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エボルヴインパクト 非対称型PvPvEの悪魔的暗殺術  作者: すばる
1章

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5/8

1-4 可能性の獣

 安価な平屋建ての家が並ぶ初期ステージ、アグヌ地区。今回も私は稼ぎスポットのひとつであるホームセンターに来ていた。将来的には全域を我が庭としたいところだけど、まずはこのホームセンターで狩りを繰り返し、構造を叩き込む。マップ理解は勝敗を左右する重要なプレイスキルである。

「先客がいるねえ」

 入り口からそろりと中に入った私は、すぐに他のプレイヤーの存在に気づく。何せ足音が聞こえる。数からして4人。サバイバーのフルパだな。

 気づかれぬよう、そっと中を調べる。【静かな殺意】はないけど、そこはフロリダで培った隠密技術でカバーだ。

 どうやらあちらは、ちょうどホームセンター内の制圧を終えたところのようだ。負けたサバイバーの死体が転がっているのが見える。で、これから物資漁りを始めるところみたいだけど、このままさっさとバラけてくれたら私としては楽。ダメ? スキルを使うモーションに入った。そして反応する【逆探知】。避けられる距離じゃないので即行で見つかる。

 もちろん私もただで見つかるつもりはない。使われたのは【セカンドサイト】で、効果時間は最大3秒。すぐに離れたので私の居場所はわからなくなったはず。ただ、敵がいるとわかった相手がそのまま呑気に探索なんてするわけない。完全に警戒体制。

 だからどうした。【セカンドサイト】のクールタイムは最大強化しても30秒。その間索敵が飛んでくる可能性はゼロとなる。

 フロリダ流暗殺術を舐めるなよ。被害者陣営も背中からならキラーをぶん殴って動きを止められるのだ。

 障害物が多く、道も多いホームセンター。互いに背中を貼り付けたところで完璧なフォローは不可能。

 下段の棚。商品の隙間から触腕を伸ばして足元を切りつける。これでひとり。仲間の倒れた音に反応した敵が急いで駆けつけてきたが、私はそこにいないよ? 君の真上だ。

「首刈り一丁!」

 これであと2人。敵が減れば警戒とともに焦りと混乱が広がり、私を見つけるための目の数は減る。

 天井の照明に吊り下がった私は敵を切った触腕をそのまま伸ばして近くの棚から適当な小物を拾い、あたふたとしている生き残りに聞こえるよう、床に投げる。もちろん私とは反対側。そしてバックアタック。

 危地と判断した最後のひとりは慌てた様子でその場を離れる。このまま逃げるなら追うのはリスクが高過ぎるし見逃しだが、そいつはある程度離れたところでクールタイムのあけた【セカンドサイト】を再使用しようとした。

 そりゃ完全に悪手だ。索敵系スキルは発動時に隙だらけとなる。何より、この距離なら音でやってることがバレバレ。

「うまうまやねー」

 私が倒した4人。それとすでに倒れていた4人も含めて計8人分の“血液”をゲットだ。これだけあれば新しくスキルポイントも得られるはず。

「ま、帰るまで油断はできないけど」

 居座って狩りを続けるのはおっかないので取るものを取ったらさっさとずらかる。

 ひたすら有利なポイントで獲物がキルゾーンに来るのを待ち構えるのは不可能になった。だけど隠密ってのはそれだけじゃない。気づかれぬよう動いて首を刈る能動的な隠密もまたデモンズ種の得意とするところ。そしてそのために必要なのが、天敵となる索敵スキルの検知とクールタイムの把握だった。【逆探知】があれば両方の情報を得られる。

 これならうまくいく。その確信を得ながら、私は離脱地点のマンホールに飛び込んだ。


 ◆


「そろそろ次に進むかなぁ」

 エボルヴインパクトの正式サービス開始から1週間。無事の帰還を遂げた私は、UIを眺めながら呟く。

 スキルポイントの獲得に必要な“血液”の量は回を重ねるほど増える。ここまでは序盤ということもあってどんどん得られたが、そろそろペースも落ちてきた。ここまで欲しいものを適当に取ってきたけど、そろそろちゃんとビルドを見直す頃合いだろう。

「【逆探知】は必須として、他の索敵スキルは正直今んとこいらないな」

 デモンズ種は色々覚えるし、あるかないかならもちろんあったほうがいいんだけどね。ぶっちゃけ音を聞けば大体はわかるのだ。【逆探知】の前提条件で【聴力強化】は取ってるし。索敵が強すぎて隠密スキルを取ってるプレイヤーがほとんどいないってのが大きいな。どっちも偵察兵のスキルだから、隠密しても索敵に捕まる+自分の索敵スキルが弱くなるって二重苦だ。しかもパーティーで動けば隠密なんて無理。一度隠密スキルを積んだソロと遭遇戦になったけど、そのくらい。

 【再生】も同じく切る。あったほうが安心はできるけど、紙耐久のデモンズ種じゃ回復の間もなく殺されることの方が圧倒的に多い。【再生】があるおかげで生き残れるケースより、別のスキルにポイントを割り振るメリットの方が大きいだろう。

 逆に是非とも欲しいのは行動に伴う音の発生を抑える【静かな殺意】。【逆探知】を取るために一時切ったし、なくても音を立てずに動けはするけれど、隠密行動はかなり気を遣うのだ。つまり、それだけ速さが犠牲となる。静かに素早く動くことは私の戦術の基本なので、ここは最大まで強化。うん。最大までとなるとスキルポイントをごっそり取られるな。でも1レベルの差でかなり変わるのでここは妥協しない。

 残りのポイントは【墨人形】、【墨爆弾】【粘液地雷】にひとつずつ割り振り

 【墨人形】は索敵にも引っかかるダミーを作るスキルで、【墨爆弾】はいわゆる煙幕。スモークグレネードみたいに使えるし、爆発させず直接当てる目潰しにもなる。【粘液地雷】はトラップだ。直接刺すのと違って即死クラスのダメージとはならないけれど、継続ダメージを与えるので相手の動きをコントロールするのには便利。

 どれもトークン制で、レベルが低いと使えるのは1回きりだけど、選択肢として持っておくだけでも強いスキルである。トークン制スキルは低レベルでも効果はたいして変わらないってのもいいよね

「我ながら広く浅くって感じになっちゃったな」

 マックスまで強化したのは【静かな殺意】だけで、あとのスキルはみんなレベル1か2。少しのスキルに集中してポイントを注ぎ込むのもありだと思うけど、どっちが正解かはないとは思う。

 でもってスキルの調整が終わったら、いよいよ新ステージへ進むために動き出そうと思う。というか、実は次のステージであるビクト地区はすでに行ける。ただビクト地区は農場のマップだ。建物が少なく開けた土地が大部分を占めるため、隠密や近接戦闘との相性がとにかく悪い。だから流石にきついってことでアグヌ地区に入り浸っていたわけ。プレイヤーを倒すのがメインのゲームなので別に初期のマップでも問題はないし。

 だけどさっきの探索で、次のチェチ地区へ行ける条件のひとつであるスキルポイントの獲得総数が満たされた。ただチェチ地区の開放にはビクト地区で3つのクエストをやらないといけない。そのうちの2つは、ビクト地区に3度侵入することと、累計30分生き残ること。ちなみに今は侵入1回で生存時間は42秒。狙撃でぶち抜かれた。

 まあこの2つはゲームをやっていればいずれクリアできる。問題は3つ目。ビクト地区のボスであるグローリープラントの元へ辿り着くこと。サバイバーの条件は撃破なのでちょっと緩和されてる。性能の尖ったミュータント同士の対決は相性ゲーだし、種類によっては馬鹿みたいな難易度になるからだろう。ともかく、これをクリアできなきゃ先に進めない。

「ま、とりあえず行きますか」

 準備はすでにできている。ならここで悩んでいてもしょうがないと、私は2度目となるビクト地区への侵入を選択した。


次回投稿予定は明日12時です。

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