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「はぁ…。願い?願いねぇ…」
諒は溜め息をついた。どうやら、抵抗する事を諦めたようだ。
諒は、遠い目をする。
あの人の事が頭に浮かぶ。
あの人の笑顔が見たい。
本当の笑顔が。
「…願いってのは、どんなものまで叶えられるんだ?」
「たいていの事なら、叶えられるぞ」
「俺、大切な人の笑顔が見たい。しばらく、見てないんだ。その人が見せるのは、俺を気遣った笑いだけ」
「ふぅーん、何か訳ありみたいだな。じゃぁ、そいつの処に案内しろ」
「え!?あんたを会わせるのか?!」と諒は、露骨に嫌そうな顔をした。
「当たり前だろ。どうしたら、笑顔が見れるか対策を練らなくちゃだろ?その為には、本人を見とかなくきゃだろ」
「どんな理屈だよそれ。俺、あんたと町中歩きたくないんだけど」
「は!?お前こそ、何なんだよ!オレは、可哀相な嫌われ者か?!そうなのか?こんな可愛らしい姿なのにぃ?」と、スノーマンの顔が迫る。
「…わ、わかった。案内するよ」
行き交う人々が、振り返る。諒は、ちらりと隣を見た。スノーマンが、テクテクと歩いている。
「俺、本当にラッキーボーイ?」と諒は苦笑いをして、呟いた。
しばらく歩くと、白い大きな建物に出くわした。
「総合病院?」と、スノーマンは門に取り付けられている名前のプレートを見る。
「行くぞ」
諒は立ち止まっているスノーマンに、中庭から声をかけた。スノーマンは、急いでスタスタと諒に駆け寄った。
中に入ると、待ち合い室はがらんとしていた。たまに行き交う看護師と医師の靴音だけが、病院内に響いていた。
「205号室だよ」と諒はスノーマンに言い、階段を上り、病室へ向かった。
「藍田加代子?」
スノーマンは、205号室の名前を見た。
「俺の母さんだ」と諒は言い、病室のドアを開けた。
「あら、諒ちゃん」
諒の母親は、弱々しく笑う。
「どう?具合は」と、諒は母親の側に寄る。
「ええ、いつも通り。変わりなしよ」
「そう」
変わりなしって事は、良くはなってない。
「あら?今日は、可愛らしいお連れがいるのね」
「あ…どうも、スノーマンです」
スノーマンは、ぺこりと頭を下げる。何故か、元気がない。
「はじめまして。諒の母です」と、諒の母は丁寧に頭を下げた。
「諒と仲良くしてくれてありがとう。この子、無愛想だから、友達があまりいないの」と、母親は諒を見る。
「いえ、いえ、諒さんには僕のわがままにお付き合い頂き…」
スノーマンは、ぺこり、ぺこりと頭を下げる。
諒はふと、ある事に気がついた。