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  作者: 光里
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第一章『始まり』

ある。年をとって髪の色が抜けたのではない、最初から白い髪。

そんな言い伝えのある中で懸命に生きる少年がいた・・・。



第一章『始まり』



 山奥にあるのどかで小さな村「タチオ」。

そこにある今にも潰れそうな家。。この村の住民は貧しい暮らしが強いられている。そのため服は紙切れのように薄くてボロボロ。鍬もサビだらけだ。少年が鍬を持って出てくる。太陽に照らされてキラキラと輝く白い髪。きれいな顔立ちをしている・・・タケルだ。

 炎天下の中、畑に入り鍬を振りおろし土を耕す。大粒の汗が頬に伝って水分を奪われていく。

「お兄ちゃん!」

向こうから幼い声。作業を中断し、声がするほうを見てみると、暑さを知らないような涼しい顔をした少女がこちらに走ってきている。妹のカスミだ。カスミは長く茶色い髪がなびかせて眩しい白いワンピースを着ていた。

「・・・どうした?」

「あのね!今日はお兄ちゃんの誕生日でしょ?何かしてほしいことはない?」

――――できるなら運命を変えたい。でもそんなことできるはずがない。

タケルは無表情で言った。

「・・・・特にない」

 カスミは寂しい顔をしてタケルの元を離れていった。タケルも作業に戻る。タケルはカスミのことを大切に思っている。しかし、感情にうまく表すことができない。

それは、タケルが呪われた人間だからなのか・・・。

「おい!」

――――今日はよく邪魔をされる日だ。

村人たちがタケルの周りを囲む。村人たちの手には鍬や斧などを持っていて、殺気で満ちていた。

「・・・・」

村人たちの中心である一人の男が話し始めた。

「今日はお前の誕生日だったな?この村のしきたりには十六の誕生日を迎えたものは大人とみなされ、しばらくの間この村から出なければならない。それは分かっているな?」

 タケルは無言でうなずいた。

今まで出て行けと言わなかったのはこの時を待っていたからだろう。村のしきたりであれば従わなくてはならない。

「カスミのことは心配するな。あの子は見たところ普通の人間だ。俺が責任持って預かる。」

――――「預かる」?「引き取る」の間違いだろ?俺は出て行ったら最後戻ってこられない。

「・・・・・・」

「明日、旅立て。準備をしておくんだな」

そう言って村人たちは去っていった。タケルはその場に立ち尽くしていた。






 その夜。部屋で明日の準備をしていると、カスミが入ってきた。

「お兄ちゃん・・・」

いつも明るいカスミには似合わない低いトーンで話しかけられる。様子がおかしいと思い、顔を覗いてみる。その顔は生気を感じられない

「・・・た・・たす・・・け、て!」

 突然大粒の涙を流しはじめたカスミ。タケルはカスミを抱きしめ、背中を優しくさすってやる。すると、カスミの中から黒い煙が出てきた。その煙は天井付近に上がっていく。タケルはカスミを自分のベッドに寝かせた。

「・・・・・」

黒い煙を睨みつけるように見ていると、目らしい光がタケルを見つめる。

「・・・・ふっ」

「・・・何がおかしい」

 煙は蛇のようにタケルに巻きつく。タケルはうっとうしく思い、払おうとした。

「白い髪・・・お前、それが何を示しているかわかるか?」

――――何を示している?

タケルには何を言っているのか分からなかった。

「その白い髪は呪われている・・・いや、それ以上に恐ろしいことが起きる。」

「・・・・何がおきるんだ?」

「それは自分で確かめるんだな?俺が言えるのは恐ろしいことが起きるということ、それだけ。お前はそれが何か知りたいか?」


――――知りたい。他にも知りたいことがたくさんある。

俺はどうして白い髪に生まれてしまったのか・・・。

なぜ白い髪は呪われるという噂が広まったのか・・・。

俺以外にはいないのか・・・・。


・・・俺は存在していいのか?


「・・・・・」

黙って頷く。煙は笑った。

「フッ、そうか・・・知って何になる?知ってもお前は不幸になるだけだぞ?」

 タケルはそれでもかまわない・・・とまた頷いた。

黒い煙は巻きつくのをやめると、大きくなり、部屋を黒く染めた。すると、ホログラムのようなものが出てきた。それはどこかの国の映像だった。タケルはどこかで見たことがある・・・懐かしい気分がした。

「・・・この国の名前はラスカ。ここに行けばお前の知りたいことが分かるだろう」

 なぜ自分にそんなことを言うのか、タケルは分からないでいた。しかし、なにか裏がありそうで胸騒ぎが止まらなかった。

「では、また会おう。」

そういって黒い煙は姿を消した。


その朝。

「お兄ちゃん!行かないで!」

 カスミの泣き叫ぶ姿を背中にタケルは村から去っていった。



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