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次の日ー。
「ギヤアーッ!!!」
雪太の悲鳴が家中に響き渡る。
「何じゃこりゃあ!!」
雪太は、自分の体を鏡に映す。そこに居るのは、丸い白い体の間抜け面。
「フフフ…どうだ雪太」
いつの間にか、煙草をくわえた父親が後ろに立っていた。
「親父!?あんたの仕業か!!」
雪太は、真ん丸になった黒い目玉で父親を睨みつける。
「サンタは何でも出来るんだ。俺からのクリスマスプレゼントだぞ。スノーボーイ」
父親は、意地悪そうに笑みを浮かべる。
「もとに戻せ!このクソ親父!!」
雪太は、まだ不慣れな体で父親に詰め寄る。
「10人の願い事を叶える事ができればもとの姿に戻るぞ」
「じゅ、10人だと!?」
雪太は丸い目玉をさらに丸くする。
「戻りたきゃぁ、行って来い。あんまり文句垂れてっと、この穏和な俺も我慢ならなくなるぜ」と父親は笑顔で言うと、何処からかライフル銃を出し、雪太の丸い頭に突き付ける。
「風穴開けるぞ♪」
「……行きます」
「ジングルベル♪ジングルベル♪鈴がなるー♪」
スノーマンは独り、公園のベンチに腰掛けていた。
「はぁ…。あと1人だってぇのに、なかなかチャンスねぇなぁ。こんな可愛いオレなのに、みんな逃げちまうんだもん。グッスン」
スノーマンがしょげていると、
「ニャー」と、猫の泣き声が聞こえた。
「ん?」
スノーマンが顔を上げると、目の前に一匹の三毛猫が居た。
「何だお前?オレを慰めてくれんのか?」
「ニャー」
猫は、スノーマンの言葉がわかっているかのように、もう一鳴きした。
「いい奴だなぁ」とスノーマンは言うと、自分の体に手を突っ込み、パッケージに入った煮干しを取出した。猫は驚いて、ビックとしていたが、
「ほらやるよ」とスノーマンに煮干しを差し出され、近づいた。
クンクンとにおいを嗅ぐ。一噛りしてみる。少しカチカチに凍っているが、噛むと味が滲み出てきておい
しい。ガジガジと噛み始めて、煮干しを頬張る。
「あーっ!雪だるま!!」
突然大きな声がし、猫とスノーマンはビクッとなる。
「ホントだあ」
子供が3人、スノーマンの方へ駆け寄る。
「わあーっ!すげぇーっ!!雪だるまが動いてる!!」
子供たちはスノーマンを見て、目を輝かせる。
「わっ!お前ら何処触ってんだ!!やめろ、いじるな!!形が崩れんだろ」
スノーマンは、子供たちに揉みくちゃにされる。子供の一人がじっと、赤い長靴を見つめた後、片方を引っぱがすた。
「うわっ!何すんだ!!やめろーっ!!」
「ズドーン」
スノーマンの叫び声と共にその体はバランスを失い、地面に倒れる。スノーマンは、ジタバタと残った片方の足と両手をばたつかせる。
「こっちも取ってやろうぜ」
子供は恐ろしい…。無邪気だからこそ。