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Xmasの贈り物  作者: 紅玉
9/16

3

「母さん、今日は顔を見に来ただけなんだ。こいつを無理矢理付き合わせちゃったから、そろそろ行くな。何か、来たばっかりなのにごめん」と、諒はすまなそうに笑った。

「いいのよ。スノーマンさん、今日は来てくれてありがとうございます」

「いえ、いえ、なんの、なんの」

「じゃあ」

諒はスノーマンの手を引っ張りながら、急いで病院から出た。

「な、何だよ!そんなにオレを母親に会わせたくなかったのか?!」と、引きずられるようにして出て来たスノーマンは、顔を歪める。

「違う。自分の体を見ろ!」

「ん?」

目線を落とす。体から雫がポタポタと流れ落ちている。

「と、溶けてるーっ!!!」

スノーマンは急いで雪が寄せ集めてあった所へ駆け、せっせと雪を体に塗りたくった。

「病院は、暖かくしてあるからな」と、諒はスノーマンの必死な様子を見つめながら言う。

「死ぬーっ!オレ死んじゃうよー」

スノーマンは半ベソをかきながら、雪を塗りたくり続ける。

「おい、その辺でいいんじゃないか?何か、会った時より太めになってるぞ」

「いいんだよ、その方が!溶けにくくしてんの!!オレは、死にたくないのぉ!!」

「あっそ…」

「で、あの人の笑顔をみたいんだな」

「ああ」

「じゃぁ、あの人の好きなものって何なんだ?」

「好きなもの…」

諒は、病院の中庭にある木を見た。

「桜だよ」

「桜?」と、スノーマンも木に目をやる。

「季節じゃねぇな」と、スノーマンは呟く。

「母さんは、2回目の春にはもたないだろうって、医者に言われてんだ。来年がその2回目。だから、悲しそうな顔をしていつも冬空を眺めている。冬は、嫌いだよ」と、諒は笑った。

「冬が来なきゃ、春は来ないぞ」

スノーマンは、真面目な顔をして言った。

「まぁ、オレに任せとけ。桜もいいが、冬の花を見せてやるよ」

「冬の花?」



 「…で、何で俺達スーパー来てんの?」

諒は訳がわからず、何かを探すスノーマンの後ろ姿を見ている事だけしか出来なかった。

「ん?ああ…」

スノーマンは、諒の話しを聞いてはいないようで、適当に相槌を打つ。

「…お前、人の話しを聞けよ」

「ああ、うん」

「…聞いてないな」

「うん」

諒は「ボカッ」と、スノーマンの頭を一発殴った。

「何すんだてめぇ!」

スノーマンは諒を睨みつけ、殴られた頭をおさえる。

「ん?あーっ!!頭、へこんでんじゃんかよ!!」

スノーマンはへこんだ部分を撫でて、修復する。

「オレが何をしたってんだよー」と、スノーマンは半ベソをかく。諒はそんなスノーマンを見て、罪悪感が芽生えた。

「ご、ごめん、つい…」

「ついとかうっかりで、済まされない事もあんだぞ!」

スノーマンは号泣しながら、諒に詰め寄る。

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