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永久の旅人  作者: 四叉泰砥
2/8

二 邂逅


 二


 ちゃんと舗装されている道を、特になんの目的もなく、ぶらぶらと歩いていると、向こう正面に、一人の少年を苛める、おそらく、鋼鉄で作られたものであろう甲冑やとを身につけた、兵士か、あるいは傭兵とおぼしき戦士が、二人いた。けれども、その二人は、『騎士』と断定してしまっても、いいだろう。彼らの身にまとっている鎧には、見覚えがないわけではなかったし、もっともな証拠は、彼らが大事そうに装備している、槍にゆらゆらとぶら下がっている、どこの国のものかは分からなかったけれども、国旗を見てもらえば、それだけで、どこかの国に仕える騎士であることが、容易に伺える。



 あまり、私は面倒くさいことが、好きではないので、私は、二人の騎士に苛められている少年を無視して、側を、通り過ぎようとした。



 すると、ちょうど、二人の騎士の、すぐ左側を通りかけた私を、彼らは、諫めた。



「おい、そこの女。ここを通りたければ、しっかりと通行料を納めてもらう必要があるのだが」

「すみません、さっき、ちゃんと途中の検問所で、税金を払ったのですが」



 私は彼らに釈明を求めると、一方の騎士が、

「ここの道は、俺たちが管理しているゆえに、検問所で税金を払ったとしても、ここでも、別に通行料がいるのだ」

 と偉そうに、言った。



 なるほど、二人の騎士に苛められている、この少年も、おそらくは、この理不尽な徴収に応えられずに、捕まってしまったのだろう──



「もし、私が料金を払わないと言ったらどうしますか?」

「無論、ここは通れないし、お前は犯罪者として、ろうにぶち込まれるだろう」

「別に、悪いことはしていないのにですか?」

「悪いこと? そんなことは、どうでもいいんだよ。別に、牢屋にぶち込まなくても、奴隷にして、商人に売りつければいい話だ」



 そう言うと、一方の騎士は、いきなり、私の肩を強い力で掴んだ。

 私は、理解した。

 


 この二人の騎士は、不当に、通行料を取り立てている。多分、それは、私のような旅の人だけではなく、彼らに苛められている、この少年も、同じく対象なのだろう。



 財布の中身を、合法的に強奪しては、あげくのはて、奴隷商に売りつけるのか──



 そうと分かれば、話は早い。



 私は、暴力に訴えた。

 


 誰に──

 言うまでもない── 

 二人の騎士に向けてだ──



 私は、私の背中に背負うように、常に携帯している金鎚という武器をその手に持って(四尺ほどの、細長い金属棒の先端に、その硬度があらゆる金属よりも優秀で、また、非常に純度の高い、アダマンタイトという金属の、鎚を取り付けた、長柄の武器)、次に、その金鎚を構えたと同時に、きちんと両手で柄を握って、振りかぶるように腕を正面に持ち上げて、遠心力に任せに、私から見て近い場所に位置していた騎士めがけて、地表から垂直に、それを振り下ろした。



 ぎゃしゃん、と騎士のかぶっている兜から、金属がひしゃげる音がした。まるで、紙のごとく、私が金鎚で殴りつけた騎士の兜は、つぶれてしまったのである。そして、同時期に、その騎士は、がらりと地面に崩れ落ちた。それに対して、一方、私の急な攻撃を受けいていない、もう一人の騎士は、開いた口が塞がらないと言わんばかりに、私の行動を見て、ぽかんとしていた。その隙を、私は見逃さない。私は、振り切った金鎚を、地を抉りながら引き戻し、今度は力任せに、もう一人の騎士の腹部に放った。



 もし、軽装備だったならば、すでに命はなかったろう──



 私の一方的な奇襲を受けた二人の騎士は、その場で倒れた。



 ただ、後者の騎士は、腹部によるダメージだったので、前者の騎士のように昏倒することはなく、インパクトの衝撃による激痛で、土壌を這いずる虫のごとく、のたうち回っていた。とはいえ、もう彼らが正気に戻ったとしても、私に危害を加える気力は、すでにないだろう。



 私は、一端、金鎚をしまい、戦闘による興奮を押さえて、また、抑制するために、一度だけ、深呼吸をした。

 


 もともと、彼らには用はない──

 彼らは、私が戦うべき人間ではないのだ──



 ようやく、平常心に戻った私は、さっさとこの場所を立ち去ろうと、歩みを始めた。



 けれども、私の足を呼び止める声があった。

 


 私の歩行を妨げる声の正体は、さっきまで二人の騎士に苛められていた、少年だった。

 

 

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