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五話

俺は牢屋に入れられた、殺人の容疑で。

「ここは...」

目が覚めてまず初めに見えたのは鉄格子、そして二つ目に見えたのは鉄格子の外で椅子にかけている知らない女。

「やぁ、目が覚めたかい?」


視界がぼやけて前がよく見えないが俺の耳はその声を捉えた。

「あぃ?誰だ?」

「名乗る前にいくつか聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「なんだ、お前」

(コイツが俺に、殺人の罪を?)


男は質問を続ける。

「君が警護する予定だった物流部門の運搬、何を運ぶ予定だったか知ってた?」

(運ぶ物?)

「いや、知らない...確か誰かからの運送依頼だった記憶がある...中身を見る訳にはいかないだろう」

「...」

男は目を見開いて俺を凝視していた。まるでその目は俺の中の中まで見透かすかのような。

男は数秒俺を見てから


「そうか、ではもう君に用はない」

男は5歩歩いた所で急に反転して戻ってきて「あ、そういえば君死刑らしい」

そう言い残して男は再び歩き出した。

「お、おい!待ってくれ!俺は本当に殺しなんてしてない!!おい!」


そしてその場には俺だけが残された。いつ来るかも分からない死刑を待ちながら1人で。


(くそ、この手錠破式の針とおんなじ感じで力が入らん、術も使えない)

「万事休すか...」




そこからおよそ5日が経過した後、突然部屋の扉が開く音がした。

「...」

コツコツと歩く音が聞こえる。音は丁度俺の前で止まった。俺はずっと震えながら横になっていた、いつ死ぬかも分からんからだ。

「元隊長がこの様相か、やはり崇高な理念があっても死を前にすれば人はこうなるのだな」

「...誰だ?」

俺は掠れた声で問いただす。目を上げると黄緑色の髪に黒のテックウェア系ジャケットに身を包んだ男が立っていた。


「よお、羅刹、いや黒川か、自己紹介は後でだ、今はとりあえずお前をここから連れ出す」

そしてなんと男は牢の鉄格子を溶かした。

「ほら立て、行くぞ」

「...」

俺は空腹で死にそうになりながらも立ち上がり男についていった。



外に出ると車に乗せられ凍った米を渡された。

「とりあえずそれを食って頭を回せ」

俺は知らない奴から渡された食料でも、もう疑う気力もなかったため、食い方や行儀などを忘れて凍った米にかぶりつく。少しした後に水も渡されてそれも豪快に飲み干す。

「あ、ありがとう...ございます」

俺はようやく落ち着き視界がクリアになっていった。

「あの、貴方は」

「...名乗るのは着いてからだ」


廃墟の都市の道路の上を走って数十分、どうやらようやく着いたようだ。

「ここは、葉石街か」

葉石街とは北関東に位置する街、昔の群馬県にある。

「おい、これかぶっとけ」

そう言われて渡されたものはフード、恐らく世間的には俺は犯罪者扱いだからだろう。俺はフードを被り男に付いていく。あの時は空腹で頭が回っていなかったが、コイツを信用して良いのか今になって不安になってきた。


(そもそも何の目的で俺を連れ出したんだ?)


車を降りて5分後、男は路地裏の道中で突然止まった。

「よし」

そう言って真下のマンホールを開けて中へ入っていった。

(...よくすんなり行けるな)

俺も降りた、臭いに怯えながら。


中に降りると、なんとアジトになっていた。色々部屋や道具があり、法外な匂いが沢山した。


「そこに座れ」

その場にあったパイプ椅子に腰掛ける。

「単刀直入に言う、俺らの組織に入ってくれないか?」

「は?」

「我々は伝灯者派遣会社、【シュリッセル】だ、優秀な伝灯者である君を誘いにきたのさ」

(そんなことのために牢から連れ出したのか?)

「最年少で隊長に昇格、そして数々の任務をこなしてきたエリート、あまりの恐ろしさについた二つ名は【羅刹(らせつ)】しかし副隊長が灯黯者に殺され堕落」

「何が言いたい」

「君ほどの伝灯者がここで終わるのは惜しい、言っとくけど拒否権は残念ながらない、ここを逃せば君はまた死刑囚だからね、ただ今うちに入ればうちのボスが君の死刑執行を取り消しにできるかも?」

「そうなのか?」

「うん!そこで少しの間延命をして、真犯人を捕まえれば解決さ」


そして男が手を合わせて真剣な表情になった。

「で、本題だ、まぁ今のも本題の一部なんだけど我々は今ある伝灯者を探してる」

「探してる?どんなやつなんだ?」

「ずばり【予知】の灯術を持つ伝灯者さ」

聞いたこともない術だ。

「予知?」

「あぁ、君が担当した物流部門との共同任務、覚えているだろう?あれは本来その予知の伝灯者を我々のもとへ運ぶものだった」

「なに?」

衝撃的な内容だった、そもそも予知なんて灯術がこの世に存在してるのかも俺自身定かではないが、この男は真面目に言っている。

「だがあの内務部門、部門長の安藤に邪魔された、あの時、恐らく安藤はお前のとこ以外にも隊長クラスの伝灯者を色んな所に向かわせてる、予知を確保するためにな」

(だから、あの時安藤さんは俺に運ぶ物を報告しろと指示したのか、東雲もその任務を受けていたのか?)


「結果的に今、予知はどこにあるか分からなくなった...」

「...」

安藤さんは俺が入った時からずっと俺の面倒を見てくれた人だ、仕事も沢山あの人から教わったし世話にもなった。

「だが予知を確保したいのは内務部門の安藤だけじゃない、もっと色んな勢力が欲している、だから安藤が罠として死体を置いといたんだろう、捨て駒にするために」

「何?」

(安藤さんがそんなことするか?それに死体を用意してまで捨て駒にする気だったのか?)

「今は昔と違う、伝灯者だと1人1人がある程度強い、強い味方が寝返る前に処理したかった...安藤はそんなことでも考えてたんだろ」

「安藤さんがそんなこと...」


俺は昔から曲がったことが嫌いだった。昔、孤児院にいた時、灯を持っている伝灯者が灯を持っていない無能力者を虐めて自殺に追いやった事件があった。孤児院の半分以上がいじめに加担していたが俺は傍観者を貫いていた。


所謂無能力者差別は今でも根深い。研究によると灯を使える者と使えない者とでは脳の構造が違うらしく、伝灯者が表舞台に立ってからは無能力者を能無しと揶揄する人が多い。だから、この手で人を助けられるようにするために内務部門に入った。


だが今の話が本当ならば俺は何のために内務部門で戦ってたんだ?

「村山...」


「黒川清志郎、俺たちに力を貸してくれ、安藤に予知を渡す訳にはいかない」

ここで誘いに乗らなければ俺は死刑囚だ。

(拒否権はないな)

「分かった、お前らに協力しよう」

男は手を出して握手を求めてきた。


「ありがとう、俺は来栖明(くるすあきら)株式会社シュリッセルのメンバーの1人だ」

俺は戸惑いながらも握手をする。

「黒川清志郎だ、よろしく頼む」

(もし、予知を確保したい勢力が予め殺して死体を用意してたのなら、予知を探すこいつらと冤罪を晴らしたい俺の目的と合致する...利用させてもらおう)







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