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第1話 地獄会議(上)

需要がありそうなら続きを書こうと思いますので、良かったらお気に入り登録や評価をしてやって下さい。


感想もお待ちしております(きつい言い方をされると凹むので、表現はお手柔らかにお願いします)

「時間ですね。それでは第69回地獄会議を始めたいと思います」


正午を報せる鐘が鳴った瞬間、円卓の一席に座っている少年が彼と同様に円卓を囲むように座っている5名の男女に向かって宣言した。


「……69回?俺たちがこうして一同に会すのは今回が初めてだったと思うが?」


円卓を挟んで真正面に座っている男が、少年の言葉を聞いて訝しげな視線を送った。


「いやぁ~、実は69って僕の一番好きな数字なんですよ。ちなみに理由はですねぇ?」


「おい、色ガキ?これ以上アタイの前でくだらねぇことをほざく心算なら、てめぇの自慢の息子を握り潰すぜ?」


男の疑問の声に、待ってましたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべて解説し始めようとした少年に向かって、男の左隣に座っている少女が殺気を込めてつつ少年に忠告した。


「マモンさんは相変わらず過激ですねぇ?僕としては握られるよりも扱かれる方が好きなので、是非とも後者でお願いします」


「アタイの握力に耐えられたら、いくらでも扱いてやるよ?早速試してみるかい?」


マモンは円卓の上に所狭しと並べられていた料理の数々の中からリンゴを選んで掴み取り、一瞬でグシャリと握り潰した。


「アハハ……今日はちょっと体調が優れないんで、遠慮しておこうかな?」


「てゆーか、それ私のリンゴなんだけど……」


少年とマモンの間に座り黙々と食事を続けていた少女が、無残に砕け散ってしまったリンゴの残骸を名残惜しそうに見つめている。


「む?すまんベル。これをやるから許してくれ」


リンゴを握り潰し果汁でベタベタになった手を布巾で拭い、自分の分のステーキを悲しみに暮れる少女(ベル)へと差し出した。


「わーい!お肉だぁ!いただきまーす!!」


少女(ベル)は皿ごと差し出されたステーキにフォークを突き刺し、200g以上はあろうかという肉の塊をそのまま一口で平らげてしまった。


「はぁ……ベルゼブブは相変わらずの食べっぷりね?その内オークみたいにブクブク太っても知らないわよ?」


ベルゼブブとは少年を挟んで反対側の席に座っている少女が、その光景を見て嘆息と共に呆れた表情を浮かべている。


「モグモグ、モグモグ……ゴックン。私って、どんだけ食べても太らない体質だから大丈夫だよ?」


「……ベルゼブブ?アンタ今、地獄中の女を敵に回したわよ?」


少女は口元を引き攣らせながら、さらに食べ続けるベルゼブブに警告した。


「フッ……ベリアルは売り出し中の大人気アイドル様だし、同業者以上にダイエットが最大の敵って感じなのかしら?」


ベリアルの左隣に座る女が、微妙に嫌味を含ませた口調で呟いた。


「【嫉妬】は見苦しいわよ?お・ば・さ・ん?」


ベリアルは女の嫌味を華麗にスルーしつつ、逆に挑発し返した。


「もう一度言ってみなさいな、小娘?貴女がシークレットライブとか言って、極秘に自分のファンを集めて乱交パーティしてるのは知ってるのよ?このネタを週刊誌にタレコミしたら、どーなるかしら?」


女はベリアルの挑発に乗って、更に言い返す。


「人間なんかにヤらせてあげる訳ないでしょ?アイツらなんか足コキで十分よ!」


ベリアルは椅子を引いてミュールを脱ぎ、両足で棒状の物を挟んで扱く仕草をして見せる。


「まったく……下品な小娘ね?貴女って【傲慢】よりも【色欲】の方が合ってるんじゃないの?」


女はベリアルの卑猥な行為に不快感を示し、蔑んだ視線を送った。


「……レヴィ、その辺にしておけ。話が進まないだろうが?」


「申し訳御座いません、サタン様。ベリアル、私が言い過ぎたわ。ごめんなさいね?」


最初の発言以降、ずっと目を瞑って何かに耐えるように黙っていた男が注意をすると、(レヴィ)は一瞬で態度を豹変させ、ついさっきまで口喧嘩していた筈のベリアルにまで本音はどうあれ謝罪する始末であった。


「う~わ!あからさまにサタンに媚びちゃってまぁ……レヴィアタン、アンタ、マジキモいんですけど?」


ベリアルはレヴィアタンが自分に謝って来た事以上に、(サタン)に好かれようと必死に媚びている様子にドン引きしていた。


「そんなことよりも、レヴィアタンさん。ベリアル嬢には【色欲】が相応しいなどという先の発言は、僕に対する最大級の侮辱です。即刻謝罪を要求します!」


そして思いがけず流れ弾を受けることになってしまった少年は、憤慨した様子でレヴィアタンに抗議した。


「……確かにそうね、アスモデウス君。ごめんなさい。貴方に比べたら、ベリアルなんて未通女(おぼこ)も同然だったわ」


レヴィアタンはアスモデウスの数々の武勇伝(下ネタ限定)を思い出して素直に謝罪した。


「いえいえ、分かってくれれば良いんですよ。さて、気を取り直してそろそろ本題に入りましょうか?」


アスモデウスはおふざけはここまでだとばかりに、少し真面目な口調で話し始めた。






今現在、地獄には7つの町が存在している。


傲慢の町『プライド・シティ』


嫉妬の町『エンヴィー・シティ』


憤怒の町『ラース・シティ』


怠惰の町『スロウス・シティ』


強欲の町『グリード・シティ』


暴食の町『グラトニー・シティ』


色欲の町『ラスト・シティ』


これら大罪の名を冠する7つの町を、7人の上級悪魔がそれぞれ統治しているのだ。


人間界のサミットのように各町の代表が一堂に会して話し合いの場を設けるなどということはこれまで一度として無かったのだが、この度そうも言っていられない懸念事項が発生したが為に、本日正午に地獄史上初となる地獄会議(サミット)が開かれたのだった。


「ベルフェゴールさんが欠席なのは残念ですが、彼女の性質上致し方ありませんね」


「あの子は【怠惰】だからね。サボリはある意味予想通りよ。むしろ自主的に出席しようものなら、天変地異の前触れか?ってみんなに騒がれるわよ、きっと?」


アスモデウスの言葉に追随するようにベリアルは頷いた。


「アレはただの引き篭もりだろう?色ガキ、貴様が我らを召集したのだから、今からでもあやつの城に行って、力ずくで部屋から引き摺り出してこんか!」


「いやぁ~、そう言われましても、僕は女性に手を上げることなんて出来ませんし……」


「てゆーか、そんなこと出来るのは【憤怒】のサタンか【強欲】のマモン、アンタらのどっちかくらいでしょ?」


マモンの指示にアスモデウスは苦笑と共に肩を竦め、ベリアルはそもそも前提条件が間違っていると指摘した。


「そーですねぇ……では、こんな手はどうでしょう?ベルゼブブさんのご飯を取り上げて、ベルフェゴールさんの指示だとだと唆すんです。きっと怒って城から引き摺り出してくれるのではないでしょうか?」


「それは下策中の下策だな。ベルが暴走したらアタイでも殺さずに無力化するのは困難を極める。最悪ベルフェゴールの奴が死ぬぞ?」


アスモデウスがこれは名案だとばかりに提案するが、マモンによって却下されてしまった。


「モグモグ……ん?マモンちゃん、どーかしたの?」


マモンが一心不乱に料理を食べ続けているベルゼブブに目をやると、視線に気付いたのか首を傾げて見つめ返して来た。


「いや、何でもない。食事を続けてくれ。そーだ、これもやろう」


「わーい!マモンちゃん、大好き!!」


マモンからデザートのプリン・ア・ラ・モードを受け取ったベルゼブブは、ご機嫌で食事を再開し始めた。


「むぅ、良い案だと思ったのですが……」


そんな微笑ましい2人の様子を眺めていたアスモデウスは、無念そうに項垂れた。


「はぁ……貴様らいい加減にしろ!?ベルフェゴールには今回の会議の内容を纏めた親書を送っておけば済む話だろうが!そんなことよりも早く本題に入れ!明日は俺の娘の誕生日パーティがあるんだぞ?万が一にも遅刻しようものなら、貴様ら纏めて皆殺しにするぞ!?」


サタンは【憤怒】の名に相応しい激昂した様子で、再び雑談を始める彼らに脅しを掛けた。


「やっだぁ~!サタンったら、ちょ~こわ~い!それでも元大天使ルシフェル様なのぉ~?」


「ちょ、貴女それは禁句……」


魔界全体からすれば超一流の実力を持つべリアルといえども、この場にいる6人の中では一番の若輩者であり、魔力も乏しかった。


しかし、それを【傲慢】たる彼女が許容出来る筈もなく、相手も考えずにいつものように軽口を叩いてしまった。


普段のサタンは堕天の影響で力が極限までセーブされてしまっているので、この中の面子では下から数えた方が早い程度の魔力しか発揮出来ないが、本気でキレたら6人を同時に相手取ったとしても赤子同然に捻り潰すことが出来るほどの魔力を秘めている。


それほどまでに彼の真の実力は地獄の中でも突出してた物であった。


ベリアルもサタンの真の実力を周りから聞き知ってはいたものの、一度も自分の目で直に見たことが無かった為に、話半分程度にしか理解していなかったのだ。


その所為でついうっかりサタンにとって最大級のNGワードを面と向かって口に出してしまうという、自殺志願者のような行動を取ってしまったのだった。


そんな哀れな自殺志願者(ベリアル)の暴言にいち早く反応したのは、2人の間に座っていたレヴィアタンだった。


しかし、その指摘は完全に遅きに失していた。


サタンは忌まわしき過去の名を耳にした瞬間、椅子から飛び上がり、ベリアルへと殴り掛かっていたからだ。


膨大な魔力により強化されたサタンの身体は音速すら超越し、拳に至ってはマッハを超えていた。


そして、サタンの姿が皆に目視出来た時には、サタンの右拳はベリアルの左頬に触れるコンマ1mm手前で静止した。


「……え?」


ベリアルは自らの左頬の産毛に触れているサタンの拳の感触と、それに込められた異常な量の魔力を漸く感じ取っていた。


彼女にはサタンの動きが全く見えていなかった。


気付いた時にはサタンの拳が自分の頬に添えられていたのだ。


彼女が唯一理解出来たのは『自分は今、死に掛けたのだ』ということのみだった。


「ベリアル、娘と同じ年頃だったことに感謝するんだな?だが、二度目はないぞ?」


「は、はい……ごめんなさい」


サタンの静かな怒気に射竦められたベリアルは僅かながら失禁してしまい、もはや【傲慢】の彼女といえども、そう口にするのが精一杯だった。


「え、えーっと……それじゃー改めて会議を始めたいと思います。議題はただ一つ『天使による拉致問題』についてです」


アスモデウスはシンとしてしまった場の空気を少しでも換えようと明るい口調で司会を始めるものの、流石にそれは不可能だった。

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