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【1】小話
『久しいな』
「久しくないでしょ。
さっきも話しかけてきたじゃない」
『お前が男と話していたからな』
「見苦しい嫉妬ね」
『私はそういう性質だからな。仕方あるまい』
『しかし、やっと一人目か』
「やっととか言わないで。
この後は早いはずよ」
『お前がそういうのなら、早いであろうな』
「信じるの?」
『番を信じない者はいないぞ』
「あ、そう」
『無論、お前だからと言うのもあるぞ』
「……ありがとう」
『もっと素直に喜べ』
「そうね。私の名前を考えて、その名前で呼んでくれれば、喜ぶよ」
『……なら、早く私の処に戻って来い』
「えぇ」
「あ、今度、何か言ってきたら、相手しないから」
『……肝に免じておく』
これにて、第1章は終了です。
次章から舞台が変わります。