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        勝者と敗者

 

 昔から思っていた。

 辛い事。

 悲しい事。

 腹立たしい事。

 許せない事。

 心が壊れてしまいそうな痛み。 

 誰かにすがりたくなるような孤独。

 消えてしまえば良い、そんな風に思っていた。

 心なんて、こんな痛みが伴う心なんて、どこかに行ってしまえば良いのにって。

 でも同時に思う。

 心が無くなってしまったら。

 生きている事に、どれほどの意味が有るのかって。 


 山南敬やまなみたかしは、決定的なチャンスを逃し、この闘いに敗北した。

 その敗北は、『殺害用』の矢を身に受けた瞬間に、敬は悟っていた。

 だが、その心のどこにも後悔など微塵も存在していなかった。

 不思議な感情だった。

 今までの人生の中で、達成感を感じた事は数少ない、その数少ない中のどれよりも今は誇らしい気持ちで一杯だった。

 負けたのに、悔しくない。

 いや、それは嘘だ、悔しい事は悔しい、だがその悔しさが粘着質の炎ではなく、どこかさっぱりとした物だと言う事だけだ。

 全力を尽くしたからだと思う。

 そして貸し借り無しの状況での闘いだったからだと思う。

 最後の最後で、雅彦のとった策。

 あの、人質をとるような行動も、まるで非難する気にはなれなかった。

 使える物はなんでも使えば良いんだ、それに引っかかった自分が間抜けなだけだ、そう思っている。

 体の全てがカラカラだった。

 何もかもが吸い取られていくような、そんな感覚を味わっている。

 どうやら、この矢には水分を吸い取る効果が有るようだった。

 咄嗟に、その矢を抜いたのだが、それが手遅れだと言う事も分かっている。

 なるほど、と思う。

 人だろうと何だろうと、大抵の生物はその基本は水分に頼っている部分がある、それを吸い取る攻撃というのはまさに『殺害用』だと言える。

 それにしても、凄い男だった。

 こういうのは勝った相手が負けた相手に言う物なのだろうが、相手にとって不足無しであった。

 最強の相手であり、最高の相手だったと思う。

 本当に最強の戦士という奴なのだろうと思った、天性の才能、この全てが停止している空間でこそ生きる才能を有している男だと思った。

 それに何というか、真っ向から殺しに来たのが良い。

 躊躇いなどまるで無かった、そりゃ無意味に自分をわざと生かしたとしか思えない場面も有ったが、その部分も差し引いても最強の相手だったと言える。

 もう、体の自由は利かない。

 強烈な倦怠感が有り、体の全ての血管が泥を流しているように重く感じられる。

 これで、倒れたらもう自分は起き上がる事が出来ないかもしれない。

 そう思いながらも、どうする事も出来ずに、敬は引力に引かれるままに前のめりに倒れた。

 

 地面の温度が、心地良かった。

 体を酷使したから、全身の緊張が取れていくように感じる。

 固く結んだ紐がほどけていくような、体中の水分が抜けている癖に、自分という存在が液体となって大地に流れ出ていくような、そんな気分だった。

 凄い闘いをしたのだ。

 平凡極まる人生を歩んできたというのに、最後の最後でこんな闘いをする事になるなんて夢にも思わなかった。

 相手は最高の相手で、こちらも全力でそれに――

 いや。

 本当に全力出し切ったのだろうか?

 そうだろうか。

 まだ有るだろう?

 いつだって、そうだ。

 何をやるにしても、全力を出し切らない癖が付いているんだ、それが体の芯にまで染み渡っているから、こんな大事な場面でもほんの少し、僅かでも力を残しているんじゃないか?

 部活をやっていた時もそうだ。

 高校の受験勉強をしていた時もそうだ。

 いつだって、どこか余力を残していた。

 必死になるのが、全力を出し尽くすのが格好悪いと、どこかで思っていたからだ。 

 それと同時に、自分自身の全てを出し尽くして、それでも失敗してしまったら、もしかしたら立ち直れないほど傷つくかもしれないと思うと怖かったのだ。

 そうだったら、それは許されない。

 この闘いに対する冒涜に他ならない。

 世界中の誰もが許しても、この自分自身はそれを決して許さないだろう。

 起き上がれる力が残っているのか?

 分からない。

 分からないのならば、試しに立ってみれば良い。

 心音が聞こえない気がする。

 いや、気のせいだろう。

 心臓が動いているかどうかなんて気にするな、意識が有ると言う事はまだ生きていると言う事だ。

 人の体は細胞により造られているが、それを動かすのはあくまで人の意思だ、それがまだ有ると言う事は生物学的に見て死んでいても、この世のどんな名医が死亡診断しても生きているのだ。

 ほら――

 起き上がれるじゃないか。

 まるで、生まれたての仔馬のようだけれども、その両足は大地をしっかりと踏みしめている。

 

 立った。

 立つ事が出来た。 

 いや、別に立つ事が最終目標じゃない。

 攻撃だ。

 もう、武器なんて右の拳しかない。

 確か、雅彦が落とした銃が有るが、そんな物を拾いに行ったら、途中で終わってしまうのは間違いない。

 蹴りなんて出せるだけの余力は無い、大地を踏みしめているので精一杯だ。

 だから拳しかないんだ。

 こんな状態の拳が白鳥雅彦に当るなんて思っちゃいない。

 ましてや、こんな攻撃が仮に当っても、これで白鳥雅彦を倒せるなんて思っちゃいない。

 じゃあ、何でこんな事をするのか。

 苦しい。

 もう肉体の限界はとっくに超えている。

 それなのに。

 勝てる見込みも無いのに。

 勝てるとも思っていないのに。

 どうして拳を打ち込もうとしているのか。

 きっと伝えたいからだ。

 何を――?

 言葉に出来ない物。

 自分が全力を出し切ったという証かもしれない。

 だが、それも言葉に出来ない物の一部に過ぎない。

 もう、すっかり水分がなくなって、ミイラみたいな状態だけれど、強引に体を動かして、こうやって攻撃が出来るって所を見せ付けたいのかもしれない。

 誰にか?

 白鳥雅彦にじゃない。

 自分という存在を生み出した神でもない。

 他の誰でもない。

 自分自身に対してである。

 まるで鉛のような重さの右拳を振り上げた。

 何て重いんだ……

 一歩踏み出す、この足も重い、思わず倒れてしまいそうになる。

 だけど倒れる事は出来ない、歯を食い縛った、だが食い縛ってもその歯には僅かほどの力も加えられていなかった。

 拳は雅彦に向かっていく。

 もう視力は駄目だ。

 何も見えない、無明の闇が広がっている。

 ただ、右拳が突き進む感触だけが、山南敬の全感覚であった。

 その拳に何かが触れた。

 間違いなく何かが。

 

 それは掌では無い。

 肘でもない。

 別の物体ではない。

 防がれずに、間違いなく拳が白鳥雅彦の顔面に当っていた。

 どういうわけか雅彦はその攻撃を避けなかった。

 敬の右拳から、もう感覚の無い全組織に伝令が伝えられた。

 歓喜。

 そう、歓喜の稲妻がこの世から消え去りそうな山南敬の全てを貫いていた。

 まるで何かが目の前で爆発したような歓喜が敬の全身を叩いていた。

 もう光などまるで網膜は捉えられないというのに、その両目には眩いばかりの光が差し込んでいるように感じられた。

 今まで、どうしても砕かれる事の無かった壁が決壊し、そこから歓喜が濁流のように注ぎ込まれているようだった。

 学生時代の話だ、正確には中学二年生の頃、敬は学校のクラスで不良の部類に入る生徒とちょっとした揉め事を起こして、あるい日を境に嫌がらせをされるようになった。

 そのとき、敬は学校に行くのが嫌で嫌で、もういっその事死んでしまいたい――そう思った時が有る。 

 今から思えば、大した悩みでもない、世界中にはもっと不幸な人間もいるし、社会に出れば辛い事なんて山ほど有る。

 だけれど、その時の自分にとっては、それは命に左右するほどの事態だったのだ。

 だが、ふと思った。

 今、突然100万円が目の前に降って来たら自分はどうするだろう。

 それをどう使うか考えるだけで、頭の中は幸福になるような気がする。

 たかがそれだけで、である。

 だが、自分自身の命にはどう少なく見積もっても100万円以上の価値は有るだろう。

 それなのに、それを容易く捨てて良いのだろうか、と。

 そう考えて自殺を思い留まった、もっとも実際にかなり追い詰められていても、その当時の敬は自殺などする勇気は無かっただろう。

 今、それを何故か思い出していた。

 思い留まって良かった。

 あの時死ななくて良かった。

 そういう思いを含めた様々な思いが、敬を包み込んでいた。

 まるで、巨大なそれでいて慈愛に満ちた存在に、抱擁されているような、そんな安堵感を敬は味わっていた。


 自分自身が嫌いだった。

 自分自身に自信が持てなかった。

 自分らしさなんて物を何一つ見出せなかった。

 他人と接する時に、人の眼を見て話せないような自分が嫌いだった。

 今は?

 今は言える。

 胸を張って言える。

 好きだ。

 こんなにも愚かしくて、あんな自分の命が左右される場面で、子供に気を使い間抜けにも拳を止めてしまった自分が好きだ。

 最後の最後で、力なんてほとんど残っていない、そして勝算もまるで無いと分かっているくせに立ち上がって、そして拳を放った自分が好きだ。

 傷だらけであり、もはや死に行くだけの自分が好きだ。

 家の中で一人で遊ぶ自分。友達と遊ぶ自分。食事する自分。歌を歌う自分。待ち合わせに遅れそうになり慌てる自分。仕事をする自分。何も無い所で転ぶ自分。傘を忘れて夕立に濡れながら走る自分。人を想う自分。嫌われるのを恐れる自分。あくびする自分。怒る自分。泣く自分。笑う自分。つまらない悪戯をする自分。自分が助かりたくて人を殺した自分。こうして倒れていく自分……

 大好きだった。

 良い所も、悪い所も、その全てを合わせたのが自分だ。

 どれか一つを切り離して考えられない。

 その全てを合わせて自分の事が好きだと言える。

 敬は結局生涯で会う事が無かったが、最愛の恋人が出来たとするならば、その人間の一部分だけを美化して付き合うのではなく、その悪い部分もちゃんと見てそれでいて全てを愛するような、そんな感覚だった。

 今の、体中の水分が、体中の生命力が、恐ろしい速度で肉体から離れていこうとしているさなかでありながら、敬は妙に胸に何かが漲ってくるような物を感じていた。

 それは何なのか。

 誇り?

 勇気?

 いや、そうかもしれないし、違うかもしれない。

 それだけでは言い表せない物。

 だが、それは自分自身が今まで決して手に入れられずに、どうやってそれを手に入れたらいいのか、それを考え続けてきていた物のような気がする。


 最後の最後。

 こういう感情がこの世に存在していたのか、そう思えるほどの鮮やかで、壮大で、雄大で、そして何と宇宙的。

 全てが真っ暗闇の山南敬の視界に、宇宙が浮かび、そこから全てを見下ろしているような、そんな気分を味わっていた。

 宇宙の一つに地球が混じっている、地球など宇宙レベルで見れば豆粒よりも遥かに小さい存在である、そしてその中の人などは更に小さい存在だ、だがその小さな存在に愛しささえを感じていた。 

 見下ろしているのに、優越感を感じる訳ではなく、ただ赤子を抱いた母親のような、そんな気分を何故か敬は味わっていた。

 もう、僅かの、そう指先一つ動かせるだけの力も残っていない。

 抜け殻だ。

 もう山南敬という存在は、その肉体という属性を捨てていた。

 肉体という鎖から解き放たれていた。

 ぶちん、という鈍い音をその耳で確かに聞いたような、そんな気分を敬は味わっていた。

 今まで、敬を縛っていた全ての鎖がその瞬間に、敬を解放したのだった。

 天を舞うような気分。

 いや、実際に舞っていたのかも知れない。

 信じられない解放感だった。

 軽い。

 体がこんなにも軽いのか。

 そしてこんなにも世界は輝いているのか――

 それが、山南敬が最後に思った事であった。

 山南敬は、そうして、その生涯を終えたのだった。

 100歳まで生きて、最後の瞬間を大家族に温かく見守られながら迎えるような、そんな幸福感を味わっていた。

 眩い光に全身が包まれているような、そんな感覚であった。

 満足だった。

 敬の顔に笑顔が浮かんだ。

 良い笑顔だった。


 一方、その山南敬の前に立つ男、白鳥雅彦しらとりまさひこには、そんな満足感も幸福感も微塵も感じられなかった。

 親友に裏切られて、恋人や財産、果ては命までも取られても、このような表情は浮かべられないであろうという表情がそこには存在していた。

 絶望を超えた絶望。

 それが今の雅彦の表情を表すに最も適した言葉だろう。

 奇妙な光景だった。

 最高の満足感と幸福感を味わってこの世を去る敗者と、絶望を超えた絶望を味わう勝者であり生存者の二人。

 雅彦は、こんな感情は今まで感じた事が無かった。

 このような感情がこの世界に存在していた事すら知らなかった。

 耐え難い苦痛。

 押さえ難い悲痛。

 息をするのにさえ激痛が走るような、そんな感触が今の雅彦を支配していた。

 どうしてなんだ――

 どうして自分を置いて死んでしまったのか――

 我が子を失ったような。

 両親を失ったような。

 自らの半身を失ったような。

 そんな絶望を雅彦は味わっていた。

 こんな事があって良いのか。

 この世の基本は理不尽であり、そして不条理だ。

 それを幼い頃から悟っていたはずの白鳥雅彦が、涙を浮かべながら何者かに抗議するように激昂しながら叫んでいた。

 その表情は、もう仮面だろうが素顔だろうが関係無い、荒れ狂った海のような表情であった。

 恥も外聞も無い。

 きっと知り合いがこの雅彦を見ても、同一人物とは思えないほど、顔が変形していた。

 感情は人の表情を変える、だがこの場合はそれがいちじるしく顕著けんちょであった。 

 一気に老けて見えた。

 先ほどまでの雅彦よりも、10歳ほどは間違いなく歳を経たように見える。

「動け! 勝手に死ぬんじゃない!」

 雅彦は、もう、屍と化した敬に対して、憤怒の抗議とも、あるいは悲哀の懇願とも取れるそんな言葉を投げつけていた。

 もちろん、その言葉に敬は何の反応も見せない。

 動く訳が無いのも雅彦は分かっている。

 悲壮感が漂っていた。

 満足気な笑みを浮かべてこの世を去った敗者を前に、絶望の淵に叩き落されたような表情の勝者が立っている。

 世にも奇妙な光景だった。

 だが、雅彦はそんな奇妙さに構っていられるほどの余裕は無かった。

 雅彦は、叫んだ。 

 魂が壊れそうなほどに叫んでいた。

 叫びながら、敬に右の拳を叩き込んでいた。

 

 サクッ


 そのような音がした、雅彦の一撃で、敬はその半身が砂のように砕け、空気へと溶け込むように流れていた。

 それほどまでの状態になりながら、敬は立ち上がり、そして拳を打ち込んできたのだ。

 敬の体の残った半分が、地面に崩れ落ちた。

 その様子を見て、雅彦は自分でそうしたにもかかわらず、また幼児のように泣きじゃくりながら、その敬の死体にひざまずくようして、その半身を抱きかかえていた。

 雅彦は地面を拳で殴りつけていた。

 皮が破れ、血が噴出してもそれを止めようとしなかった。

 助けて欲しかった。

 誰でも良い。

 この苦痛から。

 この悲しみから、解き放って欲しかった。

 こんな感情は要らなかった。

 こんな物を求めていた訳じゃなかった。

 こんな心が欲しくて、今まで生きてきた訳じゃなかった。

 こんな心なんて――


「要らない……か」

 

 突然、その声が響いていた。

 雅彦は、敬の体の半分が欠損している遺体を抱えながら、その声の方向に視線を向けていた。

 さっきまでは誰もいなかったはずだ。

 それに、まだ世界の停止が終わっていない、実際雅彦が盾代わりに利用した少女も、その横に立っている母親も、その他の通行人全てが停止したままだ。

 一体こいつは誰なのか。

「誰だ! お前は!」 

 その声には怒りが込められていた。

 全ての感情、そのはけ口を見つけたように、雅彦は因縁をつけるようにその男に大声を発していた。

 その男は、奇妙な格好をしていた。

 雅彦は、その服装を形容できなかった。

 今まで見てきたどんな格好ともそれは違っていたからだ。

 その男自身も何人なのかまるで見当が付かない。

 日本人では無い気がする。

 アジア系の顔ではない。

 だからと言って、アメリカやドイツ系の顔でもない。

 奇抜な顔ではない癖に、その国籍がまるで見当が付かない不思議な顔立ちをした男であった。

 身長は180cmほど、体重はやや体が大きめで90kgは有るかもしれない。

 年齢は30歳は過ぎているだろうが、では一体何歳なのかと言うと分かり難い。

 一体この男は誰で、何の為にここにいるのだろうか。

 だが、誰だろうと、只者では無いだろう。

 この場所に立っている事、そして激昂した白鳥雅彦に相対していても、まるで気圧されているように見えないからだ。

 あるいは、この男は敵なのだろうか?

 さっきの山南敬との闘いが最後ではなく、新たな戦いが始まったと言うのか。

 白鳥雅彦は優秀な戦士である。

 本人はそれを意識していなくても、闘った山南敬が評したように最高の戦士である。

 今まで渦巻いていたあらゆる感傷が一瞬で姿を消し、目の前の存在に対して反応していた。

 向かったのは、先ほど落とした敬の銃である。

 それを華麗な、僅かほどの無駄の無い動きで拾い上げ、そして移動の際に拾っていた小石をその銃に込めていた。 

 その作業をしている間も、その奇妙な男は雅彦をただその一連の動作を見ているだけだった。

 そして、雅彦は、銃口をその男に突きつけていた。

「さあ、答えろ! お前は一体――」 

 雅彦に銃を突きつけられているというのに、その男は表情をまるで変えなかった。

 それほど場数を踏んでいる雰囲気でもない、道を歩きながら停止している通行人と違うのは服装くらいの物だ。

 山南敬と比べて、この男から感じる物はほとんど無い。

 だが、この余裕は一体何なのだろうか。

 白鳥雅彦に銃を突きつけられたまま、男はゆっくりと口を開いた。


「もう、終わりで良い。今回は、ここまでにしよう」 

「何だと!?」

 終わりだと? 

 何が終わりなのか。

 そういう指図を受けるつもりは無い。

 勝手な事を言うな、そのような感情が雅彦に湧き起こっている。

 引金にかかった指に力が込められていく。

 あと、ほんの少し、僅かな力がかけられたら、『弾丸』が放たれていた瞬間、男が再度口を開いた。


「ああ……、君に言ったんじゃない」 

 その瞬間だった。

 雅彦の体は、他の通行人同様、その動きの全てを停止していた。

 



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