心理テストで殿下は「お前を愛することはない」タイプだと判明した
最近、王都では「恋愛心理テスト」なるものが流行している。
どこから出回ったのかも分からない、いささか眉唾な代物だ。
内容もかなり怪しい。設問は花だの動物だの無難なくせに、解説だけは妙に断定的で、しかも時々ひどく失礼である。
だが、なぜかよく当たると評判で、私の周囲でも話題になっていた。
正直、最初はあまり信用していなかった。
だが――三回試して、三回とも当たっている。
一度目は友人の婚約相手だ。
表向きは穏やかで誠実な方だったが、結果は「独占欲が強く束縛するタイプ」だった。
まあ、その程度なら、と最初は思っていた。
少し独占欲が強いくらいなら、恋愛では珍しくない。
そう思っていたのだが、後日、友人が夜会に出ると聞いた途端、「誰と踊るのか」「何時に帰るのか」「誰が隣に座るのか」と矢継ぎ早に問い詰め、さらには会場の外で待っていたことが発覚した。
――人は見かけによらない。
二度目は、侍女の片想いの相手だった。
相手は鈍感で、好意に気づいていないと思われていたが、結果は「すでに好意に気づいており、距離を楽しんでいるタイプ」。
まさか、と思った。
だが数日後、その男性がわざと他の女性の話題を出しては彼女の反応を見て、密かに楽しんでいたことが分かった。
三度目は、私の叔母だ。
淑女として名高い叔母の結果は、「奔放で、恋愛において抑制がきかないタイプ」。
さすがにこれは当たるはずがないと判断した。
叔母は、少なくとも表向きは誰よりも礼節を重んじる人だったからだ。
だが後日、既婚でありながら別の男性と密かに関係を持っていたことが発覚した。
知りたくなかったが、ここまでくると偶然とは思えない。
いずれも驚くほど正確だった。
信頼性は高いと判断できる。
そして、ひとつ確かめたいことがあった。
殿下の恋愛価値観を。
その中で、私がどのような位置にあるのかを。
直接お聞きするのは、少し勇気が要る。
胸の奥をそのまま差し出すようで、どうしてもためらわれる。
だが、心理テストなら。
――私の婚約者である、アルヴィン殿下に対して。
だから私は、殿下に申し出た。
「心理テストを、させていただいてもよろしいでしょうか」
「……は?」
アルヴィン殿下は露骨に眉を寄せた。
いかにも面倒そうな顔だ。けれど、完全に拒絶しているわけではない。
「巷で流行っているそうで。一度、試してみたく」
少しだけ間を置いてそう付け加えると、殿下はしばらく黙っていたが、やがて小さく息を吐いた。
「……一問だけなら、付き合ってやる」
「ありがとうございます」
なんだかんだ言いながら、こうして応じてくださるところは、殿下の優しいところだと思う。
だから余計に分からない。
優しいのに、距離がある。その距離がなかなか埋まらない。
優しいだけなのかもしれない、と思ってしまう。
私は本を開いた。
「読者の皆様も、よろしければご一緒に」
「……読者とは何だ」
「殿下を見守っている方々です」
「誰に見守られているんだ俺は」
構わず、読み上げる。
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■第1問
あなたは目の前のケーキを見ています。
そのケーキには、ろうそくが立っています。
その本数は何本ですか?
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「……十本だな」
十本。
多い、と私は思った。
けれど、殿下なら不思議ではないとも思う。
むしろ少ないくらいかもしれない、とさえ。
「何だ、その沈黙は」
「いえ」
私は本へ視線を落とした。
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【解説】
その数字は、あなたの恋愛経験や関係の数を表しています。
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やはりそういうことらしい。
経験は豊富。
一人に留まる方ではなく、関係を重ねることにためらいがない。
つまり、特定の誰かに深く執着するタイプではないのだろう。
なるほど、と私は納得した。
胸のどこかが、すう、と冷える。
ちなみに、私は一本だ。
当たっている。
「理解いたしました」
「何をだ」
「では、第二問です」
「終わりではなかったのか」
「ここからが重要です」
「一問だけなら付き合うと言った気がするんだが」
「まあ、そう言わずに。お付き合いください」
殿下は呆れたように私を見たが、席を立ちはしなかった。
片肘をついたまま、こちらに視線を向けている。
結局そのまま付き合ってくださるあたり、やはり優しい。
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■第2問
あなたは森の中を歩いています。
前方に、一匹の動物が現れました。何の動物ですか?
次の中から選んでください。
A:狐
B:熊
C:うさぎ
D:犬
E:狼
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ここは読者の皆様も一緒に楽しめるところだ。
私はちなみに、うさぎだった。深層心理というものは、案外ばかにできないのかもしれない。
「……狼だな」
狼。
そうきたか、と私は思った。
まさかそこまではないだろうと高を括っていたが、納得もしてしまう。
孤高で、近づきがたく、懐に入れてくれないもの。
ぴたりと重なる。
私は静かに解説へ視線を移した。
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【解説】
あなたの恋愛に対する価値観が分かります。
A:狐
→「……おもしれー女」タイプ
刺激を優先するあなたは、相手そのものより“退屈しないか”で関係を見ます。興味を失うと驚くほど自然に離れ、手紙は既読スルーしがちです。そのくせ、書き付けはかかさず更新します。
B:熊
→「お前は俺が守る」タイプ
力で主導権を握り、守ることで関係を囲い込む傾向があります。自分に都合の悪い話し合いは後回しのくせ、相手の返信が遅いと、確認の手紙を次々と送りつけます。
C:うさぎ
→「さみしいと死んじゃう」タイプ
一人が苦手で、不安になりやすい傾向があります。手紙の返信が半日空いただけで不安になります。「何かお気に障ることをいたしましたか?」と何度も確認してしまいます。
D:犬
→「いい子にしてるから、そばにいさせて」タイプ
相手に選ばれることを前提に関係を築きます。従順でいることが愛される条件だと思っています。手紙には絵や記号をスタ連で送りがちです。返信は早いが、内容よりも反応を優先します。
E:狼
→「お前を愛することはない」タイプ
感情を表に出さず、関係を深める意思がありません。手紙は未読のままです。関係を築くことに煩わしさを感じているので、わざわざ自分から書くこともありません。距離を取り、そもそも関わろうとしません。
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お……「お前を愛することはない」タイプ。
やはり、と思った。
第一問と一致している。
経験はある。けれど、関係を深める意思はない。
理にかなっている。
この本、表現に品はないが、結論は明確だ。
多少言葉は荒いが、内容は一貫している。
……信頼性は高いと判断できる。
だからこそ、私との距離も縮まらないのだろう。
そう思うと、納得と同時に、少しだけ寂しい。
けれど、寂しいからといって事実が変わるわけではない。
「理解いたしました」
「だから何をだ」
殿下の声に、わずかな警戒が混じった気がした。
私は聞こえなかったことにした。
「では、第三問です」
「まだ続くのか」
「ここが重要です」
「さっきもそう言ってたな」
私は静かにページをめくった。
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■第3問
あなたは朝起きて家の廊下を歩いています。
すると誰かとすれ違いました。
最初に挨拶した人は誰ですか?
次に挨拶した人は誰ですか?
三番目は誰ですか?
(思い浮かんだ順で答えてください)
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「……状況が限定的すぎるな」
「直感で結構です」
「……最初は侍女長だな」
侍女長様。
王宮を取り仕切る、年若いのに非常に有能な女性だ。
殿下の日常にもっとも近いところにいる人でもある。
「次はレオン」
レオン様。
殿下の側近であり、幼い頃からの気の置けない親友だ。
「三番目は……お前だ」
一瞬、思考が止まった。
侍女長様。
レオン様。
……私。
呼吸が、ほんの少しだけ浅くなる。
私は静かに、本へ視線を落とした。
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【解説】
その順番は、あなたの中での優先順位を表しています。
一番目:最も意識している相手
大切な存在です。
その人のことが頭から離れません。
二番目:気にかけている相手
いつもその人のことを気にかけ、目で追ってしまいます。
三番目:後回しにしている相手
どうでもいい相手なので、おざなりにしがちです。
---
やはり。
第一位は侍女長様。
第二位はレオン様。
第三位は私。
非常に明確だ。
迷いがない。
どうでもいい相手なので、おざなりにしがち。
その一文が、妙に胸に刺さった。
笑って受け流せるほど、私は器用ではないらしい。
つまり、私は後順位であり、優先される存在ではない。
ふと、最近の光景がよぎる。
侍女長様。
お二人で親しげに話している姿をよく見かける。
とてもきれいな方で、仕事もできる大人の女性。
年も近く、二人並ぶとよくお似合いだ。
身の回りのことも任されているから、自然と距離も近い。
それから、レオン様。
レオン様の前では殿下がよく笑う。
くったくのない笑顔で、口調もくだける。
幼い頃からご一緒だからだろうか。私の知らないことを、当然のように共有されているように見える。
ですが――
私にも、優しく微笑んでいただいたことはある。
そこで一瞬だけ思考が止まった。
あのときの柔らかい目元を、思い出してしまったからだ。
けれど、私はすぐに首を横に振った。
あれは礼儀の範囲だろう。
あるいは、気遣いだ。
特別な意味はない。
それに、現に距離はある。
日が落ちる前には必ず帰される。決して自分からは触れない。
偶然手が触れたときも、殿下はさっと手を引いた。
ましてや甘い空気になったことなど、一度もない。
意識して距離を取っているように感じるのは、きっと私の気のせいではない。
政略結婚なのだから、当然だ。
だからこそ、知りたい。殿下が誰を見ているのか、どこに心が向いているのか、私のことをどう思っているのか。
直接お聞きするのははばかられる。
その点、この心理テストはちょうどよかったのだ。
紙の上の問いに答えてもらうだけで、私は答えに近づける。
たとえその答えが、少し痛いものだとしても。
私は静かに頷いた。
後回し。
関係を深める意思がない。
だから距離がある。
理論として完璧だった。
「理解いたしました」
「……その言葉を禁止したい」
殿下は頬杖をついて私を見つめていた。
少し呆れたような、けれど席を立つ気はなさそうな顔で。
その視線が妙にまっすぐで、私は少しだけ落ち着かない。
「では、第四問です」
「これが最後ではなかったのか」
「ここが最も重要です」
「毎回更新されていないか」
---
■第4問
あなたは魔物と戦っています。
背中を預けるとしたら、誰の名前を思い浮かべますか?
(具体的な人物名を一人)
---
「レオンだな」
即答だった。
……レオン様。
胸の奥が、すとんと落ちる。
驚きより先に、妙な納得が来たのが我ながら少し嫌だった。
私は、ゆっくりと本へ視線を落とした。
---
【解説】
その人物は、あなたが無意識に信頼している相手を表します。
あなたはその人に対して、
考えるより先に頼ることを選んでいます。
また、本能的に心を許している相手であり、
恋愛感情に近い感情を抱いている可能性が非常に高いでしょう。
---
恋愛感情。
……?
……え?
……あ。
そういうことですね。
本能的に心を許している。
無意識に頼る相手。
ふと、思い出す。
レオン様と親しげに肩を組んでいたこと。
距離が非常に近いこと。
身体的な接触も多いこと。
この前は、頭をわしゃわしゃと撫でられていた。私は頭を触られたことすらない。
あの距離感は、私には許されていないものだ。
なるほど。
自然なことです、と私は納得した。
納得したはずなのに、胸のどこかがちくりと痛む。
だが、それもまた当然だろう。
勝手に傷ついたところで、結論は変わらない。
レオン様はまっすぐで、殿下に遜色しない美丈夫だ。
誰から見ても魅力的なお方である。
以前、侍女たちが「並ぶと絵になる」とひそひそ色めき立っていたのを聞いたこともある。
男性であっても、惹かれるのは無理もありません。
ほんのわずか、視線が自分の手元に落ちた。
私は、手を取られたことすらありませんが。
ですが、それも当然のことだろう。
政略結婚なのだから。
優先順位の問題だ。
全部一致している。
……覚悟しておくべきだ。
いずれ「お前を愛することはない」と言われても、慌てないようにしておこう。
理論として、破綻はない。
「理解いたしました」
「だから何を理解しているんだお前は」
今度の声には、さすがに呆れがはっきり混じっていた。
けれど、それでもまだ付き合ってくださる。
「では、第五問です」
「これが最後です」
「今度こそ、だな」
「はい。最終確認になります」
私は本を開いた。
---
■第5問
あなたは、恋人もしくは婚約者に贈り物をしようとしています。
次のうち、どれを選びますか?
A:花
B:本
C:宝石
D:指輪
E:手紙
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「……手紙だな」
私はこくりと頷き、ページを追った。
「では、解説です」
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【解説】
恋人や婚約者に対する価値観が分かります。
A:花
→枯れるものを選ぶあなたは、薄情なタイプです。関係を長く続ける気がありません。綺麗なうちは大事にしますが、枯れかけたものにはすぐに興味をなくします。
B:本
→中身で選ぶあなたは、無関心なタイプです。相手そのものよりも知識や有用性を優先し、その人自身への興味は薄い傾向があります。
C:宝石
→価値で測れるものを選ぶあなたは、利己的なタイプです。愛情を条件で扱い、見合う価値があるかで関係を判断します。
D:指輪
→形で縛れるものを選ぶあなたは、本質が見えていないタイプです。関係そのものしか見ておらず、安心のために形だけ先に求めます。
E:手紙
→言葉を選ぶあなたは、「お前を愛することはない」タイプです。向き合う覚悟も気持ちもなく、言葉だけで済ませようとします。綺麗なことは書けますが、それ以上踏み込もうとはしません。
---
「……E、手紙」
ぴたり、と視線が止まる。
言葉だけで済ませようとするあなたは、向き合う覚悟も気持ちもない……
「お前を愛することはない」タイプ。
心の中で、何かが静かに沈んだ。
私は静かに顔を上げた。
「……結論が出ました」
そのまま礼を言って席を立ちかけると、
「待て」
低い声で引き留められる。
「結論とは何だ」
私は一瞬だけ言い淀んだ。
けれど、ここで濁すのも違う気がした。
「殿下は」
「やはり私を愛することはないタイプのようです」
「は?」
殿下の眉が大きくひそむ。
だが私は構わず、淡々と指を折る。
「これまでの五問、すべて一致しております」
「第一問、経験豊富」
「第二問、お前を愛することはないタイプ」
「第三問、優先順位が低い」
「第四問、心を許している相手は別」
「そして第五問」
「再び、『お前を愛することはない』タイプが示されました」
「以上より、殿下は非常に『お前を愛することはない』タイプです」
「したがって」
「殿下は私を愛することはないと判断できます」
しん、と静まり返った。
自分で言っておきながら、その静けさが少しだけ怖かった。
けれど、ここで引っ込めるわけにはいかない。
知りたかったのは私だ。
「……お前」
「今のを本気で言っているのか」
「はい」
「……なるほどな」
アルヴィン殿下は、ゆっくりと息を吐いた。
「一つだけ聞く」
「はい」
「手紙を選んだ理由を考えたか」
「解説の通りかと」
「違う」
即答だった。
「前に言っていただろ」
「手紙をもらうと嬉しいって」
「……え」
「だから選んだ」
言葉が、止まる。
胸の奥で何かが小さく跳ねた。
だが、すぐに別の思いがそれを押し戻す。
「……ですが」
私はかろうじて声を絞り出した。
「殿下は、私と距離があります」
「侍女長様やレオン様とは親しくされているのに」
「私には……距離があるから」
思わず、うつむいてしまう。
これ以上言えばみっともないのではないか、と頭のどこかで思う。
けれど、止まらなかった。
「どう思われているのか、知りたくて」
「この心理テストを……」
言葉が少しずつ弱くなる。
「……ああ」
アルヴィン殿下が短く頷いた。
「そういうことか」
そこで頭をかき、少しだけ困ったように目を伏せる。
だが次の瞬間には、覚悟を決めたように私を見た。
その目は、ひどく熱を帯びているように見えた。
今まで見たことのない温度に、息が詰まる。
「確かに距離は取っていた」
「だがな」
ぐっと腕を引かれる。
「それはお前が慣れていないからだ」
「無理に距離を詰めるつもりはなかった」
「少しずつでいいと思っていた」
「……つまり」
「我慢していた」
言葉が落ちる。
「触れたいと思ってもな」
そのまま抱き寄せられ、私は膝の上に乗せられた。
一気に近づいた体温に、頭が真っ白になる。
「だが」
距離が一気に詰まる。
「そこまで誤解されるなら」
「もう、遠慮する意味がない」
逃げ場がない。
けれど、不思議と嫌ではなかった。
怖いほど近いのに、胸の奥が熱くなる。
「俺の気持ちを知りたいんだろ」
「……はい」
かすれた声しか出なかった。
「なら」
「その本を開け」
「俺が答えてやる」
言われるまま、私は後ろから抱き寄せられたまま、殿下の腕の中で、かろうじてページをめくった。
---
■問題
目の前にあなたが大切にしているものがあります。
それは何ですか?
---
「リディア」
そのまっすぐな答えに、私は解説を見る余裕を失う。
名前を呼ばれただけで、心臓がありえないほど跳ねた。
---
■問題
それのどんなところが好きですか?
---
「目の前のことを、ないがしろにしないところ」
「困っている人を放っておけないところ」
「少しずれているところ」
「真面目だから、妙な理屈でも納得したらきちんと受け取ってしまうところ」
「直接は聞けないくせに、こんなふうに一生懸命、俺の気持ちを知ろうとするところ」
「……不器用で、かわいいところ」
耳元で、低く囁かれる。
「まだある。聞くか?」
ぶんぶんと首を横に振る。
それを見て、ふっと息を漏らすように笑う。
顔が熱い。
じわじわと熱が上がっていくのが分かる。
「……全部だ」
少しだけ間を置いて、
「全部、好きだ」
どくん、と心臓が跳ねた。
熱は引くどころか、さらに広がっていく。
頬の奥がじんと熱い。
---
■問題
その大切なものを、あなたはどうしたいですか?
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「抱き寄せたい」
「触れていたい」
「甘やかしたい」
「ずっと、そばに置いておきたい」
抱きしめられた腕に、力がこもる。
その言葉がそのまま体温になって伝わってきて、息がうまくできない。
熱が逃げない。
逃げ場を失ったみたいに、内側にたまっていく。
---
■問題
その大切なものに、あなたはどんな言葉を向けますか?
---
「リディア」
後ろから抱きしめる腕が、さらに強くなる。
耳元に唇が寄り、吐息がかすめた。
一瞬の間。
逃げ場を失ったように、息が止まる。
「俺はお前を愛している」
完全に、思考が止まった。
今までの理屈も、結論も、分析も、何もかもが一瞬で吹き飛んだ。
残ったのは、その言葉だけだった。
顔が、これ以上ないほど熱い。
心臓の音が、うるさいほど響いている。
どくどくと鳴って、もう隠しきれない。
本当に湯気でも出てしまいそうで、
――もう、無理だった。
私は何も言えないまま、
そっと、
心理テストの本を閉じた。
――解説を読む余裕は、とっくになかった。




