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【転生勇者の野球魂】  作者: 池上雅
第1章 転生~中学生篇
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*** 1 再転生 ***


性懲りもなくまた書きたくなりました。

お暇なときにお読みいただければ幸いです。


【大幅加筆訂正済】


また、この物語はフィクションであります。

実在する人物や組織に類似する名称が登場したとしても、それはたぶん偶然でありましょう……



 


 俺は荒涼とした大地に横たわっていた。


 周囲には生命の欠片も無く、無数のクレーターとその底で煮え滾る溶岩、そしてガラス化した地表が広がっている。


「……敵性反応…… ゼロ…… ようやく勝てたか……」


 俺は自分の体を見下ろした。

 体の左側はほとんど炭化している。

 左腕はもちろん、左足も膝から先は炭になって戦闘中に燃え落ちていた。

 左目は高熱を浴びて破裂し、内臓も左半分はホルモン焼きになっている。


(これでよくも生きていられるもんだ……)



 俺がこんな状態でも生きていられるのはもちろん魔法のおかげだ。

 だがMP最大値8ケタを誇る俺の魔力も残りは僅かに50。

 それが今、苦痛を遮断するためと生命を維持するために使用されて、刻々と減っている。

 もう、『キュア(超勇者級)』を使うMPも残ってねぇし、エリクサーも全部使っちまってるし……


 この状態だと……

 俺の命もあと30分ほどか……

 まあ仕方ないわ。

 あれだけの侵略者どもを殲滅して、この世界を守ることが出来たんだからな。

 その代償が俺の命なら安いもんだ。


 俺は心安らかに周囲を見渡しながら最後の刻を待っていた。



(勇者よ…… いや神田勇樹かんだゆうきよ……)


 俺の頭の中に久しぶりに聞く声が響いた。


「ああ神さん、お久しぶり」


(よくぞ…… よくぞあの異次元からの侵略者共を退けてくれた……

 80個師団、80万体に及ぶあの悪魔のような者共と、たったひとりで30年も戦い続けて……)


「はは、まあ我ながらよくやったかな」


(お前のおかげでこの世界は救われた。

 地球の友神ゆうじんに頼んでお前を転生させて本当によかったと思う)


「まあ俺も神さんには感謝しているよ。

 俺はあのままだと地球で死んでいたわけだし、こっちの世界に来て努力して強くなっていったのは楽しかったしな」



(その努力によってこの世界1500万の人類が救われた)


「そうか…… 500万人も死んじまったのか……」


(そうだ。実に悼ましいことではあるが、だが生命は強かだ。

 このままあと100年もすれば、この世界の人口も元通りになるだろう)


「でも再度あいつらが侵略して来たらどうするんだ?

 またどっかから勇者候補を引っ張って来るのか?」


(いや……

 お前は侵略者の全戦力の90%を滅ぼしてくれた。

 当初は10%も派兵すればこの世界を手に入れられると考えていたようだが、お前の力を見て戦力を逐次投入し、ついにはお前の言葉で言う予備役だけになったそうだ。

 加えて皇位継承権を持つ皇子、皇女も全て滅ぼしてくれたからな。

 高齢の皇帝が死を迎えつつある今、あ奴らの世界では大規模な内戦が勃発しておる。

 当面は侵略の危機は無かろう。

 また、今回の戦争を反省し、神界は奴らの世界を最重点監視世界に指定して次元境界を完全に封鎖した。

 もはや他世界への侵略など出来まいの)


「それを聞いて安心したわ。

 これで心置きなく逝くことが出来る」


(そこでわたしの深甚なる感謝の証として、お前に礼がしたいのだ。

 私に出来ることであれば望みは全て叶えよう)


「おいおい神さん。

 俺はあと20分ほどの命だぜ。

 この体では、MPが切れたら即死だろう。

 こうして救えた世界を眺めながら逝ければそれで十分だ。

 あ、出来ればその前に美しい自然が残っている場所に転移させてくれないか?

 今、自分で転移魔法なんか使ったらMP枯渇して即死だわ」



 途端に俺は小高い山の斜面にいた。

 眼下には美しい湖と大森林が見える。

 遠くには森の中に小さな村もあり、炊煙も上がっていた。


(嗚呼、まだこんな平和な地域もあったんだな……

 俺はこの風景を守れたのか……)


 残された俺の右目から涙が零れ落ちた。


 地球では10歳で病死、この世界に転生して50年。

 まあ悪くない人生だったわ……


(勇者よ……)


「なんだ神さん、まだいてくれたのか」


(お前への恩義は計り知れん。他に望みは無いのか?)


「ああ、これで十分だ」


(もう一度転生させてやることも出来るぞ)


「なに?」


(お前の好きな世界、お前の好きな年齢、なんでも構わん。

 今の能力もそのままでよろしい。

 お前の前世で言う『強くてニューゲーム』も可能だ)


「なんだ、今の地球にはそんな言葉があるのか。

 まあなんとなく意味はわかるが」


(それでどうする?

 この世界の赤子に転生するか?

 それとも前世の地球に戻るか?)


「そういうことなら、前世地球で俺が3歳のときに転生させて欲しいかな。

 生まれたばかりだとしばらくヒマすぎるだろうし」


(なにかやりたかったことでもあるのか?)


「はは、戦闘の合間に時間が空いたとき、ふと考えていたことがあったんだよ。

 もし前世に戻れたら、俺は何がしたかったんだろう、って」


(ふむ、何がしたかったのだ?)


「1つ目は野球をやってみたかったんだ」


(野球…… 変わった競技だな。

 攻撃する側が1人を除いて全員座っているとは)


「はは、確かにそうだ。

 それから2つ目は、ちょっと恥ずかしいんだけど勉強っていうものをしてみたかったんだよ」


(ほう)


「なにしろ俺は10歳のときにこの戦いの世界に放り込まれたからさ。

 今の俺は最低限の字が書けるだけだし、計算も掛け算がやっとだ。

 本っていうものももっと読んでみたかったし。

 それにあの『科学』っていうのも面白そうだしなあ。

 まあ転生さえさせてくれれば、後は自分で努力するよ」


(はは、『身体強化Lv9999』と『完全記憶Lv9999』を持つお前ならばたやすかろう)


「うーん、なるべく魔法は使わないようにするつもりだけど……」


(だがお前の今のその能力も、お前自身の努力によって得たものだ。

 故に魔法を使っても構わないのではないか?)


「まあその辺りは自分で考えてみるさ。

 あ、それから出来れば、俺が1971年に死んでから今現在までに地球で起きたことを、ざっとでいいから教えて欲しいんだが……」


(よかろう、地球の神に依頼しておく)


「お、MPが残り1になった……

 そろそろ逝くわ」


(それではまた会おう、勇者よ……)


 また会えるのか?

 そんなことを思いながら、MPがゼロになった俺は即死したんだ……




 俺が目を覚ましたのは白い部屋だった。

 いや、床と家具があるだけで壁は無いんだけど。


 そして、そこにはとんでもない美人がいたんだ。

 長い金髪に金色がかった青い瞳。

 肌なんか真っ白だしな。

 体形は……

 ま、まあスレンダーながら凄まじい胸部装甲を持っているとだけ言っておこうか……



「地球出身の異世界の勇者よ。本当にお疲れさまでした……」


「あなたは?」


「わたくしは地球の担当女神です」


(さすがは女神さまだ、神々しいまでの美しさだわ……)


「あなたが守った世界の担当神とは友神ゆうじんになります。

 あなたには出来るだけの便宜を図るよう、彼から頼まれています」


「いいんですか?」


 女神さまは優しく微笑んだ。


(か、可愛い……)


「ひとつの世界を救った勇者ともなれば、神の世界でも勇者と呼ばれます。

 わたくしの管轄する世界からそのような勇者が育ったことは、わたくしにとっても大変に名誉なことなのです。

 そしてあなたはその功績によって第3の生を与えられました。

 わたくしがあなたに便宜を図るのは当然です」


「あー、ところでこの第3の生でも何か任務とかあるんでしょうか?」


「基本的には何もありません。

 ごく稀にわたくしや前の世界の神から依頼事項があるかもしれませんが、それも強制ではなく任意です」


(果たして断ることが出来るんだろうか……

 でもまあ俺が出来ることならかまわんか……)



「まずはここ神界でしばらくご養生して戦いの疲れを癒して下さいませ。

 そして、十分な時間をかけて転生へのご準備をして頂きたいと思います。

 何年かかっても構いません」



 その場に初老の男性が現れた。


「この者はあなた専属の大天使です。

 ここ神界と地球であなたのお世話をさせて頂く担当者になります」


(うーん、大天使さんか……

 そう言われてみれば、このひとすっげぇ貫禄だわ。

 むちゃくちゃ知的に見えるし……)



 男は丁寧に一礼した。


「勇者さま。地球名神保と申す大天使でございます。

 以後よろしくお願い申し上げます。

 また、何かご要望があれば頭で念じて下さいませ。

 そのまま念話でお返事も出来ますし、すぐにお傍に参上することも出来ます」


「ありがとうございます。

 でも他の仕事がお忙しいときは言って下さいね」


 男は微笑んだ。


「わたくしの仕事は、全てあなたさまのサポートをさせて頂くことでございます。

 他の仕事はございません。

 また、かなりの数の天使や天使見習いも配下におりますので、お役に立てるかと存じます」


「そ、それはどうもありがとうございます……」



「それでは勇者勇樹よ。

 あなたの活躍を楽しみにしておりますよ……」


「女神さまもどうもありがとうございます……」



 そうして俺は、その部屋で地球への再転生の準備を始めたんだ。


 まずは現在のレベルチェックをしたいんだが……

 ここでも魔法は使えるのかな?

 取敢えずやってみよう、【自己鑑定】。


 神田勇樹

 称号:地球出身の勇者

 年齢 歴年齢60(精神年齢35、肉体年齢31)

 総合レベル: 16875

 HP:  1508510

 MP: 23485470


 体力:    11056

 総合攻撃力: 45032

 肉体攻撃力: 12511

 魔法能力:  32521

 知力:      125

 知識:        3



 あれ?

 HPやMPはともかく、総合レベルが16875になってる……

 前の世界だと9999だったんだけど……

 ああそうか、あの世界だと表示が4ケタまでだったのか。

 これが実際の数字なんだな。


「神保さん」


「はい、勇者さま」


「今自分を鑑定してみたんですけど、この数字って地球でも同じ表示ですか?」


「それは勇者さまの御心のままに……」


「はぁ、わかりました。それじゃあこのままで」


「畏まりました。

 ところで勇者さま。お食事は如何いたしましょうか。

 それともお休みになられますか?」


「あの、ここには風呂はあるんでしょうか……」


「もちろんございますとも。

 勇者さま用に既に作り終えてございます」


「そ、それはどうもありがとうございます。

 それでは先に風呂に入って、そのあと食事を頂いてもよろしいですか?」


「畏まりました」



 それで俺は、ゆっくり風呂に入って、30年間の死闘の垢を落としたんだ。


(それにしても凄い風呂だわ。

 まさに天上の湯だよ。なんかお湯まで少し光ってるし……)



 風呂から上がって食卓に着くと、そこには豪勢な料理が並んでいた。


「す、凄い料理ですね…… この料理はどこで?」


「地球の各地から取り寄せました。

 何かお召上がりになりたいものがございましたら、ご遠慮なくお申し付け下さいませ」


「随分とお金を使わせてしまったようで、すみません」


 神保さんは微笑んだ。


「どうかお気遣い無きよう。

 神界の『勇者さま予算』は無制限でございます」


「えっ」


「あなたさまの偉大なご功績に比べれば些細なことでございますよ」


「あ、ありがとうございます……」



 それから俺は、素晴らしい食事を楽しみ、これも豪勢なベッドで熟睡したんだ。


(ああ、危険を意識せずにベッドで寝られるのは30年ぶりか……)







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