後のセブンスイニングストレッチの時なんか、いろんなスポンサーのキャラクターたちが音楽に合わせてグラウンドで踊ってるしな。


 もちろんビジターゲームのときにも、対戦相手にいくばくかの分け前を払って同じように広告を出すんだけどさ。

 相手球団も、なんにもしないでカネが入ってくるもんだから、けっこう喜んでるそうだ。

 自分たちの契約したテレビ局では、アメリカ国内向けのCMを流せているわけだし。



 因みに、当時の日米貿易摩擦のせいで、プラザ合意による為替操作は行われていたけど、それだけじゃなくって、政府からアメリカ企業に対して日本への輸出を増やせっていう要請も来てたんだ。


 だけど、日本で販売網やら営業所を拡充したりするのには莫大なコストがかかるだろ。

 日本の土地代はバカ高いし。

 でもこうして日本向けのCMを入れれば、そこまでのカネはかからないわけだな。


 まあ、輸出拡大努力をしていますっていう政府に対するポーズみたいなもんかもしれないけど、なにしろ広告媒体は500万世帯が契約する視聴率40%超えのモンスターコンテンツだからなぁ。

 宣伝広告費1000万ドル(当時≒18億円)とか払っても、誰も高いとか言わなかったそうだ。


 おかげでギガンテスが負担してMHKにまけてやった2000万ドルは、あっという間に10倍返しで取り返せたらしい。



 それに、こうした新しい球場内CMは、当時の日本人にとっては相当な衝撃だったんだ。

 視聴者はもちろん、広告代理店やテレビ局にとっても。

 なんせ今までは球場内に薄汚い看板立ててただけだからな。


 でもこの新方式の場内広告だったら、攻守交代のときだけじゃあなくって、試合中もホームベースの斜め後ろのスタンド壁とか、外野のフェンスとかには広告出し放題だろ。

 しかもCGだから、イニングごとに違った企業のCMが出せるし。


 それで日本の広告代理店も躍起になって真似をしようとしたんだけどさ。

 もう既に日本国内の特許権は全て押さえられちまってたわけだ。


 そうして渋谷エージェンシーに対して特許を使わせろって言って来たんだけど、「この特許は全てギガンテス球団が所持していますので、そちらとご相談ください」とかって言われちまうんだ。


 そしてその場に笑顔のギガンテス職員が現れて、分厚い契約書を差し出すんだよ。

 普段は営業して企業からカネ集めてる広告代理店も、この時点で自分たちがクライアントになってたことに気づくわけだ。


 それでも特許使用の独占契約を求めて来た奴もいたそうだけど、まあ答えは当然ノーだ。

 そんなことするより、カネ払ってでも特許を使いたい奴はこうして勝手に集まって来てくれるんだし。



 でも、もはや日本国内のプロ野球の視聴率は、ラビッツ戦を中心にガタ落ちだからなぁ。

 だから日本企業も国内の野球中継にCM出すのにそこまで乗り気にはならないわけだ。

 なにしろ視聴者はMLB中継に釘付けなんだから。


 それで、日本の広告代理店は、もはや日本最高の視聴率を誇るMLB中継に日本企業のCMを出すべく、今度はCM契約交渉に来るわけだよ。


 でもギガンテスの担当者の答えは、「既に渋谷エージェンシーと独占広告代理店契約を締結しておりますので」になっちゃうわけだ。


 それでがっかりして引き下がるしかなくなるんだけどさ。

 キミタチ、自分では何も考えず何も作らず、ただ単に契約を横流しするだけで儲けようとか、ちょっと考えが甘いんじゃないかい?



 そして、その後すぐに今度は日本企業のCMがギガンテス戦に出始めたんだ。

 もちろんほとんどのアメリカ企業が『同業他社のCMを出さない』っていう契約を結んでてその分高い契約料を払ってくれてるから、残念ながら日本の自動車メーカーのCMとかは流せないんだけど。


 だけど、例えば鉄道会社の国内旅行キャンペーンのCMとか、国内のスーパーマーケットチェーンのCMとか、このころ急速に拡大し始めてたコンビニのCMとかは流せるよな。

 さらにはまだアメリカ企業がCMを流してない業種もたくさんあるし。


 そうした日本企業が渋谷エージェンシー経由で押し寄せて来たんだよ。

 それで、そのシーズンの広告契約料だけでトンデモな額になっちまったんだ。


 まあMLB中継で流したCM料っていうことで、MLB本部にも分配金はあるんだけどさ。

 それでももうギガンテスはウハウハだわー。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 そういえばこのころ、テレビでギガンテスの試合中に、ホームベース裏の観客がスーパーカーブに逃げ惑ってるのを見た上野(渋谷)が思いついたことがあったんだ。


 それですぐにギガンテス球団本部にロイヤリティーを払って、キャンドルスティックパーク内で例の防具の貸し出しを始めたんだよ。

 子供用のSSSサイズから大人用の5Lサイズまで用意して。


 例えば子供用の防具ってキャッチャー用は一式300ドルだったろ。

 さすがにレガースやトゥーガードまでは必要無いから、それ以外だと200ドルだったんだけどな。

 これを205ドルで貸し出して、帰りに返却すると200ドル返って来るそうだ。


 それでもう子供たちは大喜びよ。


 種類についても、ジョーの防具と同じ厳ついデザインの物からギガンテスのマスコットのアザラシをデフォルメしたものまでたくさん用意されてたし、まあ5ドルの出費だからみんな気軽に借りてくし。

 大人用のメットにはモヒカン型の毛も生えてるものもあるしな。


 それでも、俺も最初はおひとりさま5ドルの儲けだから大したこと無いと思ってたんだけどさ。

 帰りに子供たちが防具を返すのイヤだって泣き始めるんだ。

 それで父ちゃん母ちゃんは、仕方なく球場内ショップで新品の防具一式を買わされるハメになるわけよ。

 メットだけだったら50ドルだし。


 ま、まあホームベース裏席やベンチ上席は100ドル(当時≒1万8000円)以上するし、そんな席に家族連れで来てるようなカネ持ち連中だから、苦笑しながらもバンバン買ってくんだ。


 やるな上野……



 もちろんそのうち他の席でも貸し出しが始まったんだけど、やっぱり子供用と女性用がよく出て行くそうだ。


 そしたらMLBの他の球団からも出店要請が来るようになっちゃったんだ。


 どこの球場もグラウンドと観客席を隔てるネットを作ろうとすると、試合を見に来るファンに反対されるそうだからな。

 まあ、ファウルボールはファンサービスで客が持って帰っていいことになってたからだろうけど。


 でも各球団とも客の打球事故に頭を痛めてたそうなんだ。


 それで女性客や子供があの防具つけてくれたら安心なもんで、大喜びで上野たちに依頼して来たんだよ。

 もちろん塗装やデザインはその球団のカラーやマスコットを使ったもので。

 その代わりにデザイン使用料を大幅に割り引いてくれたそうだ。

 因みに女性用のボディプロテクターは、とんでもない巨乳風の物が一番人気だったらしいぞ……



 おかげでサクラメント・プロテクターの防具はバカ売れよ。

 それで各地から球場ショップだけじゃなくって、一般販売もしてくれって要請が続々と舞い込むようになったんだ。

 もちろん渋谷物産は各都市のスポーツショップ経由で大量に売り始めてたよ。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 めーちゃんの出産予定日まであと1月ほどになった或る日、俺はいつものように試合後に自宅に転移した。


 そうそう、どうやら俺たちの子は男女の双子らしい。

 めーちゃんが男の子も女の子も早く欲しかったんで、そういうふうに妊娠したそうだ。

 ま、まあ、さすがに女神さまだよな……



「あなたさま、よろしければお腹に手を当てて頂けませんでしょうか♡」


 それで俺はもうかなり大きくなってきてるめーちゃんのお腹に手を当てたんだ。

 そしたら頭ん中になんか声が聞こえて来たんだよ。



(……だれ?……)

(もちかちたら、ぱぱしゃん?)


 うおい! もう念話出来るんかい!


(わーい、やっぱりぱぱしゃんだ!)

(はじめまちて、わたちぱぱしゃんのむちゅめでしゅ)


(や、やあ、おまえたち。元気に育ってるか?)


(うん、げんきだよ)

(もうしゅぐぱぱしゃんにあえるのね♪)

(たのちみだなー)

(はやくぱぱしゃんがかつやくしてるのみたいな♪)


(ああ、もうすぐ会えるな。パパもすっごく楽しみだよ)


(( えへへへへ♡ ))



「な、なあ、めーちゃん、さすがはこの子たち女神さまの子だけあるよな……」


「うふふ、勇者さまの子でもありますから♡」


「ああ、でもさ、同じ時期に上野たちの子も生まれるだろ。

 この子たち見て渋谷が驚いたりしないようにしてやってくれないかな……」


「もちろんですよ。

 そのために、今のうちからこの子たちに普通の赤ちゃんとの違いを教えてあげていますから」


「そ、そうか、さすがはめーちゃん」


「まずはわたくしたち以外との念話はしないこと。

 それから他の人がいるところでは飛ばないことですね♪」


(飛べるんかい……)




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 エコー検査の結果、どうやら上野たちの子は男の子らしい。


 おかげで渋谷家は大騒ぎよ。

 なにしろ渋谷一族60年ぶりの直系男子誕生だそうだからな。


 それでみんなで渋谷涼子に日本に帰って来ないかって言ったそうなんだけど、渋谷は上野と離れたくないって言ってサクラメントで生むそうだ。

 それにそうすれば子供はアメリカ国籍も貰えるしな。


 そしたらさー、祖父じいちゃん祖母ばあちゃんと父ちゃん母ちゃんもサクラメントに来るって言うんだわ。

 神保さんに長期休暇と特別ボーナスを貰った上野のお袋さんもだ。


 でもサクラメントのホテルとかに泊めるのもなんだから、俺たちの家のあと5部屋ばかりを貸してやることになったんだけど、もーみんな舞い上がっちゃっててタイヘンだったわー。


 ついでに丁重に頭下げて俺の筋トレを見学させてくれって言うんでOKしたんだけどさ。

 俺がベンプレで320キロ8回挙げたらタイヘンよ。

 渋谷の母ちゃんと祖母ばあちゃんは鼻血ダバダバ流すし、父ちゃんと祖父じいちゃんの方は涙ダバダバ流してるし……


 聞いてた通りヘンな一族だな……



 でもさぁ、いくらなんでも会長と社長が2人とも本社を留守にしてるって問題あるんじゃないかって心配してたんだ。


 そしたら、サクラメントの中心街にオフィス借りて、『渋谷物産臨時総本部』とかいうもんを作っちまったんだと。

 それで祖父じいちゃんと父ちゃんが交代でそこに詰めてるんだよ。


 なんともまあ臨機応変な会社だわー。





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