三話
あの事件から3ヶ月後、仕事を休むわけにもいかないので俺は普通に出勤していた。未だにあの時の言霊と死体操作の灯黯者は捕まっていない。
俺は部門内では副隊長を死なせた隊長として広まっておりあまり良い立場とは言えない、出世も厳しいだろう。
そんな時にいつも通り仕事場で仕事をしていると。
「おい黒川、安藤さんが呼んでるぞ、すぐに来い」
「安藤さんが?はいすぐに行きます」
「安藤さんって三人いる部門長の一人だよな、隊長もしかして出世ですか?給料どんくらいになるんですか?」
山峰が目を輝かせながら言ってくる。
「馬鹿野郎、多分そんなんじゃねぇよ、とりあえず行ってくる」
俺は席を立ち、その場を後にした。
ドアを開け中に入ると安藤さんが後ろに手を回しながら立っていた。どこか重々しい雰囲気だ。
「黒川くんよく来てくれた、実は君にちょっと頼みたいことがあってね」
「俺にですか?」
「あぁ、実は今物流部門から重要な物資の護衛を頼まれててねそれの護衛を君と君の同期の東雲に頼みたくてね」
(あいつとか...)
「東雲と?お世辞にもあんまり仲が良いとは言えないですし、連携が取れると思えないんですけど」
東雲とは俺と同時期に内務部門に入り、二人とも公安局に配属されたがいかんせん仲があんまりだ。
(それに物流部門も盗賊などに負けないよう相当強い奴らが集まってるはずだ、わざわざ治安局が行く必要ないと思うが)
「東雲くんと仲が悪いのは知っている、だが実力は確かだ、それほど重要な任務なのを理解してほしい」
「...分かりました、我慢します」
「あと、これは君だけに言うが、何が運ばれるか、運ぶ物を確認して私に報告をしてほしい」
「はい?運ぶ物ですか?何が運ばれるか分からないのですか?」
「いや、そう言う訳じゃない、ただ仕様上私の確認が必要なんだ」
俺は若干の違和感を覚えた。
「分かりました、報告します」
「よし、さっきも言ったが重要な任務だ、君の命運を分けるかもしれない」
「ん?」
(なんだ?やけに重いこと言ってくるな)
「君にそれほどの覚悟はあるかい?」
「...どんな任務でも関係ないですよ、当たり前ですけど俺は人を守るためにここにいるんです、どんな任務も俺にとっては等しく重要です...覚悟などとうに出来ていますよ」
「分かった...合計7人、君ら治安局2人と物流部門5人の予定だ、明日の朝8時半から、集合場所はここだ」
(明日?急だな)
そう言って安藤さんは印のついた地図を俺に渡してきた。
「ではよろしく頼む...あ、ちなみに極秘だから、あんま他人に言いふらすなよ」
その後俺は拠点に戻った。東雲と打ち合わせでもしておこうとも考えていた。
「あ、おかえりなさい黒川さん、なんだったんですか?」
「んーまぁ軽い世間話だよ」
俺は誤魔化すのが下手だ。山峰に怪訝な表情をされる。
「言いにくい事すか...まあいいですけど、同じ隊なんですから相談くらい乗りますよ」
「相談か、じゃあ一個お願いがあるんだが、東雲がどこにいるか分かるか?」
「東雲さん?東雲さんなら近くの市場に行きましたよ」
「分かった、じゃちょっと出かけてくるな」
「は、はい」
そう言い俺は市場へ向かった。
市場は昔のショッピングモールが原型としてある。廃墟だがある程度形は残ってるし手入れもされている。
(ここは人が多いな、まああいつのことだし、どうせあそこだろ)
俺は東雲がいるであろういつもの場所に向かった。
俺はモールの二階へ行き、屋外テラスに出た。案の定椅子に座ってご飯を食べている東雲がいた。俺が近づくとどうやら東雲は俺に気がついたようだ。
「あ〜れ、最近話題の黒川さんじゃん、どしたんだ?」
「どうしたもこうもない、明日重要な任務があるだろ?聞いたか?」
「あぁ〜、安藤さんから聞いたよ、な〜んか物流部門の手伝いをするんだろ?」
俺は東雲の話を聞きながら椅子に座る。
「明日の8時からだろ?で何しにきたんだ?」
「いや、一応久しぶりに一緒の任務だから顔くらい合わせておこうと思ってな」
「あぁ〜そう...まぁ別に大丈夫でしょ、物流部門も弱くないし、そんな心配することないと思うけど」
やはりどこか温度差を感じる。昔からコイツはこういう奴だ、怠けていてやる気が感じられん。
(時間の無駄か、昔と変わってなさそうだな)
俺はその場を後にした。重要な任務と言っても正直俺もこの時は凄い緊張感があるわけでもなかった。今までも部門長直々に任務のお願いをされたことはあった。
だがこの時の俺は知る由もなかった。この任務が俺の運命を大きく変えることに。
3月7日8時10分、俺は所定の場所のすぐそばまで来ていた。
(しまった、20分も早く着いてしまった。毎回不安で待ち合わせよりも数段早く着いちゃうんだよな)
とりあえず待ち合わせ場所まで行こうと思い歩を進めた。
待ち合わせ場所は廃墟の大型ガレージ。ガレージの前まで着いた。
(誰か先にいるかな?)
俺はシャッターを開け、中に入ろうとする。シャッターを開ける時の五月蝿い音が消えた後、それは俺の目に飛び込んできた。
「は?」




