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スノーマンは、「ふっ」と笑った。
「確かにそんなんじゃ、モテなさそうだな」
「それ、どういう意味!?」と、明はムッとした。
「胸もねぇし、ガキくせぇし、まず女っぽくねぇ。ってか、お前ホントに女か?」
明はスノーマンの的を射たストレートな言葉に、自分の理性が切れる音が聞こえた。
「ガシ、ガシ!!」
明は何発もの蹴りをスノーマンに入れる。
「お、おい、やめろ!!体が崩れる」
スノーマンは悲鳴を上げる。
「ちゃ、ちゃんと願い叶えてやっから、や、やめろ」
明は蹴るのをやめた。
スノーマンは急いで足跡がついた部分をなで、体を修復していた。
「あー、怖かった。体がなくなったら、戻るもんも戻れなくなっちまう」と、スノーマンはぶつくさと呟きながら、体を撫でている。
「で、願いは、両想いになりたいんだろ。誰となりたいんだ?」
「高校の先輩…」と、明は恥ずかしそうに答えた。
「は!?お前、高校生だったの?!中学生かと思ってたぜ!」
再び明は、足を振り上げようとした。
「わわわ…悪かった。謝るから!!」
慌ててスノーマンは、自分の非を認める。
「で、そいつの家は?」
「家?」
「知らないのか?」
明は首を横に振る。
「じゃぁ、案内しろよ。そいつを見たいんだ」
明は目線を下に降ろした。
「歩くの?」
白い真ん丸な体は、直接地面についている。
「歩くよ。何で行けってんだよ。そいつん家遠いのか?」
「このすぐ近く」
「じゃぁ、平気じゃん。何の心配してんだ?」
「足」と、明はスノーマンの体の下を指差した。
「ん?ああ、あるぜ。そうじゃなきゃ、ここまで来れねぇーもん」
スノーマンはそう言うと、歯を食いしばり、力み出した。すると、「ポン!」といういい音ごとに赤い長靴の足が、片足ずつ飛び出してきた。
「ふぅ、今日も快調!!」
スノーマンは、爽やかに汗を拭う。
「さぁ、案内しろ」
「う、うん」
明は公園を出て、さっき歩いていた道へと戻る。道沿いに並ぶ家の一つが、先輩の家なのだ。
しかし、後ろがどうも気になる。後ろをちらりとみる。
赤い長靴を履いた雪だるまが、自分の後に続いてテクテクと歩いている。
気持ち悪い。自分は、雪だるまの霊(そんなものに魂が宿っているのか?)にでもとり憑かれた気分だ。
テクテク…。
「まだか?」
「うん…」
テクテク…テクテク…。
「まだ?」
「もうちょっと」
テクテク…テクテク…テクテク…
「お前、歩くの鈍くねぇ?」
「もう、着くよ」
明は一軒の家の前で、足を止めた。
「ここか?」
「うん」と、明は家を眺めながら頷く。
「じゃぁ、インターホン押せ」
「え?」
明はスノーマンの突然の言葉に、振り向く。