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「わ、悪かったって。本当にごめんな」
「オレの何処が嫌いなんだ!?オレは、可愛い雪だるまちゃんだぞ!!」
「嫌いじゃないよ…マジで…いや、本当に」
「…おっ!こんな所にお目当ての物が♪」とスノーマンは、諒の後ろにあった探し物を見つけた。この時諒は、スノーマンにもう一発入れたいと思った。
諒とスノーマンが出会った今日は、クリスマスだった。
諒はスーパーを出た後、スノーマンと別れて母親の為に淡い桃色のショールを買った。桜の色に似ている。きっと喜んでくれるだろうと、病院へ向かった。
「母さん、クリスマスプレゼント」と、諒は母親にさっき買ったショールを渡した。
「ありがとう。まぁ、綺麗な色。私は、あなたに何も用意していないわ。ごめんなさいね」と、母親はすまなそうに俯く。
「いいよ。俺へのクリスマスプレゼントは、母さんが元気になる事。いい?」と諒は、笑った。
「そうそう、クリスマスプレゼントと言えばスノーマンからもあるらしいんだ」
「あの可愛らしいお友達?」
「外が暗くなってから、窓を見てほしいんだって」
「何かしら?」
「さぁ?俺にもわからないよ」
「うっしゃぁっ!いい具合に空が暗くなってきたな。登るべ!!」
スノーマンは風呂敷包みを袈裟懸けにし、病院の中庭の木を見上げた。そして、まるで猿のようにするすると登っていく。
調度いい太さの枝に立ち、諒の母親の病室の窓を探した。
「もうそろそろかな?」
諒は陽の光が入らなくなった部屋を見て、窓に近寄った。
窓からちょうど中庭の木が見える。そこに、白いモノが見えた。
「母さん、ごめん。寒いだろうけど、窓開けるね」と、諒はベットの上の母親に振り向く。
「お友達が何か見せてくれるんでしょ?駄目なんて言わないわよ」と母親は、優しく応えた。
窓を開ける。冷たい風が部屋の中を通り抜けていく。諒は、スノーマンに手を振った。
「おお!あそこだな♪」
スノーマンも大きく手を振って、応える。
風呂敷包みを紐解くと、中から2本の赤い液体が入った瓶が出てきた。瓶に貼ってあるラベルには、イチゴシロップと書かれていた。
1本ずつ両手に持つと、イチゴシロップを口に含んだ。
「プーッ!!」
木に振り掛けるように、口から吹き出す。
「母さん、見てみなよ。桜だよ!」
諒は嬉しそうに、母親の方を向く。母親は不思議そうに、ベットから出て窓の側へと近寄る。
木は、真っ黒な空をバックにキラキラとピンク色に輝いている。
「綺麗…」
母親の眼は、無邪気な子供のようにキラキラと輝いていた。その口元は自然に緩み、笑みが零れ落ちる。
風がふわっと流れ、木にキラキラと降り注ぐものを運んできた。
母親は、窓から手を伸ばしそれを受け取る。