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【2-4】魔王候補と恋人(仮) ※

残酷描写が入っています。



 俺やアンナ、他の『魔王候補』達はその場で頭を下げた。

 扉が開き、『魔王』が謁見室に入る。『魔王』が謁見室に入ると同時に周辺が暗くなる。

『魔王』の周辺が暗くなるのは『魔王』の力が溢れ出ている為と言われている。


「頭を上げよ」


 頭を上げると、『魔王』は玉座に座り、こちらを見ていた。

顔はローブを頭からかぶり、見えない。だが、視線はこちらを見ているのは感じる。

「今宵はよくぞ参った。

 我の次を担う者達に会いたいと思っていたが、我がこの身なのでな。

 会うのに時間がかかってしまった。

 今宵はゆっくりと話そう」

 話す、だと?

普通、『魔王』と『魔王候補』が言葉を交わす事等ない。

今まで『魔王』と『魔王候補』が会う時は『魔王選定』の儀式の時だけと言われている。

魔族は強い者が頂点となる――頂点である『魔王』を討ちとった者が『魔王』となる。

『魔王候補』は名の通り、『魔王』に成り得る者である。その力は『魔王』と同等かそれ以上の時もある。

だからこそ、『魔王』は『魔王候補』と会う事をしない。

 『魔王』は一体、何を考えているのだ。

「陛下」

 一番最初に口を開いたのは『魔王候補』の中で一番最有力と言われる魔族の男だ。

名前は覚えていない。

「なんだ」

「私、陛下の顔を一度でもいいので、見たいと思っております。

 宜しければ、お傍で見ても宜しいでしょうか?」

 どう聞いても、殺すと言っている。

俺は『魔王』を慕っていないが、この場にいる『魔王候補』の1人が『魔王』になるよりかは今の『魔王』の方がいいと考えている。

 『闇魔王』が魔王の地位についてから、争いはなくなり、ディオーラにも『平和』が訪れた。

魔族にとって、『平和』はつまらないものであろう。だが、『平和』がある為、他の事に人を動かす事が出来る。

その事を他の『魔王候補』は思っているだろうか。

「よいぞ」

 『魔王』の言葉を聞き、男は

 『魔王』は気付いていないのか? 奴から発せられる殺気に。

他の『魔王候補』も嫌味な笑みを浮かべている。こいつらは『魔王』を殺すことしか考えていないのか。

「……大丈夫ですよ、ヴェルハーノ様」

 アンナが小声で俺に言う。

何が大丈夫だと言うんだ。アンナはこの状況が分からないのか。

「心配なさらないで下さい。

 さぁ、『舞踏会』が始まりますよ」

 俺は彼女の言う『舞踏会』の意味が分からなかった。

それ以上に彼女が俺に向けた笑みが何か意味を含んだものでそれが気になった。

 一体、何を考えているんだ、ミアン――


「さようなら、『闇魔王』」

 声がして、俺は玉座に視線を戻した。

 男は『魔王』の心臓を剣を突き刺していた。『魔王』は何も言葉を発しない。

心臓を貫かれ、すぐに息を引き取ったのか。

「ローザ!」

 男は伴っていた女の名を呼ぶ。女は何かを呟いた。

俺や他の『魔王候補』達は突然現れた鎖に縛られた。女が呟いていたのは拘束魔法か。

油断した。他の『魔王候補』達はこうなるのを予想していた者もいたのだろうか、対処できなかったようだ。

「ふふふっ、彼女の拘束魔法は魔族一だからな。『闇魔王』はもういない。

 後、この場にいる全員を殺せば、私がま――」

 『魔王』と言おうとした男の言葉が止まった。男の口から血が流れる。男の体を見ると、剣が男の体に突き刺さっていた。

『闇魔王』は男が殺した。他の『魔王候補』達は拘束魔法で縛られている。

「な……ぜ……」

 男はその場に崩れ落ちた。男の後ろには『闇魔王』の他に誰かがいた。その姿は闇に塗れ、分からない。

「イルヴァーレ様!」

 女は男に近寄った。しかし、男の元に辿りつけなかった。

男の元まで後2歩と言う所で女の頭が無くなった。

頭が無くなった胴体は首から血を噴き出しながら、その場に倒れる。女が死んだ事で拘束魔法が解けた。

俺と他の『魔王候補』は茫然とした。

 だった数分の間に3人もの魔族が死んだことにではなく、姿の見えない何者かがいる事に――。

「『闇魔王』が死んだ。この場にいる誰かが『魔王』となる……」

 『魔王候補』の1人が呟いた。

その途端、周りが殺気立った。この場で生き残れるのはたった1人――『魔王』となれる者だけ。

他の『魔王候補』の視線が俺に向く。弱い者から排除していく、そう考えているようだ。

 俺は素早く剣を構えようとする。

だが、それよりも早く動く『魔王候補』がいた。

死ぬ――そう頭によぎり、目を閉じた。

しかし、予想していた衝動は俺には来なかった。

俺は恐る恐る目を開く。

 そこには首から上がない胴体が立っていた。

服からして、俺を襲おうとした『魔王候補』だ。

なぜ、彼は首がないのだ。俺はまだ剣を構えてさえいないのに……。

 胴体がバランスを崩し、倒れる。胴体の後ろにいたのは俺のよく知る女性だった。


「アンナ――」

 アンナは右手に血塗れの剣を持っていた。着ている黒いドレスは返り血を浴び、赤黒くなっている。

他人てきに隙を見せては駄目ですよ、ヴェルハーノ様。

 すぐに殺されてしまいますから。

 貴方にはまだ生きていてもらわないといけないのですから」

 アンナは俺に的確なアドバイスを言う。だが、その言葉も今の俺にはちゃんと届かない。

今の状況がおかしいからだ。

なぜ、彼女は剣を持っている? なぜ、彼女は自分より早く、動ける?

彼女に対する疑問がつきない。

「ヴェルハーノ様、今は『舞踏会』の最中ですよ。

 『舞踏会』が終わったら、ゆっくり貴方の質問にお答えします」


 アンナはそう言い、俺に今まで見せた事のない笑顔をした。






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