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俺とメアドと昼休みと





昼休み─


「おい、佐倉」


「何?」


仏頂面をした柳瀬が、なぜだか俺を睨みつけている。


「俺は今なぜここにいるんだ?」


「え、なに、柳瀬、記憶喪失?」


「柳瀬大丈夫!?病院に行かなきゃ!僕、救急車呼ぶね!」


「呼ばんでいい!てかそういう意味じゃない!」


携帯を取り出そうとしている小林の手を押さえて柳瀬が叫んだ。


「じゃあどういう意味さ?」


「なぜ俺までお前に付き合わなきゃいけないんだ、と聞いてるんだ!」


「うーん…なんとなく?」


そう答えた瞬間、柳瀬がものすごい剣幕で俺に殴りかかってきた。

それを小林が柳瀬を羽交い締めにし、必死に止めた。


「離せ、小林!」


「だ、だめだよ!柳瀬落ち着いて!」


道行く人々がこの光景を見て、怯えたりひそひそ話をしている。

ったく。柳瀬のせいで変に目立っちゃったじゃないか。

目立つのは嫌いじゃないけど、この視線はどうにも居づらい。


というわけで、俺は小林が柳瀬を押さえ込んでくれている間に、用を済ませることにした。



1ー4と書かれた札が掛かっている扉を開け、中を見渡す。

いきなり開かれた扉にその中の人々の目線が集中したが、俺は特に気に留めず、目的の人物を探した。

すると、奥の方に、きれいで長いポニーテールを揺らしてこちらを振り向く姿が見えた。…彼女だ。


「さゆりちゃん!」


その声に反応して、さゆりちゃんは椅子から立ち上がり、俺の立っているドアの付近まで小走りでやって来た。


「佐倉先輩!…それに、柳瀬先輩と小林先輩まで」


「よく俺たちの名前まで覚えてたね。というか教えたっけ?」


気づけば小林の羽交い締めから解放されていた柳瀬が不思議そうに尋ねた。


「3人でお話しされていたときに名前を呼ばれていたので」


「ああ、なるほどね。でもそれだけでよく覚えてたね」


「私、人の顔と名前を覚えるのは得意なんです」


ふふっ、と笑い少し得意気にそう言ったさゆりちゃん。

ああ、今日もかわいいなぁ…。



「先輩方、なぜここに?」


今度はさゆりちゃんが不思議そうな顔をして尋ねてきた。

気になるのも仕方がない。

俺らは2年で、ここは1年の教室が立ち並ぶ廊下。学年ごとに階が異なるから、他学年がいることは少ないのだ。


「実は、さゆりちゃんに連絡先を聞きに来たんだ」


「連絡先、ですか?」


「そう。この前聞こうと思ってたのに聞き忘れちゃってさ」


「そうだったんですか」


「こいつに連絡先教えたら、毎日ストーカーメールが来るぜ」


「柳瀬!変な嘘つくんじゃねえ!」


「あながち間違ってないんじゃないか?『今日も素敵なポニーテールだね』なんて送りそうだけどな」


「送らんわ!さゆりちゃん、本気にしないでね!」


「そんなメールが毎日来るのはさすがに怖いですね…」


「さゆりちゃん!?」


「ふふっ。冗談です。佐倉先輩、連絡先、交換しましょう?」


さゆりちゃんはブレザーから真っ白いケータイを取り出して、俺に微笑みかけた。


「私から送りますね。赤外線で大丈夫ですか?」


「おっけ!」


俺も急いでケータイを出し、赤外線受信の画面に切り替える。

さゆりちゃんと俺のケータイが近づき、少しすると、画面に『受信完了』という文字が写し出された。


「さんきゅ!じゃあ次は俺が送んね」


もう一度お互いのを近づけ、少し待つ。


「あ、来ました。ありがとうございます」


「よしっ。これでいつでも連絡できんね」


「そうですね」


「よかったね、佐倉!」


「これでやっと待ち伏せに付き合わされずに済むよ」


「僕は待ち伏せ楽しかったけどなー」


「お前物好きだな」


「さゆりー」


いつものように談笑(?)をしていると、教室の中から女の子が出てきた。


「さゆり、そろそろ食べないと時間なくなっちゃうよ?」


「わかった。もう戻るね」


その子が教室の中に戻っていった後、さゆりちゃんは少し残念そうな顔をした。


「ごめんなさい。5時間目が体育で準備をしなければいけないので、そろそろ戻りますね。」


「そうなんだ。時間とらせちゃってごめんね」


「いえ、楽しかったです。それでは、また」


さゆりちゃんはにっこりと微笑むと、教室の中に入っていった。




「じゃ、俺らも戻って昼飯にすっか」


「そーだね。お腹空いたし」


「てかもうこんな時間じゃねーか。ったく、俺の貴重な昼休みを半分も潰しやがって」


「まあまあ、いいじゃん。そのおかげで連絡先ゲットできたんだしっ」


「お前が得しただけだろ!…明日の昼は佐倉のおごりな」


「は!?ムリムリムリ!俺金欠!」


「知らん。こんなくだらないことに付き合ってやったんだ。それくらい当然だ」


「柳瀬の鬼ーーーーーー!!!!!」




アドレス帳が潤った反面、俺の財布の中身は消えていくのだった。





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