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「用もないのにできるわけないじゃない!先輩が出て来て何て言えばいいのよ!!」
「それは何とでもなるだろ」
簡単な事のように言うスノーマンが、憎らしい。そして、この間抜け面がとくに。
「あんたもう一回、蹴り入れようか?」と、明はスノーマンを睨みつける。
「胸もない、ガキくさい、その上、乱暴者ときちゃぁ、叶う願いも叶わなそうだな」と、スノーマンは強気に出て来た。
「何であんたそんな…」
明は、「はっ」とした。ここは、先輩の家の前。だからこいつ…。
「オレが代わりにインターホン押してやるよ」と、スノーマンはテクテクインターホンの前へと移動する。
「だあーっ!!!やめて!!」
明はスノーマンの体を掴み、急いでインターホンから引き離す。と、同時に玄関の扉が開かれた。
「あれ?家に何か用ですか?」
見た目は、一言でいうと素朴。口調は穏和な印象を受ける。
「せ、先輩!?あ、あの」
明は思いがけない出来事に、どぎまぎする。
「いやぁ〜、先輩の家ってここだったんですね」
「君は?」
「あ、こんな恰好じゃわかんないっすよね。ただでさえ、同じ学校っていうだけで先輩はオレの事知らないのに話しかけちゃってスイマセン」
スノーマンは馴れ馴れしく、ペラペラと話し続ける。
「冬なのに、こんなの着てて暑いっすよ。あ!オレの事は、スノーマンって呼んでください」と、スノーマンは枝の先に手袋をはめた手を差し出す。
「どうも」
男は怪しむ様子もなく、にっこりと笑って握手を交わした。
「こいつは、オレの友達です」と、スノーマンは明の背中を押した。
「あ、あの、垣沼明です」と、明は顔を赤らめ、男の顔を見る。
「よろしく」と、男は手を差し出し、明は俯きながらその手に応える。
「先輩、オレ達と友達になってください!!」
「いいよ」
スノーマンの突然の発言にも、男は快く受けた。
「やったな明!!」
スノーマンは「ドン」と、明の背中を叩いた。棒切れでできている手のくせに意外と力が強く、痛かった。
「う、うん」
「あ、そういえば先輩これからお出かけですよね。邪魔しちゃってスイマセンね。それじゃぁ、オレた達はこれでおいとまします」とスノーマンはにこっと笑うと、明の手を引っ張り、そそくさとその場から去った。
「う、嘘みた〜い!!先輩と友達になっちやった」
明は、まだ少し赤い頬をおさえる。
「どんなもんよ!恋つーのは、強引さが大事よ。しかし、あいつアホそうな奴だったな」
「アホって何よ!」
「だってよ、よくも知らない奴と簡単に友達になれんだぜ。絶対、騙されやすいタイプだな。まぁ、実際にオレの正体騙せたけど」