表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵の後悔  作者: ANSWER
7/7

7

「それにしても、あのジョン・ドゥと同じ味方になるとは。これまた、皮肉なえにしですな」

「知り合いか?」


ロドニーは深く頷いた。


「先代公爵閣下と共に戦場を駆け回っていた頃、相まみえたことがございます。当時はジョン・ドゥではない別の名を名乗っておりましたがね。なかなかに厄介な難敵でした。結果として私が勝ちましたが、止めを刺せず逃してしまいましてな。今でも時折夢に見るほど、実に手痛い失策でした」

「お前がそこまで言うとはな。相当強いらしい」

「せいぜい、今は牙の抜けた狼に過ぎません。だからこそ、晩年に拷問技師などという真似をしているのでしょう。私自身も似たようなものですが」

「私から見れば、お前は未だに現役のように見えるが」

「はは。実にありがたいお言葉ですな」


ロドニーは機嫌よく笑った。 ラルカンもまた、つられて笑みを浮かべた。正気に戻ってから初めて交わす真摯な対話に、胸を圧迫していた澱みが少し軽くなった気がした。


「ところで、坊ちゃま。先ほどから一番肝心なことが抜けているようですが?」

「何のことだ?」

「奥様のことですよ。あの女中ではなく、公爵家の真の主となる御方のことです」

「……」


ラルカンは黙って視線を落とした。雨に濡れた仔犬のように項垂れる姿に、ロドニーは眉をひそめた。


「聞き及ぶところによれば、人を放って奥様を捜しておられるようですが。奥様と再会した後、何をなさり、どんな言葉をかけるのか。予め決めておられるのですか?」

「わからん。私にも……どう謝罪し、許しを請えばいいのか分からぬのだ……」


いくら秘薬で操られていたとはいえ、ラルカンがエリザに行った仕打ちが消えるわけではない。すべての悪行をブランシェのせいにしたところで、彼がエリザに刻んだ傷はあまりにも大きく、深かった。


「脆いですな。坊ちゃまらしくもありません」

「それだけ私が犯した業が深いということだ。今はただ、エリザが無事であることだけを願っている」

「ふむ」


ロドニーは不満げにラルカンを睨みつけた。


「……もし、私が奥様の行方を知っていると言ったら、どうなさいますか?」


ラルカンが勢いよく顔を上げた。


「いくらお前でも、エリザについて嘘を吐くことは許さぬぞ」

「亡き先代公爵閣下と、私を産んでくれた両親の名にかけて誓いましょう」


他でもないロドニーがそう言ったことで、ラルカンの疑念は晴れた。


「どこだ? エリザは……今、どこにいる? 無事なのか?」


ラルカンの声が震えた。


「さあて。今の坊ちゃまには教えたくありませんな」

「ロドニー!」


ラルカンの怒号が屋敷中に響き渡った。しかし、ロドニーは相変わらず冷ややかな表情のままだった。


「早くエリザの居場所を言え、ロドニー! 私はお前の主だぞ!」


「そうでしたな。ですが、今は違います。まだ再契約を結んでおりませんので、私が坊ちゃまの命令に従う理由はありません。それでもどうしても奥様の行方が気になるのでしたら……」


ロドニーの口角が三日月のように吊り上がった。


「表へ出なさい。久々に、この私の手で坊ちゃまを直々に『再教育』して差し上げましょう」


ラルカンの表情が強張った。


しばらくして。 二人は庭園へと出た。それぞれ手に古びた木剣を握り、対峙した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ