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エボルヴインパクト 非対称型PvPvEの悪魔的暗殺術  作者: すばる
1章

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6/8

1-5 ビクト地区攻略

 まずは周囲の安全確認から。パイプから外に出た私は近くの壁に寄りつつ、陽光の元で辺りを見渡す。住宅の並ぶアグヌ地区と違い、農業区画であるビクト地区ではかなり遠くからでも射線が通る。サバイバーの場合、ヘッドショットを受けても防具の減算込みで即死は免れるが、それよりも貧弱なデモンズ種は高威力のスナイパーライフルを食らったら一発お陀仏だ。

 ひとまずはサバイバーの姿も見えないし、このまま進むか。畑に入って麦に紛れておけば遠距離から見られる心配も薄いだろう。問題は途切れるタイミングで身を晒す必要があること。まあ目的はクエストのクリアで他プレイヤーとやり合う必要はないし、なんとかなるはず。

 私はミニマップで道を確認しながら、目的地であるグローリープラントの寝床を目指すのだった。


 ◆


 はい。4デスしてようやく、目的地の目の前まで来ました。

「で、また関所ですか」

 前方でチラチラと見える人影にうんざりする。

 グローリープラントの住処はビクト地区の端で、向かうにはそこそこ長い一本道を通らないといけない。しかもチェチ地区開放のために一度は絶対行かないといけないとなったら、そりゃキャンプするやつも出ますよね、ってやつだ。まあ2回連続での遭遇は流石に運が悪いと思うけど。

 相手の射撃の腕は低い。でなきゃすでにやられている。ただ、下手くそだろうと対処できるかは別問題。

 私が今いるのは農具の置かれた小屋の中だけど、目的のボスエリアは狙撃手の張っているさらに奥。向かうためにはまともな障害物のない屋外を数十メートルは進まないといけない。いくらヘボでも当ててくるはずだ。

 ここでサバイバーなら、シンプルに撃ち返すか、もっと強い動きとして砲兵支援で盤面を動かすのだろうけれど、こっちには遠距離攻撃手段そのものがない。かといって強行突破もきつい。デモンズ種は入り組んだ場所での三次元的な機動は得意だけど、単純な直線での速さはたいしたことないのだ。

「うん。待つか」

 この盤面、デモンズ種じゃどうにもできん。だから別の要因で状況が動くまで待機する。まあ攻略必須のエリアなのでたいしてかからず誰か来るだろう。

 ヘルプから別種族やサバイバーのスキルの説明を読んでいると、5分くらいで足音が聞こえた。

「で、索敵はやっぱ飛んできますよ、と」

 【セカンドサイト】じゃなくて【ビーコンシュート】か。ビーコン付きの矢を飛ばして軌道上の索敵をするスキル。全方位を把握する【セカンドサイト】よりもより遠くまで索敵できるのが特徴だ。

 これで私の位置も奥で構えているやつの存在も知られたな。で、足音からして来たやつもソロ。

 とりあえず今の場所に居続けたら詰むので天窓から外に出て屋根の上に隠れる。その直後に小屋の中に入って行ったサバイバー。これ、狩るだけなら簡単にできそうだな。ただこいつには前を塞いでいる狙撃手をどうにかしてもらわないといけない。

 こっちは諦めて前に行って欲しいんだけど、無理ですか? まあ小屋の中にいれば外から撃たれることはないからね。そんなことを思っているとクールタイムが明けたようで今度は【セカンドサイト】が飛んできた。これで位置がバレたし、無視して狙撃手にはいかないな。

「てか壁抜きとかないよね? 大丈夫だったはず」

 ちょっと心配になって来た、けど撃たれてないのでヨシ。でも問題はここからどうするかだなぁ。結局膠着してる。

 うーん。よくないな。狙撃手は動く気がないみたいだし、中のソロプレイヤーは動くに動けない。外出た瞬間私に上から襲われると思ってるだろうね。

 で、じっとしているとまた別のサバイバーが来る。今度はフルパ。そして来た瞬間に私は見られる。屋根の上にいるし、狙撃手の銃口を避けるとどうしても逆側から無防備だ。もちろん撃ってきた。

「ですよねぇ!」

 こうなりゃ何より生き残り優先だ。小屋の側面に飛び出し軒下に張り付く。当然、横にまわれば丸見えなんだけど、そっちは小屋の中からも窓越しに見えるんだよね。

 銃声がすりゃ誰だって敵に気づく。派手に足音を立てていたサバイバーは小屋の中から警戒する銃口の前にガッツリ飛び出し、数秒で落ちる。私はその隙に天窓から再び小屋の中に入り込み、銃口が上に向けられる前に小屋のサバイバーを毒で切り付けた。お疲れさん。最後の最後に役だったよ。

 で、まあここは【墨人形】のダミーを残しつつ逃げだ。【墨爆弾】で視界を遮りつつ全力ダッシュ。ダミーは私というよりさっきまで生きていたサバイバーの代わり。どうせ【セカンドサイト】が来るし、小屋の中に銃持った別サバイバーがいるとわかれば逃げる私を追う暇はない。なんか数発飛んできたけど当たらなかったのでセーフ。

 【セカンドサイト】が来たな。つまり偵察兵は、あいつか、と頭の中でマーキングしつつ、【セカンドサイト】の索敵範囲外まで距離を取る。

「じゃ、あとは案内よろしく」

 このまま逃げる? とんでもない。私はクエストをクリアしに来たのだ。目的を達するまで帰れません。

 4人は私の逃げた方向にも注意を向けているけれど、警戒の優先度は低い様子だ。それよりも敵のサバイバーがいる(と思っている)小屋の中に集中している。動きがないかと注視しながら近づき、窓からグレネードを投げ込み、爆発と共に突入して制圧。中にあるのは死体だけだから、何事も起こるはずないんだけどね。

 小屋をクリアしたあとは倒れた味方を蘇生し、奥で張っていた狙撃手と接敵。どのタイミングで気づいたかは知らないけど、まあ進もうと思えばぶつかる。ただし有利なポジションに居座る狙撃手に、4人組はまともに撃ち合うことはなかった。地面を震わすようなでかい爆発がして、銃声が止む。砲兵支援スキルを使ったのだろう。これがあるから屋外での居座りは弱いのだ。

 邪魔な狙撃手が排除されれば、あとは道中に障害らしい障害もない。幾らかのミュータントがうろついていたけれど、彼らは連携しながらきっちりと仕留め、危うい場面なく進んでいく。その後ろを索敵スキルの範囲外からついていく私。この分ならボス部屋までは問題なく辿り着けそうだな。

 だけど私としてはここからが勝負。どうにかして、あの4人を抜けて奥へ進まないといけない。

 流石に、というべきか、ボス部屋に誰かが入ると入り口は蔦によって閉ざされ、他のプレイヤーによる横槍は封じられる。私はその様子を眺めながら、今後どう動くべきか考えることに。

 一番楽なのは4人組が全滅して何の障害もなく入れるようになることなんだけど、負けるってことはそうそうないはず。グローリープラントは最初のボスなだけあって素直な性能をしているし、堅実に戦えば危なげのない相手だ。攻略サイトにはそう書かれてあった。

 で、私の目的はボス部屋へ入ること。なので戻ってくるパーティーをどうにかやり過ごさないといけない。ただボス部屋の入り口近くには隠れられるような場所はないし、ボスを倒した直後は間違いなく警戒している。少なくとも索敵スキルは使うだろう。

 使われるとしたら【セカンドサイト】か【ビーコンシュート】。地形的に適しているのは【ビーコンシュート】だけど、必須スキルと言われる【セカンドサイト】と違って取っていない偵察兵も多いからね。それぞれ探知範囲が違うから、隠れるべき場所が違う。

 だから2択の賭けだ。もちろんどっちにも引っかからない場所もあるけど、それだと距離が離れすぎて状況の把握が困難。

「こういうのは度胸っ!」

 外したら仕方ないと割り切る場面だ。

 あの4人組はここまで【ビーコンシュート】を使っていない。なら、持っていない方に賭ける。私は【セカンドサイト】を使われたときに範囲外となる位置の草むらに身を潜め、ギリギリ扉の様子が見えるように顔を出す。

 動きがあったのは、だいたい5分くらいあと。ボス部屋を封じていた蔦の壁が解けるのを見て、私はすぐに顔を引っ込めた。完全に草むらに身を隠し、一切の動きを止めて意識を集中させる。足音と、土を揺らすわずかな振動。それらからサバイバーの動きを把握し、過ぎ去るのを待つ。

「……行ったかな」

 ほんの少しだけ頭を上げて確認すると、ちょうど背中を向けて離れていくところだった。無駄に待ちすぎると別パーティーが来る可能性が高い。だからなるべく早めに、だけど見つからないくらいには距離を空けて。

「やっぱ音を立てないの便利だわ」

 素早く、振り向くなと祈りながら。そのままボスエリアまで滑り込み、どうにか私はチェチ地区へ入るためのクエストをクリアした。


次回投稿予定は明日12時です。

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