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「足がなーい!!歩けないーっ!!」
子供たちが去った後、スノーマンは泣きながら叫ぶ。声は虚しく空に吸い込まれる。
「ニャー」
猫は心配そうに、スノーマンの顔を覗いた。
「ああ、オレって惨め…。この姿で何回、クリスマス過ごしてんだろ。あの時が17だったから…」
スノーマンは手袋の指を折り、数える。
「4回?今年で5回目かよ。高校に行かずに、20過ぎてもう、22になんのかよ。ありえねぇー」
スノーマンは悲しくなり、泣き始めた。そこへ、
「雪だるまさん、どうしたの?」と、二つに髪を結わえた可愛らしい女の子が声をかけてきた。
「靴を奪われ、自分の呪われた運命に嘆いているんだよ、嬢ちゃん」とスノーマンは、泣きながら答える。女の子はスノーマンの足元を見ると、
「ちょっと待ってて」と言い、その場から去って行ってしまった。
数分が経った。
「…まだかなぁ?」
スノーマンは、灰色の空を見上げる。雪が降り始めるなと思っていると、小さな足音が聞こえてきた。
「お待たせ。雪だるまさん」
女の子は、にっこりと笑った。その手には、二足の雪用の真っ白な長靴が抱えられていた。
「これ、あげる。私ね、ずっと前、寒ーい処に居たんだけど、ここに引越したの。ここはそこよりあんまり雪が積もんないから、これいらないの。私の大きいお兄ちゃんの方の靴だからおっきいけど、雪だるまさん履いてくれる?」
世の中にはこんなにしっかりしていて、いい子もいたんだなあとスノーマンは、女の子を見ながら思った。
「ありがとな。悪いけど、その長靴をオレの足元の方に、挿してくんねぇか?」
「いいよ」
女の子はぐいっと、長靴を雪の体に押し込む。
「ついでに手も貸してくれ」とスノーマンは言い、女の子はスノーマンの手を取り、少しの力を貸した。
「ありがとう。お前には、幸福が訪れるぞ」
スノーマンは、優しく女の子の頭を撫でた。女の子はにっこりと、微笑む。
「ニャー」
猫が一鳴きした。
「お前、まだ居たのか」とスノーマンは、猫を見る。
「可愛い」
女の子は、猫を撫でた。
「あれ?」
女の子は、猫の赤い色の首輪にぶら下がっているプラスチックでできた円い物を見た。
「何か書いてあるよ。ミミ…。あとは読めないや」
スノーマンはどれどれと、首輪を見る。
「三丁目…。これ、住所だな。こいつ、迷子かも」
「かわいそう」と女の子は、猫を抱き抱える。
「ここからあんまし遠くないみたいだから、オレが家まで連れて行ってやるよ」
「ニャー」と猫は、嬉しそうに鳴いた。