39.傍にいないひと <清美>
小4のとき、俺に新しい家族ができた。
俺のねーちゃんは人見知りで、無表情で、小柄で、たまに辛辣でそして―――とても優しくて仔猫みたいに可愛い人。
俺はそんなねーちゃんに恋をした。
仲良く過ごした小学生の頃。
意識して恥ずかしくて避けまくっていた中学前半。
勇気を出して距離を縮めた中学後半。
そして高校生になって。
やっとねーちゃんに思いを打ち明けて、幸運にも付き合える事になった。
だから、俺は大層浮かれていた。
浮かれ過ぎていて、考えるのを忘れていた。
俺達がこれからどうするのか、どうするべきかってコトを。
そしてお互いどうしたいのかって事について、もっと早く話し合えば良かった。
それとも早くても遅くても同じだっただろうか。
俺がしっかりしてさえいれば、ねーちゃんに悲しい想いや寂しい想いをさせずに済んだかもしれないと思うと、胸の奥が軋んで苦しくなる。
ねーちゃんが傍にいない。
それだけで現実感のない世界に置いてきぼりにされたような、いつまでも夢から醒めないままのような感覚が続いているのに。
あの時の俺は、これ以上辛い思いをしたくなくて、考える事を放棄していた。
現実に向かい合って、これ以上苦しい想いをしたく無かったから。




