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2.お手伝い購入に際して

「…げ、マジか…」


 俺は自分の料理能力の無さに驚いた。適当に塩焼きした肉でも生焼けで食べられなかったのだ。


「…これは自然死判定に…入らないだろうな…うん。自殺と変わらん。」


 先日の一件で努力して回避できるのに回避しなかったものは自殺と判定されることから俺は学んだ。そして俺はこうすることに決めた。


「料理ができる誰かをお手伝いとして買おう。」


 と。














 まず、お手伝いを探すにあたって結果から言うと、奴隷の方が安上がりだという事に気が付いた。(というより【観測せし者(シュレディンガー)】の能力で知った)


 それで、俺の狙う奴隷についてだが…条件がこれだけある。


 ・美形じゃないこと(但し、あまりに不細工なのは無理)

 ・元貴族とか柵がないこと

 ・何か隠された血筋じゃないこと

 ・特殊能力がないこと

 ・何かしらの壮大なバックグラウンドがないこと

 ・健康なこと

 ・安いこと


 フラグは全部へし折る。それが俺の心意気だ。大体、チーレムは俺が死んだ後に安全なところでやればいい。今回は我慢だ。


 ところで驚いたことにこの世界の奴隷はものにもよるがやっすい。20リルラから60リルラ(日本の感覚で1~3万円)だって。


 まぁ、驚いたんだけど【観測せし者(シュレディンガー)】の情報に依れば元の世界でもラ○スとかネ○ールとか東南アジアではそんな値段で人身売買が起きてるらしい。


 …今更ながら気分が悪い。


 でも、少なくとも俺は酷い主人になるつもりはない。虐待もしないし酷い事はしない。うん。偽善だろうが助けてくれるなら助けてもらった方がいいよ。


 俺が受けた虐めとはレベルが違うかもしれないけど、誰だって酷い目に遭えば助けてほしいって思うはずだしね。


「…お、ここか…」


 【観測せし者(シュレディンガー)】の案内で小汚い店に入った。中では死んだ様な目をしている子どもたちがたくさんいる。大人はあまりいない。


 また、子どもたちのほとんどが女の子で、男の子はあまりいない。


 目を合わせたら心が折れそうになる…でも、俺に全員を助ける力もない。なるべく目を伏せて目的を果たすために呟く。


「【観測せし者(シュレディンガー)】…料理が出来て美人じゃなく、貴族でもない…」


 俺は自分の要件をどんどん言っていく。すると半分より少し少ない位の人たちが引っ掛かった。


 …そりゃそうだよね。逆にあった人ってどうなんだろと思うもん。…まぁ殆どは健康状態で落ちたんだけど。


「…じゃあ誰にしようかな…」


 条件を満たしてる中で…ん?あれは…


「羽…?」


 目に入った大特価100リルラと書かれた檻の中にいる子供…その後ろに生えている物に目を奪われて思わず口から言葉が漏れた。

 その言葉をブローカーであろう店の太った男の店主が聞きとめてこちらにやって来た。


「お客さん。あいつにするんですかい?」

「え、あ、ちょっとまぁ…」

「お目が高いですね。大特価100リルラ(約5万円)ですよ!」


 押しが強そうな人だ…目立ちたくないしこの子にするか…


「じゃ、はい。」

「返品は受け付けませんからね。」

「あぁ、はい。」


 俺は赤い紙幣を(10リルラ札)を男に手渡す。


「10枚。確認しました。ありがとうございました。またお越しください。」

「えぇはい。機会があれば。」


 来ないけどな。


 檻から出されたその女の子はそれなりに…小学校のクラス、40人中10番目くらいには可愛らしい子で、その首輪に繋がれている鎖が俺に手渡された。


「『リストリクションズ』。はい終わりとなります。ご契約は自宅の方でお願いしますね。」


 おそらくビジネス用の笑顔を振りまいている男から離れて俺はその子を連れて今とっている宿へと戻って行った。



















「えーと、君は何て名前なのかな?」


 宿に着くと【観測せし者シュレディンガー】は時間切れとなってしまった。だが、要件は果たしているのでそれでいい。


 俺は羽の生えた彼女に質問する。彼女は生気の乏しい顔でぼそぼそと返した。


「パト族のシズネです…私を買っていただきありがとうございます…拙いですが精一杯ご奉仕させていただきます…」

「あ、え?いや、まだそういうのは早いんじゃ…」


 この世界でも子供の性の乱れが問題なのか!?…いや、この世界の常識的に考えるとそういうのが当然なのかもしれない。


 だが、感覚が地球の俺としては無理だ。幼すぎる。そんなことを思っていると目の前の少女が首を傾げた。


「あの…今でないと…私はパト族ですのでどんどん醜くなりますよ…?」


 …え?何その変な設定。流石ファンタジーって言えばいいのかな?…まぁ俺的に彼女には家事しか期待してなかったからなぁ…今の彼女的に考えて醜くなってもそこまで酷い事にはならないだろうし…というより、美的感覚が地球とズレ過ぎなんじゃないかな?向こうはもっと……これ以上は考えたら駄目だ。


 まぁ、敢えて言うなら…チーレムは来世でやる気だし…今世じゃ俺一代限りの大したことしない隠居生活するから家族とか作ったら子どもの将来が可哀想だよな…うん。


「いいよ。別にそう言う目的で買ったんじゃない。料理とか家事を任せたくてね。」

「…申し訳ございません…私では満足いただけないですよね…」


 俺の言葉を受けて感情の欠落したような顔をして更に自分を責めるかのような態度をとる彼女に俺は焦った。


「え、あ、いや、君はうん。大丈夫。可愛いよ。えーと…」


 あーっ!気の利いたセリフとか知らねぇよ!【観測せし者シュレディンガー】さん!頼んます!復活してください!


 この後俺は四苦八苦しながら彼女に歯の浮くようなセリフを言ってみてそう言うことがサラッと言えるイケメンどもの精神構造を同じ人類かどうか考えながら後日思い出すと爆発する地雷を作った。




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