四話
「は?」
ガレージを開けた俺に待ち構えていたのは鉄錆の臭い。俺はこの臭いをよく知っている。あたりに広がるのは血塗れの死体達。
「...なんだ...これ」
この仕事をしているためか、こういう状況であっても冷静に情報を咀嚼できる。
「3、4、5...俺含めて2人足りない」
(東雲の死体がない、ってことは全員物流部門の人たちか...とりあえず緊急事態だから、安藤さんに連絡をしよう)
俺が外に出て安藤さんに連絡を取ろうとスマホに手をかけたその時
「動くな」
後ろから声をかけられた。
後ろを見るとそこには武器を持った治安局の人間がいた。
(治安局の紋章!)
「ちょうどよかった、この中に死体が...
「黒川清志郎、お前を殺人の容疑で現行犯逮捕する」
「え?」
俺は今度こそ頭が真っ白になった。正直言っている意味が分からない。
(なに言ってんだこいつら、俺を犯人だと思ってんのか?)
俺は奴らを睨みつける。
「何故?」
「匿名の通報を受けてな、殺人鬼が居るって」
「匿名?匿名の通報で4人も連れてきたのか?」
俺がスマホで電話をしようとすると
「動くな」
カチャっと武器を構える音が鳴る。目の前の男が武器を出し、こちらに照準を合わせている。
(ショットガン、武器型の能力者か)
「よぉく考えたほうがいい、この数相手にお前が勝てる道理はない...今からお前を拘束する、くれぐれも動くなよ」
後ろの3人のうち2人が俺の方へ歩いてくる、どうやら俺に手錠をつけるらしい。
(まだか?)
一歩一歩と迫ってくる、俺の後ろに回り込み手首を掴んだその時。
「あれ、どういう状況?」
東雲がこの場に来た。俺以外全員の目線が東雲に向く。
(今だ!)
俺は能力で鉄パイプをだす。
「お前」
男は銃を撃ってきたが、一度注意は逸れてる。俺は左に跳んでそれを避ける。
「ぐはっ」
銃弾が俺の後ろにいたやつに当たる。だが男は意に介さない。
「んー...」
ダン!!と再び撃ってくる、だが俺は能力を使っているため身体能力が向上している。
前に踏み込み、奴めがけてフルスイングをかます。
「おらよ」
「当たらないなぁ」
だがそれは空を切る。奴はギリギリで見切っていた。
他の2人は戦闘体制にあるものの動揺して冷や汗が出てる。無理もない、目の前で仲間が死んだし、何より殺したのが敵ではなく自分の仲間だからだ。
(なんだこいつ、他の奴らは普通だがこいつだけなんかおかしいぞ、普通故意ではないにしろ味方やっちまったらもっと動揺すると思うんだが)
銃を持っている男に動揺は微塵も感じられない。というより無反応だ。
(こいつだけなんか違うな、油断ならん)
「ま、俺からいくしかねぇよなぁ」
俺は再びスタートを切る。
「直線的だ」
奴が引き金を引く。
「おっと」
それが俺の脇腹を掠める。
(完璧には外せないか)
だが既にそこは俺の制空権だ。鉄パイプを振り上げ、斜めに振り落とす。
「潰れとけ!」
「とんだ破壊力だな」
男はサイドに飛び避け、次の攻撃に繋いでいる。
「んー...」
銃口の方を両手で握り、バットのように振り攻撃をしてくる。
「見えている」
俺はそれを鉄パイプで抑える。鉄パイプを両手で掴み強引に銃を滑らし、横に弾き飛ばす。ずらされた銃に引っ張られた奴は重心が前へいく。
「おっと」
そこに俺は鉄パイプを振り上げ奴めがけて振り下ろす。
「これは正当防衛だっ!!」
「ぐはっ...」
俺の鉄パイプがやつに直撃。まともに食らったこいつは前のめりに倒れる。
「後はお前らだけだ」
俺は残りの二人へと歩を進める。二人は完全に怯えきっており戦う戦意もなさそうだ。
(とりあえず気絶はさせるか)
なんてことを考えていると突然首の辺りにチクっと何かに刺されたかのような痛みが走った。
(まさか...!!)
そこに手を当てるとなんと刺さっていたのは【破式の針】、これを刺されると能力も力も入らなくなる。
「ぐっぞ...」
「はぁ...困ったもんだよ、流石隊長と言ったところかな」
銃の男は気絶していなかった、おそらくやられたフリだ。
俺は前のめりに倒れた、正直詰みだ、力が入らん。
「じゃ、一旦バイバイ」
そう言って俺は意識を刈り取られた。




