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幼稚園児は心配性 1 <広希>

清美と晶の息子、広希5歳視点です。

 さいきんオレは考える。


『ふうふ』って、なんだ。『ケッコン』ってなんだって。


 そして大人はなぜわすれてしまうのだろう?

 子どもはなにもわからないなんて、そんなハズないってことを。




「ちょっと聞いた?あの人図々しく、広希(ひろき)君パパに個人レッスン申し込んだんだって?!」

「ええ!もしかして本気で狙ってたりして。ホラ、あの人小林先生にも馴れ馴れしいし……」




 コバヤシ先生はようちえんの先生だ。そして先生の中でただ一人の男の先生でもある。


「ここだけの話なんだけど……あの人遙ちゃんパパにこっそり連絡先渡そうとしたらしいわよ」

「ひえ~!それ、何で分かったの?」

「遙ちゃんパパが無理矢理ポケットに入れられたって、遙かちゃんママに申告したんだって!」

「旦那さん賢いわ!痛い腹探られたくないもんね」

「でもそもそもそれ、突っ返してくれれば良かったのにね」

「いや、最初何を渡されたか分からなかったみたいよ?開けてみて吃驚!みたいな!」

「ねぇねぇ!で、結局どうなったのよ?……もしかしてあの人本当に広希君パパと二人っきりでレッスンしているの?」


 するとフフン!と、ハナで笑ってカズキくんママが言った。


「それが駄目だったみたいよ。スケジュール一杯って断られてた!」

「良かった~ぁ」

「抜け駆けよね?」

「ねぇ、それって実はていよく断られただけなんじゃない?」

「そうだと思う。だってグループレッスンの人数追加には応じてたもの」

「いいな~私も広希君パパのグループレッスン、申し込もうかな?」

「でもあと1名しか余裕ないわよ」

「曜日は?時間は何時から?」

「火曜日の……」




 そのヒロキくんパパの子どもがここにいるんだけど。

 ママたちはヒソヒソ話はじぶんたちにしかきこえていないって思いこんでいるらしい。でもけっこう足もとにいるオレたちにはきこえているんだ。……本とかあそびにムチュウなときは、きこえないけどね。


 ママたちの話をきくと、ムネのあたりがなんだかモヤモヤする。


 ……ハルカちゃんママはパパと二人きりになりたいのか。

それってパパのことが好きってことなのかな?でもハルカちゃんにはパパもいる。外国に行っていてめったにかえってこないって言ってたけど。

 ハルカちゃんパパとママは『ふうふ』なんだよね?ハルカちゃんママはハルカちゃんパパのこと、好きだから『ケッコン』したんだよね?なのにオレのパパのことが好きなの?それってどういうこと?ハルカちゃんパパも好きだし、オレのパパも好きってことなのかな?


 それにハルカちゃんママのことをうわさしているママたちも……オレのパパといっしょにいたいってことだよね。じゃあみんな、オレのパパのことが好きなのかな??


 パパはいつだってオレやエリやママといるのが一番たのしいって言う。それからじーちゃんとばーちゃんとみんなでゴハン食べるのもたのしいって。


 ここでうわさ話をしているママたちは……もしかしてそうじゃないのかな?かぞくでいっしょが一番たのしいって、おもわないのかな?




「広希ごめんね!お迎え遅くなっちゃった!」




 そこへオレのママがあわてたカンジでとび込んで来た。するとそれまでピーチクパーチクうわさ話をしていた『ママたち』のかたまりがピタリと口をとじてしまう。


「こんにちは」

「こ、こんにちは~」「「こんにちはぁ」」


 オレのママがあいさつするとパラパラと『ママたち』があいさつを返す。ママはあんまりこういう『ママたち』のかたまりに、まざらない。おしゃべりがニガテなんだって。

 すぐにクルリとオレの目の前にかがみこみ、ニコリと笑った。


「じゃあ広希、帰ろっか?」


 オレはコクリとうなずいた。するとママのうしろでコソコソ話をしていた『ママたち』のかたまりが、ゆっくりママにちかづいてきた。




 イヤなよかんがした。




 オレはとっさにママと『ママたち』のあいだにまわりこみ、キッとママたちをにらみつけたのだった……!

もう少し続きます。

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