朝のひととき
「お嬢様、お起きください。朝ですよ」
「んぁぁ〜ぅ」
「あはっ、お嬢様は今日も可愛いですよ♪」
もう朝なんだ。フェルミルさん、いつもご苦労様です。フェルミルさん?なにを人の耳を触ろうとしているんですか?
ちょっ、くすぐったいです。
「やぁ」
「不思議ですね。奥様と旦那様は、人間なのに、お嬢様だけハーフエルフなんて」
私の耳は、エルフのように長い。だけど、エルフよりも短い。人間とエルフの混血、それがハーフエルフ。
なんで私だけハーフエルフ?っていう疑問はあったけど、隔世遺伝ということで納得することにした。
フェルミルさん、いい加減離してもらえませんか?ふにふにふにしないでください。
「はっ、いけないいけない。さ、お嬢様。奥様が待ってますよ」
フェルミルさんが、私を優しく抱きかかえる。まだ首も座っていない私のご飯は、お母さんの母乳。実際の年齢は0歳だけど、精神年齢は16歳の私には、母乳を飲むことに、少しくるものがある。ようは恥ずかしいのだ。
フェルミルさんの体って、あったかいな、やっぱり。
「奥様。お嬢様をお連れしました」
「あらあら、いつもご苦労様」
いつもの会話を交わし、フェルミルさんが、私をお母さんに渡す。そして、お母さんは胸を露出させ、私に母乳を与える。うぅ、やっぱり恥ずかしい。
「あら?眠くなっちゃったのかしら」
お腹が満たされると、睡魔が襲ってくる。お腹がいっぱいになり始めると眠くなる。こんなところは赤ちゃんそっくりなんだなぁ。とそんなことを考えながら眠りについた。
◆
フリージアは、手のかからない赤ちゃんだ。夜泣きをすることはないし、お腹が減ったからと言ってなくこともない。知り合いにフリージアと同じ0歳の赤ちゃんを持っているお母さんがいるのだけれど、フリージアを見て驚いていた。時々私とフェルミルの話を理解しているような言動を取る。話しかければ答えるし、おはようといえば、満面の笑みで返してくれる。とても頭のいい子だ。でも、誇らしげな気持ちになると同時に、少し寂しさを覚える。もう少し甘えて欲しいなぁと私は思う。
「寂しいっていっても、ほんの少しだけれど」
「奥様?どうかなさいました?」
「フリージアは?」
「はい、あのあとすぐ、お部屋へ連れて行き、ベッドへ寝かしました」
「ご苦労様」
本当に、フェルミルちゃんはよく働いてくれている。そんなに高いお金を払っているわけではないのに、私と、あの人と、フリージアによく尽くしてくれている。私の家は、それなりに裕福だけれど、将来のフリージアのために貯金をしている。その分、フェルミルちゃんに渡せるお金が少なくなっているのだけれど。
「ごめんね。あまりお金を払えなくて」
「いえいえ、そんなことはないですよ。お金以上のものを与えてもらっています。特にお嬢様は素晴らしいです。あの愛らしさ。つぶらな瞳。あの笑顔。手を振ると、もみじのようなちっちゃいおててを振り替えしてくれる。抱きかかえたときに見せるあととろけたお顔。ああ、お嬢様、愛しています」
……また始まった。フェルミルちゃんにフリージアを語らせると長いのよね。可愛いのには同意するけれど。あの子、魔法を覚えてくれるかしら。まあ、そこはまたおいおい。
うん、紅茶が美味しい。今日もまた、いい天気。