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誰に似たの? <広希>

清美と晶の息子、広希5歳視点です。

 ようちえんのお友だちとあそぶより本をよんでいる方が楽しいって言ったら、みんな笑ってこう言うんだ。




「広希は晶に似たのかなぁ」

「でも足は速いわよね」

「……」

「性格が晶で、足は俺とか?」




 さいしょのセリフはじーちゃんで次がばーちゃん。それからだまったままのママと楽しそうなパパだ。


「にーちゃっ!ドーン!!キャハハハっ」

「ぐふっ」

「「「「あっ……!」」」


 そしてさいごにママのひざからジャンプでとびついてきたのが、いもうとのエリ。

 エリに飛びつかれたいきおいで、オレは後ろにバタンってたおれてしまった。それにエリのひじが目の下にあたってゴツッて言ったし、エリの足がおなかにめりこんだ……!


「う……うえぇえ」


 いたくておもわず、なみだが出た。

 いつもエリはこうだ。ことばより手や足がさきに出る。


「だ、大丈夫?!広希!」


 ママがあわててソファから立ち上がり、オレにかけよって来た。


「こら、エリ!駄目だろ!乱暴なことしたら」


 ヒョイっとパパがエリをかかえあげる。おこられて、ものすごく高いところにもち上げられたと言うのにエリはキャハキャハのんきに笑っている。




 あくまみたいだ、とおもった。




 また涙が出た。でもこれはいたいからじゃない、くやしいからだ。

 おにーちゃんなのに、いつもオレはエリに泣かされる。とってもカッコわるい。


 いままで家では泣いてもあたりまえだった。

 だってそれは『エリがらんぼう』だからだ。

 そんなときママはむしろ『エリの相手してくれてアリガトね。広希は偉いね』ってほめてくれる。だから、泣かされてもエリのあいてをするオレはえらいんだって思っていた。


 なのにようちえんのお友だちが言ったんだ。

 『ちっさいイモウトになかされてやんの!コーキはヨワムシだ!』って。


「何処が痛いの?」


 ママがオレの顔をのぞきこんだ。そのやさしい顔を見ていたら、オレはどうしようもなくなってしまってママのむねにしがみついて、ブンブンと首をふった。


「い、いたくない!」

「でも、泣いてるよ?」

「ちがうっ……これわっうくっ……その、『りふじん』だから!」

「え……」


 ママが目をみひらいてオレを見た。


「オレはらんぼうなエリにいたくされるのは!いやだけどおにいちゃんだからガンバッてるのに!みんな、なくのは『ヨワムシ』だっていうから!くやしいから!』

「広希……」


 するとそれを見ていたばーちゃんがポツリと言った。




「ヒロキだ」

「うん、広希はヒロキ似だね」




 するとじーちゃんがそう、つぶやいた。


 『ヒロキ』とはかーちゃんの、死んじゃったもう一人のじーちゃんの名前で、オレの名前はそのじーちゃんの名前をもらってつけたのだそうだ。


「理屈っぽい。難しい言葉、使いたがるし」

「負けず嫌いだし、理屈っぽい。足も速かった」


 それからばーちゃんとじーちゃんはフフッと笑いあい、顔を上げてパパとエリをみた。




「……けどエリは清美似だな」




 とじーちゃんが言うと、ばーちゃんがうなずいた。


「うん、清美そっくり。口より前に体が動くとこが」

「子ザルみたいで可愛いよな?」

「和美ったら、じじバカねぇ……でも言えてる。『コザルちゃん』って感じ』

「ちょっ……それ、俺が『親猿』だって言ってるの?!」


 じーちゃんとばーちゃんのやりとりに、パパがあわてて言いかえした。


「ぷっ……!」


 するとそれを見ていたママが、笑いだした。


「晶まで!」

「キャハハ!エリ、コザルだよ~!うっきっきー」


 するとパパの肩にかつがれたままのエリが、ふざけてサルのマネをしはじめた。


「ぷっアハハ!」


 オレもなんだかおかしくなって、笑ってしまった。


 しばらくしておなかがすいたので、みんなで『ハナマル』のかいてん寿司をたべに行くことになった。家族みんなでお話して笑いながら食べて、まわるおさらをむちゅうで見ていたら『りふじん』なこともいたいのも、ぜんぶ空の向こうにとんで行って、きえてしまったのだ。

お読みいただき有難うございました!


もう一話くらいあるかもしれません。

(が、やはり上手く書けなかったら、そっと『完結』表示に戻します…)

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