青い空
しばらくして彼女は口を開いた。
「フラれたってことだよね」
僕は口を開くが言葉が出てこない。伝えたいことがまだあるはずなのに。
「これまでどおり友達でいてね」
そう言って彼女は速足で自分の家のほうに歩いて行った。
僕は本当にこれで良かったのか、このままでいいのかずっと考えながら家まで歩いた。
彼女は強くて弱い。昔から彼女は人の悪意にさらされ続けた。優しすぎるがゆえに常にストレスのはけ口にされたのだ。
そのうち彼女の心は壊れてしまった。入退院を繰り返しながらも学校へ通い、しかし周りはそれに気付かなかった。
そんな時に自分の将来に悲観して自暴自棄になった僕とつるむようになった。受験一色の周りに嫌気がさしてその中でも遊んでくれそうな彼女を誘ったのだ。僕は毎週のように彼女を遊びに誘い時にはカラオケをして声が枯れるまで歌ったり、格闘ゲームを延々としたりとにかく子供のように遊びまわった。
僕にはそんなつもりは無かったがそんな日々が彼女を救っていたらしい。
のちに人伝に聞いたことだ。
そうして彼女は僕に好意を持った。彼女の中では僕はとても大きく映っていたんだろう。
勿論、実際の僕はとても気の小さい男で彼女の気持ちを受け止めることなど当時の僕にはできなかった。
今でもできるかどうかは怪しいが。
今思えば僕の人生でこんな甘酸っぱいようなそうでないような出来事はこの学生時代の出来事くらいだ。
僕は大人になってからも年を取っておじさんと呼ばれる今になっても女性とかかわる機会はそう多くない。
仕事上のやりとりで話すくらいだ。
そして独り身で休日にすることがない僕は隣町で行ったことのない場所へ行ってみようとふと思い立って電車に乗った。
寝過ごして降りるべき駅からはかなり遠くなってしまったそこは近くて遠い場所で今後来ることもないだろう。しかし僕をとても新鮮な気持ちにさせた。
知らない道しかないその町はとても大きく感じた。
子供のようにあたりを見回す僕は夢中で道を散策しているうちに夜になっていることに気付いた。
こんなになにかに夢中になったのはいつぶりだろうか。
帰り道で部活帰りなのか大きなバッグを持った女の子とすれ違った。中学校の制服を着ているがまだ大きいのか少し幼く見える。きっと今年中学生になったばかりなんだろう。
心なしか彼女に似ている気がする。
僕は寂しいような嬉しいような気持ちを抱きながら帰路に着いた。




