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4.依頼を決めよう

「……行くよ?」

「はい。」


 シズネは反抗期かどうかは分からないが、おそらく反抗期で仮面を被るようになった。何でも顔が成長期に入って醜くなるから見られたくないらしい。


 顔が変になったことが本当のことなのかどうかもわからないが、真夏の暑い日でも、風呂でも、寝る時も付けているらしいので見るのも酷かなと思った俺は放置している。そのため、顔がどうなったのかはまさにシュレディンガーの猫状態になっている。


(……でも、体つきは凄いよなぁ……)


 チラッと見た感じの体つきは元の世界でもグラビアアイドルを打ち負かすかのような凄まじいスタイルを誇っている。


 ただ、その上についている仮面がとても変なので誰も寄りつかない。何か肉まんみたいな変なのを被っているのだ。せめてもう少し可愛げがある物にすればいいのにと言ったのだがこれが安いのでこれでいいとのこと。


「どうなされましたか?」

「ん、あ……あぁ、ちょっと今日は何を受けようか考えてて……」


 シズネの声で俺は我に返る。ついでに言った言葉で誤魔化されたシズネは頷いた。


「そうですね……Dランクに上がったのは最近ですからまだEランクでもいいかと思いますが……ご主人様が望まれるのでしたらそろそろ高ランクの物を選んでもよいかと……」

「そうだなぁ……」


 シズネがどこか期待を持った目で肉まん仮面の目の穴の部分からこちらを見ているので誤魔化しのつもりで言った依頼の内容について真面目に考えていることにした。正直、神様の杖のお蔭で殆どが肉体的には楽な仕事ばかりなのだがあまり目立っても困るので悩む。

 それに、能力面で大丈夫でも精神面では毎回擦り切れそうになるので討伐系の依頼はあまりしたくない。


「……やっぱり今日も、採取にしようかな。」

「ご主人様が望まれるのでしたら……」


 俺の言葉にどこか不満気なシズネ。俺はその理由を尋ねるが、シズネは普通に尋ねてもご主人様の決定に異論はございませんとしか言ってくれないので命令して訊いた。


 肉まん仮面で良く分からないが、あまり快く思ってはいなさそうだ。しかし、それでも渋々と言った風で答える。


「最近、ご主人様のことを腰抜けと言う人がいるので……おそらく討伐を最低限でしか行わないのに通常の冒険者と同じ……むしろ少し早いスピードで昇級されているのが気に入らない方だと思うのですが……」

「ん……ん~……どうしようかな……?」


 正直、さっき思った通りで討伐はしたくない。メンタル面のすり減りがあるものの、【観測せし者(シュレディンガー)】を使えば本当に秒殺できるためそれほど苦にはならないが目立つのは本意ではないのだ。


 だが、この時点ですでに目を付けられているというのも事実。それに弱いと思われている状況で依頼を熟してお金を持っているのはマズイ気が……

 ?いや、他殺だと良いんだっけ?あ、ダメだったっけ?ダメだ。もう何かあやふやになって来てる……あの空間じゃメモとか取れなかったしなぁ……最近、毎日が生きるのに精いっぱいだったし……


 ちょっと落ち着いて思い出そう。由々しい事態だ。……目標が自然死だからダメだったよね。うん一瞬危なかった。この世界紙すらないから今度木にでも彫り込んでおこう。


「……ご主人様の実力でしたら、おそらく、Cランク討伐も楽に熟されると思いますからDランク上位クエストなど……いかがですか……?」

「ん~……」


 神人が悩んでいるのと同様に実の所はシズネも悩んでいた。彼女の主である神人が高位の冒険者になれば主人はもっと良い奴隷を買い、自分は売り戻されることになるかもしれないと言う恐れがあるのだ。

 ただ、このままだと身の危険もあるかもしれないということで彼女は自分のことよりも神人の身を案じて先の提案を行った。


「……シズネは、どこの辺を見て俺がCランクの討伐をこなせると思った?」


 俺は依頼を受けるかどうかの前に少しシズネに訊いた。シズネは肉まんを傾けて答える。


「あの……この前、昇級クエストの採取の際に邪魔と言って倒された魔物がCランク討伐の魔物でしたので……」

「……そうか。気を付けないとな……」


 いつの間にか巨大なミスをやらかしていた。見られたのがシズネだけだったから良かったものの、何をしてるんだ俺は……


「因みに、どれ?」


 良く覚えていないが強そうな奴からは逃げたはず。倒したのはゴブリンとか何か蟲が大きくなった奴らとか、後はコボルトくらいか……?


「廃城の中にいたレッドキャップです。」

「レッドキャップ?」


 そんな奴倒した覚えがない。廃城は覚えてる。廃城がその時の最終目的地で怨念渦巻くその城の中にある屋根の崩落した場所に群生している黒死草を一株持って帰るのがそのクエストの依頼内容だったんだし……


「あの……小柄で、赤い帽子をかぶって巨大な戦斧を持っていた赤い眼の……」

「……あれゴブリンリーダーとかじゃないの?」

「……レッドキャップです。」


 ……マジか。いや、危なかった。俺も驚いているがシズネも驚いているようだ。ごめんね無知で。


「このことは内緒な?」

「え……あの、依頼達成の時に……」

「え?バレてるの?」

「はい……なのであの時点で採取の後の討伐を免除されて昇級に……」


 マジか。そんなやり取りがあったのか。……黒死草の状態の文句から入って来たおっさんの話が長かったから全部毎回言われてる冒険者としての心構えとか説教かと思って適当に聞き流してた……


「……流石に周りにはバレてないよな?」

「はい……ですが、ギルドの方には……Cランク昇級者が出そうだということで期待はされてますね……それも周囲の妬みの原因かと……」

「成程……」


 つまり、採取しかしてないのに昇級した。まだ昇級しそうだと思われてる。ギルドから何か扱いがいい。……もっと大人しくしよう。

 いや、でもギルドから不自然に思われるか……?どうしよう。


(……これはもう【観測せし者(シュレディンガー)】さんに解決策を頼むしかないな……あ、でも今日の依頼できなかったら生活が……)


「……どうするか。取り敢えずシズネは今度からC以上の敵がいたら……あ、そう言えば言ってたな……」


 レッドキャップが来た時にご主人様は逃げてくださいとか言ってたな……何でゴブリンリーダーくらいで?とか思いつつアレを燃やしたけど……


「気が利かなくて、申し訳ありません。」

「いや、俺が無知すぎるだけ。ごめん。えっと、取り敢えずそういう魔物が来たら言ってくれると助かる。今度からは逃げるから。」

「……えぇと、どういう魔物を言うといいのですか……?」

「Cランク以上の魔物全部。D以下としか戦わないから。全部教えて?俺、そういうのあんまりわからないから……流石にドラゴンくらいはわかるけど……」


 シズネは首を傾げつつ頷いた。今日の依頼どうしようかな……まぁ行ってから考えることにしよう。


 そう言うことにしてシズネを伴って俺は家から出た。




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