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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第2章 高校野球篇
10/157

*** 10 本格的トレーニング開始 *** 


この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……





 それから俺は、カルく受験勉強を始めながら受験する高校の選択について考えていたんだ。


(まあ、私立は論外だな。

 ウチはビンボーだし、学費の高い私立に行くなんていうことは、ウチの親には想像もつかない暴挙だろうし。

 それじゃあ、選択肢は国立大学の付属高校2校と、都立高校か。

 よし、今度偵察に行ってみよう)


 国立大付属のうち1校にはそもそも野球部が無かったよ。

 そしてもう1校は……

 なんか部室の中からジャラジャラと音が聞こえてるんだ。

 時折、「ロン!」とか「ぎゃー」とか声も聞こえてるし。


 麻雀かよ…… これじゃあだめだな。

 ということは、残された選択肢は都立高校しかないか……

 でも……)


 そう、当時の都立高校の受験はグループ制だったんだ。

 俺の住んでる地域は第1学区だから、第11群とか第12群とかを受けて、そうして例えば11群に受かると、その後の抽選で11群に属する3校のうちどれかに抽選で割り振られるんだよ。


 それで俺は3校とも野球部の練習を見に行ったんだ。

 うん、どの高校もそれなりに真面目に練習してるわ。

 もちろん実力はあんまり大したことないけど。



 俺の内申点は満点だった。

 ということは、都立校の入試では英国数の3教科300点満点で180点取れば合格か。

 それで俺、過去5年間の入試の過去問を解いてみたんだけど、全問正解だったんだ。


 けっこう勉強して来た甲斐があったってぇことか。

 それじゃあこのまま2月になるまでは野球の練習に集中しよう。




 俺は神保さんが作ってくれた異空間の中で本格的に練習を始めた。


 まずは筋トレからか。

 なにしろこの2年間のマラソン練習で全身の筋力ガタ落ちだからなぁ。


 

 この時代の野球指導者たちって配下の選手たちにヤタラに長距離走やらせてたんだよ。

『足腰や根性を鍛えるためだ!』って言って。

 でもさ、どうやら誰も筋肉には速筋と遅筋があることや、持久力にも心肺持久力と筋持久力があることを知らなかったようなんだ。

 まあ典型的な無知無能指導者だよな。


 俺なんかマラソントレーニングやりまくってたせいで、速筋なんかほとんど無くなってるし、おかげで筋瞬発力なんか3割近くも落ちてるし。

 体重も中1のときに50キロあったのが45キロに減っちまってるし。


 しかもさ、身長も中1で170センチあったのが、中3の夏で175センチまでにしか伸びて無かったんだよ。

 これちょっとヘンだったんだ。

 だって神保さんによれば俺の身長って高校入学時には180センチ超えてるはずだったのに。



「ご安心ください勇者さま」


「あ、神保さん」


「ここ2年間の勇者さまのトレーニングとその間の生体内代謝を解析させていただいておりましたが、どうやらマラソントレーニングの際にカルシウムを大量に消費されていたせいで、身長の伸びが抑制されていたようでございます」


「そうだったんですか……」


「まあ、少年時代からマラソントレーニングを行っていたような一流ランナーたちに、長身の選手はほとんどいませんからね」


「そういえばそうでした……」


「ですがこれからは、長距離走を抑制されて筋トレと野球トレーニングに注力され、カルシウムや各種アミノ酸、ビタミンなどの摂取を充分に行えば、すぐに身長も伸びて行くことと思われます」


「なるほど、それじゃあ今から野球のためのトレーニングに集中しますか……」




 それからはまず、俺はゲオくんに教わったトレーニング方法や、スポーツ医学の論文誌に載っていたトレーニング方法を実地に試してみていたんだ。



 おお、確かに腕立て伏せ500回やっても筋繊維はあんまり太くなってないわ。

 それどころか、多くの筋繊維が断裂してるけど、切れてない繊維がむしろ細くなってる……


 お、論文に書いてあった通り、筋繊維は3日後にはかなり修復されてる。

 でも…… 太さの増加率はたったの0.3%か……

 じゃあ腕立て1000回だとどうなるかな?

 あー、3日後の太さがマイナス0.1%かぁ。

「筋肉は使えば使うほど強くなる。だが使いすぎると逆に衰えてしまう」っていうのは本当だったんだなあ。


 それじゃあベンチプレスで実験してみるか。

 今の俺が8回挙げられる最大重量は……120キロだな。

 これを2セットやってと。

 それじゃあ3日後にはどうなってるかな?


 あ、0.8%も太くなってる!

 それから3日経っても0.4%増加のままだ!

 うん、この「筋トレは6~8回挙げられる最大重量で、3日おきに行うのが最も効率的」っていう理論は大正解だよ。

 さすがは西ドイツの論文誌だ。


 それじゃあ念のため、「3日おきに最大重量ベンチプレス8回2セット1か月」と「毎日腕立て伏せ1000回1か月」をやってみて、筋繊維の太さ増大幅を比べてみるか。


 あー、これ全然違うわー。

 ベンプレの方が3倍ぐらい太くなってるわー。

 トレーニング時間も全然違うし、圧倒的にベンプレ優位だな。



 次のテストは、筋トレ後20分以内にタンパク質を十分補給したときとそうでないときの違いか。

 今までの実験ではタンパク質の補給はしてなかったから、今度はベンチプレスの後にたっぷりプロテインを補給してみよう。


 3日後の変化は……

 うおっ!

 筋繊維が平均1%も太くなってる!

 さらに3日経っても0.7%を維持してるわ。

 うーん、「筋トレはトレーニング3割、食事7割」っていうのも本当だったか……


 次はアイシングを試してみよう。

 えーっと、トレーニングで疲労した筋肉を氷の温度で15分冷やして、それから15分間を空けて、それからまた15分冷やすんだな。

 おおっ、さらに筋繊維が太くなってる!

「疲労した筋肉が氷温で冷やされると、慌てた脳がその筋肉に回復のための回復物質を集中させるから」っていうのも本当だわ。

 翌日の筋肉痛も大幅に軽減されてるし。


 それじゃあ30分冷やしたらどうなるかな?

 あっ! 皮膚がシモヤケになっちゃった!

 これカイーよぉ。

 仕方ない、『キュア(超勇者級)』。

 ふー治ったか。

 やっぱり論文誌に書いてあった15分~20分っていうのが正解なんだなぁ。


 次はクエン酸補給を試してみるか。

 トレーニング後にクエン酸を補給した時としなかったとき。

 あー、翌朝の筋肉内の疲労物質の量が3倍も違うわー。

 これもすっげぇ効果だわー。


 でもさ、アイシングやクエン酸補給って、「筋肉痛にならなくて嬉しい」っていう手法じゃないよな。

「筋肉痛にならないようにしてやったんだから、その分他のトレーニングをきっちりやれよ!」っていうことなんだろう。



 次は、運動の途中で水分と塩分を補給したときとそうでないときを比較してみよう。

 俺、市ヶ谷先生の指導で、練習中でもいつも5キロごとに水分塩分摂ってたんだ。

 それじゃあ今日は、キロ3分のペースで補給無しで30キロ走ってみるか。


 あー、ヤバいよこれ。

 今日の気温が高いこともあって、10キロでもう気が遠くなってきたわー。

 15キロで…… 景色が歪んで来た……

 20キロで…… も、もう限界だ。3分のペースどころかもう走れん……


 はぁはぁ。

 そうか、やっぱり水分と塩分の補給って、超大切だったんだ……

 これも論文通りだわー。




 というように、俺は俺自身の体を使って、最新トレーニング理論の実証実験を続けて行ったんだ。


 それにしても……

 足の筋トレ真面目にやったら、100メートル走がどんどん速くなって来てるよ。

 今日なんか自己新の10秒50が出たもんなぁ。

 やっぱり筋トレは必須だな……

 長距離走2時間なんかよりずっと効果的だわ。

 なにしろ今までマラソン練習で2万キロ以上走ってた俺が、ちょっと筋トレしただけで100メートルのタイムを0.28秒も縮めたんだから。





 それから俺は、神保さん配下の天使さんたちに頭を下げて、2010年から2030年にかけてのMLBのピッチャーたちが投げている様子を、『隠蔽』を使って至近距離から『録画』の魔法で記録して来てもらったんだ。


 その録画を『ウルトラスーパースロー魔法(超勇者級)』で再生すると、球の握り、リリースの時の指の動き、球の回転、球の変化の様子なんかがばっちりわかるんだ。



 ほほー、これがジャイロボールか。

 なるほど球の回転軸が進行方向に向いてるんだな。

 あ、でも回転軸が進行方向から少しでもズレると変化が変わるんか。

 それじゃあ球の周囲の空気の流れを見てみるか。

 あー、なるほどね、これ確か『マグヌス効果』っていうんだよな。

 このマグヌス効果と重力が合成されて、こんな変化になってるのか。

 なるほどなるほど。

 さらに握りがツーシームかフォーシームかでもけっこう違うもんなんだな。


 それから、カットファストボールの握りはこれ、リリースの瞬間はこうか。

 そしてスライダーはこんな感じか。


 あれ?

 ナックルボールって変化のパターンがいっぱいあるぞ?

 この球は右に曲がり落ちてるだけだし、こっちの球は左に曲がり落ちてるだけだ。

 あ、でもこの球は右に曲がってから左に曲がってる……

 うーん、なんでこんなに違うんだ?

 あ、そうか。

 握りの形とそのときのボールの縫い目か……

 それからベースまでに僅かに回転するボールの回転数か……

 それじゃあたくさんあるけど分類してみよう。

 お、この縫い目のここに指をかけて、ボールが半回転するように投げるとこんな変化をするんか……


 じゃあ次はシンカーはと。

 あー、このピッチャーの指の力すごいわぁ。

 僅かだけどリリースの瞬間にボールが変形しとるぞ。

 おお、フォーク投げるときの指の形もけっこうすごいなぁ。

 ま、カーブは常識的な形か。


 でもこれも、握力が強いほど変化が大きそうだな。

 これはチェンジアップやナックル以外はみんなおんなじか。

 これは俺ももう少し握力つけた方がいいな。

 今両手とも120キロぐらいだけど、150キロに上げておこう……




 次はそれを俺自身の手で再現する練習だ。

 しばらくの間毎日1000球投げ続けて、俺は21世紀の全ての変化球を会得して行ったんだ。


 それでちょっと不思議だったんだけどさ。

 例えばカーブ練習してたとするだろ。

 もちろん最初のうちはコントロールとか最悪なんだよ。

 投げ出し方向も曲がり幅もむちゃくちゃだし。


 でもさ、投球回数が5000回超えた辺りから、何故かコントロールが安定し始めるんだ。

 なんでだろうな?

 やっぱり変化球にも慣れってあるんか?


 それで俺、ホームベースの辺りに縦横3メートルぐらいの大きな板を立てて、そこにストライクゾーンも含めて10センチ四方のマス目を書いたんだ。

 ストライクゾーンの高低の設定は選手の身長170センチ、180センチ、190センチって用意して。

 そうしてそれを目掛けて変化球を投げ込むと、球の投げ出しと変化の様子がよくわかって実に面白いんだよ。


 それで楽しくなっちゃって、毎日5000球も投げちゃったんだ。

 右で3000球、左で2000球な。

 まあさすがに1000球投げるごとに、自分に『キュア(超勇者級)』かけてたけどさ。


 そうそう、キャッチャーは置かない代わりに、天使さんたちが10人ぐらいいて球拾いしてくれたんだ。

 俺の練習に毎日付き合わせちゃってごめんね、って言ったら全員とんでもないってブンブン首振ってたわ。

 どうやら、俺のお手伝いって相当に名誉なお仕事らしいんだ。

 それでみんなに羨ましがられてるそうで、毎日交代で何人か入れ替わってたよ。


 そんなふうに毎日投げ込んでると、1つの球種につき投球回数が2万回を超えた辺りから、コントロールが抜群に安定し始めるんだ。

 そうするとますます面白くなっていくんだぜ。


 

 ん?

 そんな毎日5000球も投げてて辛くないのかって?

 なに言ってるんだよ。俺、今自分の夢を楽しんでるんだぞ。

 毎日5000人殺してた時の方がよっぽど苦しかったわ。


 そんな練習を半年も続けて、気が付いたら100万球近く投げてたよ。

 8種類の変化球につき、それぞれ12万球ぐらいか。


 そしたらストレートの球速も時速158キロまで上がってたし、もう言うこと無いよなぁ。



 んん?

 よくそんな練習する時間があったなって?

 あー、中学から帰って来るのは4時頃だろ。

 それから毎日神保さんの家に行くんだよ。

 家には神保さんにメシも喰わせて貰えるからって言って。


 それから5000球の投球練習するけど、そんなもん7時間もあれば終わるだろ。

 1時間かけてバッティング練習して筋トレも1時間して。

 その後夜中の1時から自分に『完全睡眠(超勇者級)』の魔法をかけて3時間熟睡するんだわ。

 寝ないと筋肉が育たないからな。

 休日はこのサイクルを2セットも出来るし。

 

 

 あ、でもこれ毎日5000球とか言ったらマズイかも……

 誰かに聞かれたら、『毎日500球投げてたらこんなん投げられるようになりましたー♪』って言っておくか……



 それにしてもあれだな、握力が上がるにつれて球の変化がどんどん鋭くなっていくな。

 そうか、ピッチャーにとって大事なのは、肩の力に加えて握力だったんか。

 後は手首を捻るための前腕二頭筋だな。


 


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 俺は高校入試に無事合格した。

 両親は最後まで執拗に就職を勧めていたが、神保社長の一声で俺の高校進学を認めざるを得なくなったようだ。

 まあ、「就職したらお給料はお母さんが預かっておいてあげるから♪」とも言ってたから、自分たちの小遣いを増やすために言ってたんだろうけど。



 抽選の結果、俺の進学先は「都立日比山高校」。

 都心部にあるかなりの伝統校だ。


 入学式を終えた俺は、喜び勇んで野球部に入部届を出し、翌日は校庭での練習に参加した。

 因みに野球部の練習は火曜と木曜と日曜だけだ。

 日曜日には多摩川の河川敷にあるグラウンドでの練習になるが、グラウンドはサッカー部との共用であるために、土曜日は使えない。

 そのせいでマウンドすら無いんだぜ。

 まあ、でもそんなことはおいおい解決していこう。

 俺はついに「野球部」に入れたことに感激していたんだ……



 だけど、まさかあんな障害があるとは、そのときまでは思ってもいなかったよ。


 校庭にはジャージを着たデブがいたんだ。

 倫理心偏差値マイナス10、向上心偏差値0、自己中偏差値82……

 なんだこいつ?


 そうか、俺が受験前に偵察に来た時にはたまたまいなかったのか……



「おい1年生っ!

 俺は野球部OBの鶯谷だっ!

 1年前からコーチとして野球部を指導している!

 俺の指導方法について来られれば、必ずお前たちを強くしてやろう!

 それでは1年生前に出ろっ!」


 ばらばらと30人ほどの1年生が前に出た。

 15人ほどの2年生と、同じく15人ほどの3年生が後ろにいる。


 まあ、この時期の野球人気ってすごかったんだよ。

 プロ選手がいるのもテレビ中継があるのも野球ぐらいなもんだったし。

 だからこんなに入部希望者がいるんだな。


 21世紀に大人気の箱根駅伝だって、当時のテレビ中継は1~4区だけとか、中には復路の中継無しなんていう地域もあったんだぜ。



「中学時代野球部だったやつは3歩前に出ろ!」


 25人が前に出た。

 俺は動かない。

 野球の練習はたっぷりやっていたが、ウチの中学には野球部が無かったからな。


「よーし、全員名前と中学時代のポジションを言えっ!」


 みんながそれぞれに自己紹介している。


「それじゃあ後ろの5人、名前と中学時代にやっていたスポーツ名を言えっ!」


(どうでもいいけど、このデブ怒鳴りながらじゃないと喋れないのかよ……)



 俺の番になった。


「神田勇樹です。中学時代は長距離走をやっていました」


 途端にデブが嫌らしそうな笑いを浮かべた。


「そうか、お前確かモントリオールオリンピックのマラソンで金メダル取ってた神田だな。

 どっかで見たことのあるツラだと思ったわ」


「はぁ」


 俺のことを知らなかった部員たちから驚きの声が上がる。


「ま、マジかよ……」

「金メダリストかよ……」



 デブはさらに嫌らしく笑った。

 まあ笑ったというより醜い顔を歪めただけに見えるけど。


「よーし、それじゃあ俺がお前にみっちりと野球を教えてやろうじゃねえか!」


 あ、こいつあれだ、中学時代の「自称番長」と同じだ……

 有名人の俺をシメることで、自分の株をあげる事しか考えてないわ……


「それじゃあまずはお前たちの根性を叩きなおしてやるっ!

 まずは全員うさぎ跳びで校庭10周だ!」


(馬鹿だ! こいつマジモンの馬鹿だ!

 仕方ない、ちいっと意見してやるか)


「あのーせんぱぁーい、うさぎ跳びは最悪の鍛錬方法ですよー。

 校庭10周なんかしたら、それだけでみんな膝壊すか肉離れになりますよー」


「なんだと神田っ!

 手前ぇ新入生の分際で、先輩でありコーチでもある俺に逆らおうってぇのかっ!」


「単に無謀で意味のない練習で、部員のみんなが膝を壊して野球が出来なくなるのが気の毒でー」


「それが逆らってるってぇことなんだよっ!」


「そうとも言えますねー♪」


「うるせえっ! 文句言ってねぇで早くやれっ!」


「せめて準備体操してからじゃないと、マズイんじゃないっすかー」


「ぐぐぐぐ、神田っ! お前だけ20周だっ!」


「へいへい」



 それでみんなうさぎ跳び始めたんだけどさ、可愛そうに1年生なんか最近まで勉強しかやってなかったもんで、半周もしないうちからもうへろへろよ。

 さすが2年3年は1周まではなんとかなったけど、でもそれからはやっぱりへろへろで、1回跳ぶのに10秒ぐらいかかってるんだ。

 それでも俺だけは「ほいっ♪」とか「よっ♪」とか言いながらスイスイ進んでたけどな。

 ま、まあ『身体強化Lv1』使ってたけど……

 ほ、ほら、こんなところで膝壊したくなかったし……



「せんぱーい、20周終わりましたけどー」


「な、なんだとこの野郎っ!」


「だから20周終わったって言ったんすよぉ」


「ほ、ほらみろ! うさぎ跳びやってもなんともないじゃねぇかっ!」


「そんなに大きな声出さなくっても聞こえてますよー」


「な、なんだとぉっ!!!」


「あー、俺だから大丈夫だったんスよ。

 でも他のみんなはヤバそうですね。

 可哀そうに、もう半分近くは肉離れ起こしてますよ」


「ぐぎぎぎぎ……」


「それで俺は何すればいいんですかー?」


「ぜ、全員10周終わるまで腕立て伏せしてろっ!」


「うぃ~っす♪」


 それで俺、ずっと腕立て伏せよ。

 1時間以上もやってたぜ。

 「ほっ♪」とか「はっ♪」とか言いながら元気よく。


 馬鹿コーチは時折俺を気味悪そうに見ていたが、それでも相当にムカついてたようだな。

 こいつは単に自分の命令で他人が苦しむのを見て喜んでるだけなんだろう。

 それだけで自分がエラくなったように思えるのが嬉しいんだろうな。

 それにしても、どうしてここまでアフォ~な奴を野放しにしてるんだろうねぇ……









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